一番上の甥っ子。

僕には、甥が3人いる。
真ん中の甥は、先日ここにも書いたように、慶應大学の入学式を控えているところ。小さな頃からなんでもよく出来て、社交性があり、よく気がつく子どもだった。(もしも甥っ子にゲイがいるならば、多分この子だろう)
一番下の甥は今度小学6年生になるところ。天真爛漫で笑顔の絶えない子だ。
長男のKTは青山学院大学の2年生。随分前から人と会うこと自体が苦手になり、今は学校と家の往復だけになってしまった。(人と会話をするのも苦手なので、コンビニにも行けない)部活やサークルもしないし、友人はいると言うが、旅行に行ったりはしない。
僕の母が心配して、「KTと会って話をしてみてくれない?」と言うので、外苑前に呼び出してエミリア(僕のお気に入りのイタリアン)へランチに。20歳になったと言うので、ワインを頼み、メニューを決めて、前菜が運ばれてくる。僕は、自分の話をしながら、少しずつKTに質問をした。
僕「学校では何を勉強してるの?」
KT「英米文学を原文で読んでる」
僕「好きな作家は?」
KT「特にいない」
僕「僕は、サリンジャーが好きだけど、好き?」
KT「知らない…」
普通の20歳男子は、もりもり食欲がありそうだけど、KTはお店の人が困惑するほど食べるペースが遅く、僕も待ちきれずワインをがぶ飲みしてしまう。
KT「文学部だけど、なんで文学部なのかな・・・って。自分がそんなに好きじゃない気がするんだ・・・」
僕「じゃあ、何が好きなの?好きな映画は?」
KT「それ、こないだもカワチ(兄のお嫁さんの妹)に聞かれた・・・」
僕「好きなことを見つけることはとてもたいせつなことだよ。これから先に何をやっていくかを考える時でも、少しでも好きなことを仕事に出来る方がいいからね。好きなことがわからなかったら、嫌いなことを書き出してみたらいいんじゃない?そうすると、少しずつ自分が好きなことが見えてくるかもしれないから・・・」
KT「・・・・・・」
その後、僕が高校時代を過ごした外苑前近辺を散歩したのだけど、KTは僕の話を聞きながら、時々頷いているようだった。
僕は歩きながら、僕の対応はこれでよかったのだろうか・・・と考えた。自分としては、なるべく、「こうしなさい。これはよくない。」など、否定的な言葉や批判するような言葉は避けて話したつもりだったのだけど、思った以上にKTは、ずっとひとりの世界を彷徨っているように見えたのだ。
もしかしたらKTの周りの家族や僕たちは、知らず知らずのうちに、「二十歳の大学生だったら、普通はこうだろう。年頃の男の子だったら、友達とこうして過ごすのがあたりまえだろう。大学生だから恋愛やセックスのことで頭がいっぱいだろう・・・」そんな風に自分たちの頭の中にある当たり前とKTを比較して勝手に判断していたのかもしれない。
普通の大学生なんて、そもそもないのだ。KTの中にはまだ僕の知らない悩みや闇があるのかもしれないのだ。
「またうちに遊びにおいでね」
そう言って駅で別れたKTを見送りながら、なた近いうちに会わないといけないと思ったのだ。

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