いま手にしているものを、慈しむこと。

祖母の葬儀の時に、母が泣いていた。
その姿を見ながら、まだ学生だった僕も悲しかった。
そして、「お母さんは、なんであれほど泣いているんだろう…」と思っていたのを覚えている。
やがて僕も年を取り、7年前に父が亡くなった時に、昔、母があれほど泣いていた意味がはじめてわかった。
親を喪うということは、僕の想像を遥かに越える悲しみであり、痛みをともなう苦しみだったのだ。
そしていま、かつて自分の生命よりもたいせつに思っていたNを喪い、人生にはこれほど苦しいことがまだあったのか…と打ちのめされた。
人は生まれて、生きて、死んでゆくだけだ。
いま手にしているもの、いまそばにある人を、できるだけ慈しむことだけが、ただ僕たちに出来ることなのだろう。
自分の親であれ、恋人であれ、友人であれ、愛する人に、愛している気持ちを伝えよう。
いずれ愛する人が、その手を離れていってしまったとしても、愛していた、愛されていたという記憶は、温かいものとなって僕たちの中に残り、いつも励まし、支え続けてくれるだろう。
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