何気ない日常の風景。

誰かとつきあっていると、何気ない日常の風景にその人を感じることがある。時々そんな風景を思い出して、温かい気持ちになるものだ。
Kは病院で検査技師をしているので、濡れたままになったものなどは細菌の温床だと言って我慢出来ないようだ。だから、洗面所やお風呂のものは、すべて不思議な感じで上に浮いている。
コンタクトケースやコンタクトの洗浄液が入ったボトルは、下にキッチンペーパーが綺麗に折りたたまれて敷いてある。ハンドソープはS字型のフックに吊るされているし、シャンプーやリンスは金属の脚のついたものの上に置かれている。
Kは、僕と違って堅実で無駄遣いをしないので、頂き物のタオルを大切に使っている。
それも、擦り切れるくらいに使い込まれていて、そんなタオルが綺麗に折りたたまれているところを思い出すとせつなくなる。
洗濯物は、痛むことを気にして丁寧にネットに入れるし、すべて裏返して綺麗に干してある。
お風呂から上がる時に、バスタオルで身体をざっと拭いて上がろうとする僕に、脚の裏まで拭くように怒って、風呂のドアをピシャリと閉めてしまう。僕は身体を拭きながら、宙に浮いたシャンプーなどを見ている。
僕がKの家の風景を色々と思い出すのは、もしかしたら離れて暮らしているからかもしれない。
Kの洗面所には、二人で宮崎の海で買った綺麗な巻き貝がちょっこり置いてあって、その貝を見るたびに、宮崎の海での楽しかった旅を思い出す。
僕の家の洗面所にも、同じ巻き貝が置いてあって、その巻き貝を見ると、Kも同じようにこの貝を見ているだろうかと考える。
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