叔母の誕生日で小さな胡蝶蘭を送っておいたのだけど、夕方になって電話が来た。
叔母には子どもがいなくて、僕が小さな頃叔母の養子にするかという話がたびたび持ち上がった。
結局母も父も2人しかいない子どものうちの1人を手放すことが出来ず、養子の話は立ち消えとなった。
叔母は今日で83歳。
今日も目の見えないお爺さんの案内人としてボランティアで出かけていたようで、足腰もしっかりしている。
「ただしちゃん、おばちゃんとただしちゃんは目が見えるから幸せなんだよ。目が見えない人は本当に大変なんだから」
ボランティアで関わっている人たちの苦労を僕に話して聞かせてくれる。
僕の祖母は92歳まで生きたので叔母もそれくらいは長生きしそうな気もする。
毎年叔母の誕生日にお花やお菓子を送っているのだけど、電話越しにとても喜んでいるのがわかって僕もほっとするのだ。
家族に先立たれて一人になってしまった叔母には、きっと僕ぐらいしか誕生日のお祝いを送る人もいないのだろうと思う。
沢山働いて苦労してきた叔母には、健康で長生きしてほしいと電話で話しながら思ったのだった。