幸福。

寝相の悪いKは、ベッドの上をあっちこっち動きながら、
時々僕の身体に足を乗っけたりしながらぐっすり眠っている。
暑がりなので、冷房の効いた部屋でも、
僕がかける上掛けを、いとも簡単に払いのけながら。
急に夜中に目が覚めて、
仕事の問題やら、将来のことをぼんやりと考えた。
暗闇の中で、得体の知れない不安に襲われる。
ふと横を見ると、
何も心配することなどないように、
子どものようにKがすやすやと眠っていた。
その寝顔を見ていたら、
この世に、僕のような人間をたいせつにしてくれている人がいること、
そのこと自体が奇跡のように思えたのだ。
父や母もきっと、
僕や兄の寝顔を見ながら、眠れぬ夜を幾度も乗り越えて来たのだろう。
それは、確かに自分が幸福であると感じる瞬間だった。

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