外苑の森。

僕はこの外苑前で高校時代を過ごしたのだけど、遅刻をして学校に行きづらい時には、銀杏並木に行くと同じように遅刻をした仲間たちがいて、そのまま一日中外苑や青山、原宿で過ごしたりしたものだ。
スポーツ施設を中心に緑が溢れ、春は桜や藤やなんじゃもんじゃの木が咲き乱れ、夏には蝉が集い、秋にはイチョウやもみじの紅葉でそこらじゅう染まるように、この神宮外苑は四季のうつろいをつぶさに感じさせてくれる。
美しく晴れた夕刻に、初秋の風を感じながら、久しぶりに信濃町から絵画館前をゆっくり歩いて家に帰ったのだけど、世界があまりにも美しく感じられて胸がいっぱいになった。
ジョギングをしている人もいれば、サイクリングを楽しむ人もいる。子どもたちは草野球をしていて、老夫婦はベンチでおしゃべりをしている。短距離の練習をしている高校生の表情は真剣そのもので、ダンスを練習している高校生もいる。それは、僕の高校の頃と変わらない風景であり、この神宮外苑という都内でも稀な広大な緑が残されている場所だからだろう。
神宮前の猥雑な界隈も含みながら、外苑の森はこの町に静けさをもたらし、美しい空気を守り、木々を育て、日陰を作り、虫を住まわせ、鳥を呼び、人を和ませてくれる。
僕が、この町を東京の中で最も愛し、この町から離れられずにいるのは、この外苑の森があるからだろう。

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