山の中に住むことにしたのは、窓からの景色が美しかったから。
大きな紅葉が悠々と生い茂り、夏に初めて訪れた日に、クヌギの木には、雌雄のクワガタが仲良く並んでいたのも不思議な縁を感じたのだ。
でも、実際に住むとなると、きっと虫もすごいだろうし、獣だっているに違いない。
今のマンションでは、せいぜいネズミやハクビシンを気にして生活していればよかったのだけど、これからは、猿やイノシシ、鹿を気にしないといけないみたいだ。先日熱海にいた時に、町中に放送が入り、「伊豆山で黒い熊らしきものが出たので、山には近づかないように」と言っていたが、住む以上、近づかないわけにもいくまい。
伊豆半島には、圧倒的に鹿の数が多く、イノシシ、猿、その他の動物の数が続いて、人間の数なんてほんのわずかなのだそうだ。それを思うと、人間が我が物顔で生活しているのは、動物にとって見たらなんて事のない自分たちの王国に、人間が時折ちらほら現れる程度にしか写っていないのかもしれない。
これから毎日の山の暮らしの中で、季節を思う存分に体験できるだろう。