年の差カップル。

 「カナダに旅行に行くので、相談にのってください」
知人からそんな連絡が入り、『KINSMEN』で待ち合わせ、その後Bridgeへ。
30代はじめのTくんは、久しぶりに取れる長期休暇に、トロントを中心にして1週間くらいで遊びにいきたいという。トロントは行くとしても、他に、自然公園に行くか、モントリオールに行くか、迷っていると言うのだ。
僕は、せっかくだからトロントとは全く違う、フランス文化の影響が色濃く残るモントリオールに行くことを勧める。そして、先日USAGIですれ違ったモントリオール在住のJFに会ってくれば?と。
Tは、20歳以上年上の彼と6年間もつきあって一緒に住んでいると言う。そして理系。とても保守的で、2丁目のことも、ゲイが普通に知っていそうなことも結構知らなかったりする。
T「LGBTってなんのことですか?」と真顔で聞かれた。
僕「Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender」
T「なんで、GLBTじゃないんですか?」と聞いてくる。(そういうことを聞き返す辺りも理系っぽい)
T「GLBTと表記する国や地域もあるし、その先のLGBTQ・・・など、もっといろいろなセクシュアルマイノリティーを表記する国もあるよ。日本では、まず、LGBTを根付かせて、その後に時代とともに変わっていけばいいかな・・・というのが今の周りの共有している雰囲気かな。」
Tくんにとっては、56歳の彼との関係も、いろいろな悩みがあるようだ。年の差のあるカップルならわかるのだけど、彼が定年になったあとどうするのかとか、もっとその先、老後と言われる年齢になってゆく時にどうしたらいいのか・・・。
日本で生きるセクシュアルマイノリティーは、幸せな老後をなかなかイメージしづらい状況にいるのだと思う。
それは、ふたりの関係が社会的に認められていないために得られない権利がたくさんあったり、大事な時にパートナーに対する決定権がなかったりすることも大きな原因だろう。
そんな年の差カップルの話をしながら、気持ちのよい土曜の夜を過ごしたのでした。(ああ、僕をトランクにつめて、カナダに連れてって欲しい・・・)

毎日のささやかなこと。

朝起きたら、「おはよう」。
お昼には、何かLINEのスタンプ。大抵ブラウンがトイレに行っているものか(僕がよくトイレに行くため)、ブラウンが散歩しているもの(僕が働かずにさぼってばかりいると思ってる。あながち間違っていない気もする)。
夕方家に帰る頃に、「ただいま」。
東京と大分で離れて暮らす僕とKは、毎日毎日何気ない言葉をかけあいながら、その日の相手の様子を気遣っている。
それは、昨夜元気だったからといって、今日も元気とは限らないからだ。人間は生きものだし、毎日の外的要因によって、感情にも起伏があるものだから。
今朝起きてから、7時頃に僕が「おはよう」と打ったまま、昼になってもKからはなんの返信もスタンプもなかった。
「あれ?何かあったのかな?スマホを家に忘れて行っちゃったのかな?それとも、どこかで落としてしまったか?」
何も連絡がないまま夕方になり、7時頃やっとKからLINEが入った。
「携帯壊れた。画面割れた。」
それを見て、僕もほっとして、「よかった。心配したよ」と打った。
Kは、「ただしくんに電話しようと思ったんだけど、名刺が見つからなくて、Xにかけたけど出なかった…謎の着信があったら僕だからと言っておいて」
どうやら、僕の電話番号がわからずに、X(ムーン)に電話をかけたようだ。かわいそうなムーン。
もしも、スマホも携帯もないような昔だったら、僕とKはつきあってはいなかっただろうなあと思う。
毎日のささやかなことを伝えながら、僕たちはなんとか繋がっているのだ。
「おやすみなさい。ゆっくり休んでね」
毎日同じような言葉でも、ふたりにとってはたいせつな言葉なのだ。

新しい浴衣を。

友人の会社を訪れている時に、フィンランドのデザイナーの作ったテキスタイルを見せていただいた。それは、白地に黒でグラフィカルな模様が配され、どこの国の意匠とはわからない美しさがあった。
僕「この布で、浴衣を作ったらきれいでしょうね・・・。浴衣も今や、若者にも人気だし、あえて日本の文様ではない布で作ったら面白そう・・・」
そんな無責任な発言をしたままずっと忘れていたのだけど、「まずは、ただしさんの浴衣を一つ作りたいので、採寸させてください」との連絡をいただき、僕の都合で、この夏はしょっちゅう東京を離れていたため、今頃採寸する運びとなった。
墨田区の押上という下町に向かい、古くからある呉服屋さんで採寸をしていただいた。
普通、着物は反物で、横幅が決まった布が丸められてあるのだけど、今回持ち込まれたフィンランドの布は、縦も横も大きなものを、着物の寸法に合わせて裁断して縫ってゆくということ。
北欧の麻で出来た布は、洗濯したらいったいどれくらい縮むのかしら・・・とか、それはそれは一筋縄ではいかない話のようで、お店の女性といろいろと話し合って、ゆっくりと行程を進めてゆくという了解をえた。
夏は終わってしまったけれども、また来年の夏に向けて、愉しみが一つできました。

