手を振る人。

以前は、僕が会社に行く姿を、寝室の北側のベランダの窓から、Kが手を振りながらいつも見送ってくれていた。
2月からKの仕事が始まり、8時過ぎには出かけて行くKを、今度は僕が毎朝、寝室の北側のベランダに出て、手を振りながら見送っている。
まずは、玄関でいってらっしゃいとキスをして、今度は大急ぎで寝室の北側のベランダに行きサンダルを履いて外に出る。
一階の階段を降りてくるKの頭が見えて、道路に出て上を見て僕を探すKに手を振るのだ。
そして、コンビニを過ぎて姿が見えなくなるまで、僕はずっとKに向かって手を振っている。いつも僕の母が、僕が出かける時に僕に向かって手を振り続けてくれたように・・・。
今日、一階に出て来たKに手を振っている時に、200メートルくらい遠くにある向かいの白いマンションのベランダに、60代後半の白髪のおじいさんと、40代後半くらいの女性が出ていて、その女性が、ニコニコとした笑顔で僕に手を振っているのが見えた。
何かの間違いかなと周りを見たけど、どうやら僕らしい。
Kに向かって僕は大きく手を振りながら、向かいのマンションを見ると、ふたりは僕たちの一部始終を見ながら、僕に向けて手を振り続けていた。
僕はちょっと恥ずかしくなったけど、なんだかうれしくて、そのふたりに向かって大きく手を振ったのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です