晩ごはんの準備で、スライサーを使ってゴーヤーをスライスしていたのだ。
スライサーを使う時はいつもは気を使い過ぎるくらい使うのだけど、今日はほんの少し別のことを考えていたのかも知れない。
右手の薬指の関節をほんの少し切ってしまった。切った時は出血しておらず、その後じわじわと出血が始まった。
幸い今日は焼肉にするつもりだったのでほとんどの準備は終わっていた。後は、茹でたほうれん草を絞ってナムルにしたり、ゴーヤーをレモンと和えたり、肉に塩胡椒したりするだけ。
KからのLINEには指を切ったことは言わず帰って来てから伝えて、残りの料理をKにやってもらう。
小さな切り傷であっても出血していると料理はほとんど何もできない。水を使って洗うこともできないし、食材をつかむことも難しい。
Kは僕の言うままに料理をテキパキとこなし、僕が手伝おうとすると「血が止まるまで押さえておかなきゃダメ!」と言って手伝わせてくれない。
出血が少し落ち着いて来たので、今度は強力なバンドエイドに貼り替える。こんな時、Kがいてくれて本当に良かったと思うのだ。
たかが指の怪我であっても、バンドエイドを一人で貼るのと、誰かに貼ってもらうのとでは全然違うものだ。
人の愛情ややさしさは、きっと傷口の回復にも影響するに違いない。