ブエノスアイレス

友人たちに何人もファンがいる有名なゲイ映画、ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』を、僕は48歳になってやっと劇場で見ることが出来た。渋谷のル・シネマでアンコール上映『ウォン・カーウァイ特集』をやっているのだ。
香港から、地球の裏側のブエノスアイレスへ、イグアスの滝を見にいこうと旅に出たゲイカップルは、諍いを繰り返し、香港へ帰るために資金も使い果たしてしまう・・・。
この映画は、きっちりとした脚本があったわけではなく、ゲイの役をやりたがらなかったトニーレオンのために脚本を変えたからと口説いて(騙して?)ブエノスアイレスへ行き、香港でのコンサートで行ったり来たりするレスリー・チャンとともに撮影を進めたと言う。
それにしても、我々からすると地の果てのように思えるブエノスアイレスでの撮影によって、歴史に残るせつないゲイ映画が誕生したのだ。
憂いを秘めたやさしい眼差しのトニーレオンと、気分屋で独善的なレスリー・チャンがつきあうということは、絶え間ない諍いの繰り返しなのだけど、誰かとつきあったことがある人にはよくわかるであろう、愛憎が入り混じった痛みとともに感じる愛おしさのようなものがふたりの間で育まれていく。
クリストファー・ドイルの映像が、ブエノスアイレスの郷愁を見事に映し出していて、息を飲むほど美しかった。
蛇足だが、映画は、DVDで観るのと劇場で観るのとでは全く違う体験になると思う。初めて観る名画は、出来るだけ劇場で観ることをおすすめする。先にテレビ画面で観てしまうと、もう2度と劇場での感動は味わえないからだ。
⭐︎アンコール上映ウォン・カーウァイ特集6月30日までhttp://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/17_wong_2.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です