母の勘。

会社にいくため歩いていたら、母から電話が鳴った。
「あんた、どっか具合悪いでしょう?お母さん、今日起きたら、なんだか左耳がかゆいから、あんたに何かあったと思ったの」
僕は話し始めたとたん、急に咳こんだ。
母「ほら。咳が酷いじゃない。お医者さん行ったの?」
僕「行ったけど、熱はなくて、のどがかゆいのがずっと続いているんだ・・・話すと咳が出て・・・」
母「別の医者に行った方がいいわ。また、連絡します。会社休みなさいね!」
母は昔から、こんな風に不思議な勘を持っていて、突然注意を呼びかけてくることがある。『左耳がかゆい』時は、家族の誰かが具合が悪い時だそうだ。そして、これは母方の祖母がまったく同じだったのだけど、僕の一族にとって、『鯉の夢』を見ると、家族の誰かが足を折ったり、事故を起こしたりするのだった。
母は、こんな勘だけでなく、『人魂(ひとだま)』のようなものを見えるらしい。
昔、通りを大きなひとだまがゆっくりと動いていったのを見た母は、「文房具屋さんの大塚さんが亡くなったわ・・・」と言ったのだけど、その通り、大塚さんが亡くなっていたのだった。
また、再婚した母が、義理の父の家に嫁いでしばらくの間は、グレーの大きなひとだまが家にいたそうだ。それは、気づくと庭をさーっと横切ったり、ふと振り返ると、母をどこか離れた所から見ているような感じだったそうだ。
母「もしかしたら、随分前に亡くなった前の奥さんなんじゃないかと思うの・・・。嫌な感じはしないんだけど、なんだか心配そうにしばらくいたけど、安心したのかいつのまにか出てこなくなったわ・・・」
そんな不思議な力を、僕はどうやら引き継いではいないようなのだけど、時々祖母や母のそんな力を、不思議と身近に感じることがある。

大阪からHが来た。

久しぶりに家に早めに帰って、シェリー酒を飲みながらひとりで『茹で豚』をのんびりと作っていたところ、HからLINEが入った。
「突然ですが、いま東京です」
Hはたびたび東京に出張で来ているのだけど、事前に僕に連絡をすることはまずない。いつもこんな風に突然、それも夕方や夜になって「今から会えないか?」と言ってくるのだ。
「あと30分くらいしたら出られるので、伊勢丹で待っててください
(茹で豚を茹でるのにもう10分、味をしみ込ませるのに10分かかるから)」
その昔、8年間くらい東京に住んでいたHは、今は実家のある大阪で暮らしている。僕より5つ年上で、ものすごいクローゼット。いつも自分がゲイであることに罪悪感さえ感じていた。それでもそんなHを、僕は好きになってしまったのだった。その恋は完全には叶わぬまま、Hに恋人がいたことと、大阪にHが戻ってしまったことでゆっくりと冷めていったのだった。
『神場』でワインを飲みながら、仕事のこと、家族のことなんかの話を聞く。そしていつものように、ゲイライフの話へ。
H「今はもう、大阪で映画に行くことさえできないんだ・・・大阪は東京と違って、映画館で誰に会うかわからないから、男同士で映画を観ているところを見られたら、絶対バレちゃうと思うんだ」
H「今はもう、飲みにも行かないよ。堂山はノンケの店もあるから、堂山なんかで会社の人に蜂会わせたら、それだけでホモだってバレちゃうからね・・・」
僕「そんなにいつも人の目を気にしていて生きるなんて、本当につらいだろうね・・・」
H「会社でもすぐにプライベートの話で突っ込んでくる人がいるから、どうかこちらに話が向かないようにとずっと思ってるんだ・・・」
僕「でも、会社やめたら、その人たちとはもう会わないんでしょ?そんな人たちのことをなんで気にするの?もっと楽に生きられないの?僕が一緒に行って、横でレインボーフラッグでも振ろうか?」
H「僕には、ただしみたいな生き方は無理だよ。できないよ」
もしかしたら、日本中のほとんどのゲイたちは、Hのように毎日息を殺して生きているのかもしれない。自分がゲイであることを隠しながら、決して気づかれることのないように・・・。
そんな生き方を思うとき、僕たちゲイは、なんでそんな風に息を殺しながら生きなければならないのだろう・・・と思う。
そんな風に四方八方に気を張り巡らせながら生きることで、僕たちはいつか幸せな人生を送ることができるのだろうか・・・?
恋人と一緒に映画にも行けないし、町も一緒に歩けない生活なんて、今の僕には想像できない。Hがいいとか悪いとかではなくて、そうせざるをえない状況が、今の日本の社会なのだと思う。
そして、そんな馬鹿げた状況を、僕たちは時間をかけてでも、なんとかして変えていかなければならないと思うのだ。

