Kと一緒になって10年めに入りました。

Kと出会ったのは、Kがまだ27歳の時、僕は43歳だった。

大分と東京という長距離で離れて暮らす僕たちは、最初に会った時にこんなふうに一緒に人生を歩むようになるなんて正直思いもしなかったのだ。

Kはまだ子どものようなあどけなさが残る青年で、福岡や大分、東京でたびたび会い、長崎、熊本、鹿児島、宮崎、京都、大阪と、日本の様々な場所を旅するように月に1度か2度会っていた。

旅の終わりに駅や空港で二人が離れ離れになるときに、Kはじーっと瞳の奥で悲しそうに僕を見ていた。楽しい時間が過ぎるのはとても早く、僕も別れるのが耐えられないくらい辛かったのを覚えている。

付き合い始めて3年が過ぎてからKは思い切って東京に引っ越してきて、その後は駅や空港で悲しい別れをしなくても良くなったのだった。

その後、二人で大きな裁判にも参加して、どういうわけか今は熱海に住むようになり、大型犬の海を飼い始めて、来年の頭には今度は宮古島に移住することになった。

この9年間、僕の人生も大きく変わっていったけど、僕以上にKの人生は急展開と大きな方向転換をしていったことと思う。

大分での大病院での安定した仕事をやめて、僕のもとに来たことは人生の大きな賭けだったに違いない。

Kは昨日の裁判の最後に弁護士からこんな質問をされた。

「あなたにとって、ただしさんはどんな人ですか?」

「いつも僕を守ってくれる人です。安心を与えてくれる人です。僕もただしさんを守りたいと思います」

僕も弁護士に「あなたにとって、Kさんはどんな人ですか?」と聞かれた。

「僕の生命のように大切な人です」と答えた。

9周年、おめでとう。そして、ありがとう。

新しい1年も、海と一緒に3人でたくさん笑おうね。

「結婚の自由をすべての人へ」本人尋問。

朝の10時30分から夕方の16時30分まで、東京地方裁判所において本人尋問が行われた。

午前中は、小野ちゃん・西川さんの子育てカップルと、ある原告の妹さん。午後は、よしさん。大江さん・小川さん。そして最後にKと僕の順番だった。

尋問が始まる前に、嘘偽りを言わないことを裁判官の前で宣誓する。嘘なんて言うつもりはないけど神聖な場所なので緊張して背筋が伸びるものだ。

原告一人一人のお話を聞きながら、こんな辛い思いをしてきたのかと何度聞いても涙が流れた。

原告の妹さんの証言は、客観的な意見でとても力強く、裁判官の胸を打ったと思う。

午後一番のよしさんは、今年の1月にパートナーの郁さんを亡くしている。よしさんの尋問は、途中からよしさんが堪えきれす涙が溢れて話すことさえできなくなり、僕も涙がとめどなく流れた。

小川さんと大江さんの二人は、堂々とした返答で頼もしかった。

Kは土壇場に強いみたいで全くあがる様子もなく、スラスラと自信を持って話していた。

おおとりとも言える最後の僕は、緊張して前半部分の返答を1箇所言い足りない部分があったものの、なんとか最後まで答えることができた。途中、母へのカミングアウトの部分では不覚にも涙声になってしまい、更に弁護士から質問が出てきた。「よしさんの病院での待遇を聞いてどう思われますか?」

「まるで自分のことのように感じて・・・どれだけ人の尊厳を踏みにじるんだろうと・・・」と言う言葉を、僕は泣きながら答えていた。

裁判長も裁判官も、僕たちの話に真摯に耳を傾けてくれていたと思う。

判決は分からないけど、どんな結果が出ようとも、何度でも立ち上がり、また声を上げていくまでだ。

今日で地方裁判所でのクライマックスはひとまず終わった。

海、1歳の誕生日。

僕たちが東京に来ている今日、海が1歳の誕生日を迎えた。

海はトレーナーさんの家に預けてあって、どうしているかな?と思いながら昼過ぎにトレーナーさんと連絡を取ってみた。

トレーナーさんの家には3頭犬がいて、他にも預かり訓練をしている犬が2頭いる。海はそんなたくさんの仲間たちに囲まれて楽しそうに原っぱを走り回っている映像が送られてきた。

トレーナーさんに海が誕生日だと告げると、夜に海のハッピーバースデーを祝ってくれた写真が送られてきた。

自分の誕生日など全く分かっていないだろうけど、いつものドッグフードにチキンのお肉をてんこ盛りで足してもらったようで、海ががっついて食べている写真もあった。

せっっかくの誕生日を一緒に過ごすことができなくて寂しいけど、来週末にお祝いをしようね。

久しぶりの新宿。

宮古島から東京に飛び、夕方には懐かしの新宿に来た。今回も宿は新宿1丁目のシタディーン新宿。アパートメントスタイルの部屋なので滞在が楽に感じる。

歯医者さんに行っていたKと新宿3丁目で待ち合わせて、昔よく二人で行っていたレストラン「グリル満点星」へ。二人ともなぜかグラタンが食べたくて、大満足の晩ご飯だった。


