はっさく。

今月のはじめに和歌山にお墓参りに行った帰り道、畑の沿道ではっさくを売っていた。
中を見ると大きなはっさくが4つで200円と書いてある。小さな貯金箱のようなものに200円入れて、カバンの中にはっさくを入れて少し重かったけれど持ち帰った。
帰って来てはっさくを家のリビングで取り出すと、何とも言えない清々しい香りがして、Kを呼んで手に持たせては、香りをかがせたりしていた。
小さな頃、母がはっさくをむいて食べさせてくれたことを思い出す。分厚いはっさくの皮をむくのも、中の甘皮をむくのも面倒くさく、自分では食べたがらなかったのだろう。
いま改めて考えてみると、子どもの頃に食べて以来、はっさくというものを食べた記憶がない。それはきっと、果物屋さんでもグレープフルーツのようにメジャーではなかったのだろうし、あったとしても敢えて自分で買おうとはしなかったのだろう。
朝、ご飯の後に、思い出したようにはっさくを食べてみようと思った。子どもの頃のかすかな記憶では、はっさくとは甘いものではなくて酸っぱいもののイメージがあり、味にはまったく期待をしていなかった。
はっさくをまっぷたつに割り、前にここにも書いたグレープフルーツナイフを使って食べやすくカットする。
そうして口に運んだはっさくは、程よい酸味がありながら、ほろっと苦みがあり、けれどもしっかりとした甘みが口いっぱいに広がった。こんな豊かな味わいは、自然しか作り出すことは出来ないだろうと思われた。
「おいしいね」 
「おいしいね」
Kと僕は、何度もそう言って、はっさくを口に運んだ。

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