金木犀。

朝、窓を開けると、ふわ〜〜っと甘い香りに包まれた。
それは、隣の家の金木犀だった。
ほんの数日前には、まだ蕾のような粒が枝に着いていただけで、Kとふたり、「まだだね…」と話していたのだった。
金木犀は、中国から渡って来た植物だけど、この9月の終わりに町を歩いていると、至るところでその芳しい香りがどこからともなくやって来て、どこに金木犀があるのかついつい探してしまう。
トイレの芳香剤と似ているとバカにする人がいるけど、自然の金木犀をぜひ一度嗅いでみて欲しい。
いくら嗅いでも飽きることはなく、深呼吸したくなるような豊かな香りも、2週間後にはもう嗅ぐこともできないだろうから。
日頃は目にとまることもないのに、一年に一度だけ、全身を使ってあたり一面に甘い香りを振りまいて、数週間と経たぬうちに忘れ去られてしまう金木犀を、なんとも愛おしいと思う。

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