その後、何ヶ月ぶりだろうか久しぶりの新宿2丁目へ。
「ぺんぺん草」を覗くと、懐かしいひろしさんの顔があった。
「ぺんぺん草」は今年、数年ぶりに芝居を再開するようだ。
12月9日(金)10日(土)11日(日)、オリジナルの脚本による「地下室」。
仲通りにある「シアター新宿スターフィールド」にて。

その後Bridgeに行き、懐かしい顔ぶれにたくさん笑った夜だった。

イストゥマリャ

宮古島の道端に、「イストゥマリャ」と書いてあった。

呪文のようなその名前は、この場所の名前だと言う。

この不思議な呪文のような宮古島の言葉は町中にポロリポロリとあって、今でも昔の呼び名で呼ばれているのだなぁと温かな気持ちになる。

昔、シドニーに仕事でよく行っていた時に、シドニーの町中の地名にも元々アボリジニが使っていた呼び名がそのまま書いてあるのを知った。

そういえば宮古島出身の人と話していて笑ったのが、沖縄本島と石垣島と宮古島の人がそのまま方言で話したら、お互いに何を話しているのかさっぱりわからないのだそうだ。

僕たちは勝手に沖縄本島も石垣島も宮古島も沖縄と一括りにして呼んでいるけど、実は元々それぞれ別の文化だったのだろう。

文化の違いこそ世界の面白さであり、多様性こそ地球の魅力に思えるのだ。

母の家に泊まりに。

急遽、一泊二日で宮古島に行くことになり、千葉の母の家に泊まることにした。

母と父は朝ごはんは5時頃食べて、昼ごはんは10時頃に食べる。晩ごはんは午後3時頃に食べて、早ければ7時に寝てしまうらしい。

僕が夕方行くことになり父と母は晩ごはんを食べずに待っていた。

母の作ったグラタンとポトフをいただき、父はカツを食べる。父はおよそ洋食のようなものが嫌いで、お寿司やカツなどを好んで食べる。

二人の関心は僕よりも海で、海のトレーニングの写真を見せると、「大きくなったわね…」と言ってニコニコしながら眺めている。

6時には父が眠くなり自分の部屋に行き、母も居間でテレビを見ていたけど自分の部屋に入って行った。

僕はリビングのソファの上に寝るつもりで、パソコンを叩いたり本を読んだりして過ごす。昔から人の家で眠れないのは変わっていないようで、全然寝付けそうにない。

本を置いてそろそろ寝ようかと横になった時に地面が揺れた。

地震は東日本大震災の記憶を甦らせ、このまま大きい地震が来たらどうしよう?Kと海はどうしてるだろうか?と不安になる。

すぐにKとLINEで連絡を取り合い、千葉は震度5だけど熱海は震度3だとわかりほっとした。

父と母は、千葉の家を僕のために残しておこうと思っているようだったけど、僕がいつか宮古島で暮らすことを告げると少し寂しそうだった。

先月80歳になった母は、「神様にいい家が見つかるようにお願いしておいたから」と僕に言う。

洗面所に行くと父の入れ歯がコップに入っていて、若く見えてももう84歳なんだなぁと思う。

「お父さんとお母さんも宮古島に長くいられるように、離れを作るからね。冬も暖かいから遊びに来てね」

駅まで軽自動車で送ってくれた母に告げて空港に向かった。

本人尋問に向けて。

来る10月11日(月)は、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の本人尋問が行われるのだけど、先週末の日曜日に僕とKは東京に行きこの本人尋問のための合宿をした。

持ち時間は大体24分くらいなのだけど、僕の場合は少しオーバーしてしまい、尚且つ質問と答えがいくつか噛み合わなくなってしまい焦った。

僕はこの後質問を変えて、全体を再構築するという宿題が課された。

Kは17分くらいで終わってしまい、質問をさらに増やそうということになって終わったのだった。

昨夜のKはどういうわけか急にやる気に満ち溢れたようで、弁護士が送ってきた質問内容を読み、自分なりに考えてその答えを書き直しはじめた。

僕は早々に眠くなってしまい先に寝室に行っていたのだけど、0時を過ぎても一向に寝室に来る気配はなく、何度か様子を見に行った。

「Kちゃん、また明日やればいいじゃん。もう寝よう」
「まだ、これ書いてから寝るから先に寝てて」

この裁判は、どちらかというと僕が積極的に進めてきたのだけど、ここへ来てKの意識もどんどん変わっていっていて、この裁判に原告として臨んでいる重みを感じているようだ。

