日本家屋に住むのは子どもの時以来なので、木と紙で丁寧に作られた空間に感心することが多い。
木材の材質の違いや、木のそのままの表面の質感を活かした作りは人にやさしく、格子で美しく区切られたグラフィカルな模様に、紙の柔らかな質感とそこを通り抜ける光のやさしさを感じることができる。
でも、都会のマンション暮らしに慣れた僕には所作がまだなっていなかったようで、引っ越した当日にベッドを動かした時に襖に穴を開けてしまった。その後も海を追っかけている時だったかにもう一つ穴を開けてしまい、障子にも2箇所くらい穴が開いている状態だった。
襖も障子も畳もよくできたもので、張替えにはそれほどお金がかからないことがわかったのだけど、張り替えるにしても1年後くらいにしようかと思いそのままにしていた。
Kは僕と違って几帳面な性格なので、実はこの穴がずっと気になっていたようで、先日襖や障子の穴を取り繕う紙を買ったようだった。
しばらくしてテーブルでその紙をハサミで切っているところを見たのだけど、うまくできたかな?と思って見に行くと、ぱっと見穴が気にならないようにふさがれていた。
でも、その穴を塞いでいる紙は正方形や長方形ではなく、一つは海の形を切り抜いたものと、もう一つは僕とKの写真を切り抜いた形になっていた。
今までKが絵を描いているところも見たことなかったのだけど、思わぬKの遊び心にほっこりとした。
およそお金のある家の暮らしとは大違いな僕たちの家らしい襖が出来上がったのだった。