Nに会いに、和歌山へ。1

「待っててね。N。いま会いに行くからね。」
今週は、何度もNに語りかけるように過ごしていた。
たった今、朝の便で関空へ着いたところ。これからバスで和歌山駅に、そしてそこから1時間以上かけて由良という町へ向かう。
実はNは、昨年の桜の咲く時期に亡くなっていた。
およそ1年も過ぎてそれを知らされたのは、もしかしたらNが僕のことを気遣ってのことなのかもしれない。
Nは、僕の性格を知り抜いていた。自分が弱って死んでゆく姿をもし僕に見せたら、僕が悲しみのあまり壊れてしまうだろうと思ったのかもしれない。
結婚をしていたNは、いつも僕に言っていた。「もしもの時には、お前だけは緊急治療室にでも入れるように、奥さんと姉とお母さんに言ってあるから…」
実際に、Nのお姉さんは二丁目にも来たことがあるし僕たちの全てを知っていた。お母さんにも何度も会っていたし、奥さんは、恐らく僕とNとの関係をわかっていたのだと思う。
今の僕にたった一つ心残りがあるとしたら、Nが痛みを感じている時、苦しい時に、ずっとそばにいて手を握りしめていたかったということだ。
どこか知らない遠くへ旅立つNに、いつだって僕がそばにいると言ってあげたかった。
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