修正が終わって1時近くに寝室に来たKは、ベッドに入るなりスヤスヤと寝てしまった。

Kのことを心配しながらうとうとしていた僕は、かえって目が覚めてしまって朝方まで眠れずに過ごしたのだった。

あざみ

僕の住んでいる熱海の周りの山や住宅地を歩いていると、至る所であざみが咲いている。

冬の間は枯れて形もないのに、春になるとそのトゲトゲした葉が顔を覗かせて、あっという間にグングン成長して花を咲かせる。

葉の形も彫刻的で美しいし、花も古典的な美しさだと思うけど、その生命力の強さには驚かされる。

草刈りをして地面から上をちょん切ったとしても、すぐにニョキニョキ葉っぱが生えてくる。

山の中に住んでみて、にんげんが思い通りにしようとする方が間違っているのだと思い知った一年だったな。

東京を離れて熱海の山の中に暮らしてみて、はじめてわかったことが沢山ある。

海、久しぶりの留守番。

僕たちが裁判に向けた合宿に行くため、午後から家を空けることになった。

海をどうしようか直前まで迷ったのだけど、1日預けるほどでもないし、帰りの時間が見えないので時間単位でお預けしても帰りに引き取れない可能性もある。

考えた末に結局午後から家を出て8時間以内には家に戻れるだろうということで海だけ一人留守番させることにした。

4時間くらいまでならば狭いクレートの中で留守番。4時間から8時間くらいまではケージに入れて留守番。なんとなくそんなルールを作っていて今年の春くらいまでは僕もしょっちゅう東京に出かけていたので留守番させる機会も多かった。

でも、4月くらいからはほとんど僕が東京に行く機会もなくなったので、海はほぼ毎日一日中僕と一緒にいるということに慣れているに違いない。

ケージ内にお水を入れて、おもちゃも入れて、Kが心配なのかビデオをセットして出かける。

ケージの上はテントのような帆布が四隅を密着させて覆っていて、外へは出られないようになっている。いつもはこの上にドアを置いて、その上に荷物を入れたトランクを載せて出かけていたのだけど、今回はバタバタしていたこともあり帆布のまま出かけた。

東京で練習が終わり、新幹線に乗った僕たちはずっと「海さんはどうしているかね?」と話していた。

いつもは車で一旦家の前まで来て過ぎてからUターンして戻ってきて止めるのだけど、家の前を通った時にKが言った。「あれ?今、海のシルエットが見えたみたい・・・」「え?気のせいでしょ?」

車を止めて、玄関へのアプローチの階段を上がっていくと、海が窓辺に座りながらこちらをじっと見ているシルエットが浮かび上がった。続いて長く大きな遠吠えが聞こえた。「ウオーーーーーーン!ウオーーーーーン!」

「あ!海さん脱走しちゃってるよ!」「ほんとだ!」

海がまだ小さな頃に長時間の留守番をさせると、僕たちが帰ってきた時には自分だけ一人ぼっちにされた海がうんちまみれになっているのを何度か経験していた。今回、海はまた一人ぼっちにされた腹いせに何かいたずらをしているに違いないと恐る恐る家の中に入って行った。

海は、「僕だけ置いていって、バカバカバカ!」と起こりながら、でも狂ったように歓喜しながら出迎えてくれた。

家の中を一つ一つ点検すると、洗濯物入れから一つKの靴下を持ってきていたこと以外は、他には何もいたずらはしていなかった。

うんちまみれのベッドやソファもなく、障子やふすまや壁に八つ当たりした形跡もない。キッチンの食材を食べた形跡もないし、家具をかじった跡もない。

あとでビデオを再生したところ、海はケージの上の頒布の隙間から軽く出たようで、特に騒ぐでもなく普通に窓辺に行って僕たちの帰りを待っていたようだった。

幼い頃には何をするかわからなかった野生児が、まもなく1年になる年月を経て成長していたのだった。

長い留守番をさせてしまった海の身体を抱きしめたら、いつも嗅いでいる海の焦げたような匂いがした。

「結婚の自由をすべての人に」訴訟本人尋問に向けた合宿。

10月11日の裁判に向けて、東京で合宿が行われた。

合宿といってもまるまる1日かけて、弁護士事務所内にある法廷に模した作りの部屋に入り、一人ずつ本番さながらの尋問を行うのだ。

僕たちは熱海から行くことと海を留守番させなければならないため、12時頃に家を出てから東京駅に向かう午後からの参加にした。

一人の尋問時間はおおよそ24分間。今回は7人の原告と一人の原告の妹さんが尋問を受けることになっている。

それぞれ反対尋問や裁判官からの質問などが入ることを考えると、タイムスケジュールは朝の9時過ぎから夕方17時くらいまでかかりそうだ。

24分間の尋問は、幼少期から現在に至るまでの数多くの質問事項があり、それを直前までパソコンで確認しながら尋問席に座った。

弁護士が僕の左側に座り、裁判官は僕の正面に3人。右側に被告席がある。

繰り返される質問になんとか答えるも、同じような質問に答えを忘れてしまったり、質問に対してうまく答えになっていなかったり、本番ではないものの緊張してしまい思った以上にうまくいかなかった。

本番までに後2回はオンラインで練習して、なんとかスラスラ言えるようになりたいものだ。

いよいよ「結婚の自由をすべての人へ」訴訟、本人尋問は10月11日((月)です。ぜひ傍聴席に見にきてください!
https://www.marriageforall.jp/blog/20210929/