Kとふたり、病院へ。その2

朝ごはんを食べてからKを仕事に送り出し、洗濯を終えて病院へ行き、Kの午後の診察の受付を済ませた。
午前中の仕事を終えたKが2時前に病院に到着して、待合室で二人でカツサンドを食べながら待っていると、すぐにKの名前が呼ばれた。
ドアを開けて、Kに続いて僕も一緒に診察室に入ろうとすると、お医者さんと看護師さんが焦ったように、「あれ?どちらが患者さん?」と、間違いがあったかのように聞いてくるので、僕が、「家族なんです」と答えた。
お医者さんは、「それじゃあ、お父さんですか?」と切り出し、僕の顔を見ながらなんだかちょっと年齢的に無理があるなぁ…と思って苦笑いをすると、すかさずKが言ったのだ。
K「パートナーなんです」
先生「パ…パートナー…⁈パートナーね…」
僕「そうなんです。パートナーなんです」
それから先生は何ごともなかったかのように診断結果を説明してくれた。
先生「甲状腺にある塊は、腺腫で良性のものと思ってほぼ間違いありません。様子を見て大きくなってきたら注射で取って詳しく検査した方がいいけど、大丈夫だと思いますよ」
そんなやりとりを聞きながら、僕はここ2週間の不安がすっきりと晴れていく気持ちでいた。
きちんとした診察結果が出るまでは、もしものことも視野に入れながら、ネットで様々な記事を調べていたのだった。
帰り道ふたりは、ほとんど手をつなぐように雨の中を帰った。
途中、パン屋さんで「おいしそうだねー」などと話しながら、焼きたてのパンの香りを吸い込んだ。
生きていると、突然目の前に真っ黒な壁が立ちはだかることがある。今回、はじめてふたりの前に現れたかのように思えた壁は、結果的にはイリュージョンだった。
今はふたりが健康であることに心から感謝をして、こうしてまた、ささやかな日常をたいせつに生きていこうと思ったのだった。
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