『ジュラシックワールド』と『インサイド・ヘッド』

クリス・プラット・・・ため息

かわいいビンボン

★ジュラシックワールドhttp://www.jurassicworld.jp
スピルバーグが絡んだ壮大な映画を、僕はあまり好んで観る方ではないのだけど、この手の映画は、劇場でやっているうちに観ておかないと、家のテレビや飛行機の中などでは、その魅力は100分の1も味わえないことになってしまうものだ。今回、単純なKが東京に来ていたので、二人で観に行った。
何がよかったかって・・・主演の『クリス・プラット』が超セクシーなところだろう。恐竜なんてそっちのけで、クリス・プラットのかっこよさに釘付けになってしまった。
若干脚本の流れがわかってしまうものの、こういったエンタテインメントものは、ドキドキハラハラ最後まで息をのんで観ることが出来るし、観終わった後にスカッと爽快になれるものだ。2200円払ったとしても、十分に観てよかったと思えるに違いない。デートに最適。
★インサイド・ヘッドhttp://www.disney.co.jp/movie/head.html
『感情』という人間の内面の不思議な世界を表現した、ピクサー長編アニメーション20周年記念映画。
主なキャラクターは、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリ・・・
毎瞬毎瞬のように変化する感情に焦点を当てて描かれたこの映画を観て、よくもこんな脚本を子ども向けに書いて制作したものだ・・・と感心してしまった。
大竹しのぶが声で出演している『カナシミ』も素晴らしいが、『ビンボン』というキャラクターが秀逸だろう。ビンボンとヨロコビが脱出をはかる場面では、思わず声をあげて号泣してしまったのだけど、一つ隣りの4歳くらいの小さな女の子も僕と同じところで一緒に号泣していた・・・。

ベッドのこと。

コペンハーゲンのホテルのベッド(天蓋付き♡)

僕の家のベッドは、クィーンサイズで長さ200センチで幅が160センチある。本当は、幅180センチのキングサイズがいいなあと思うのだけど、部屋の広さからしてクィーンサイズが丁度いいと思っている。
Kが東京に来ると、いつも僕がベッドの右側の端っこに寝て、Kは大の字になって真ん中で寝ながら、時々僕の身体の上に脚を乗っけて来たり、肘を立てて僕に肘攻撃をして来て、僕を更にベッドの端に追いやろうとする。
掛け布団は、普段は羽毛の布団で、大きな220✖️240くらいのものが一つなのだけど、これも暑がりのKは、脱ぎ出して僕の方に全部押し付けて来たり、そうかといえば、急に思いついたように全部取られて丸裸にされたり・・・
今回、コペンハーゲンの2つのホテルに泊まったのだけど、不思議なことに、どちらのホテルも大きなベッドが真ん中で二つに分かれてマットレスがくっついて一つになっている状態で、これが一番驚いたのだけど、上の掛け布団も一人ずつ使えるようになのか、二つに分かれていたのだ。
デザイン先進国であるデンマークの、無駄を徹底的に省いた生活スタイルがこの二つに分かれたベッドや布団を作り出したのかもしれないけれども、僕はこのベッドで一人で寝ていたので、一つの布団だけ使い、毎日片方は使わずに過ごしたのだけど、広いベッドなのに、片方のベッドしか使ってはいけないような気がして、なんだかちょっと窮屈に感じたものだ。
東京に帰ってきて、Kといっしょに寝ていると、「もしかしたら、もし二人で寝ることがあれば、あのふたつに分かれたベッドは意外と使い勝手がいいのかもしれない・・・」と思ったのだ。
それは、寝ている時に寝返りをうっても、隣の人には衝撃も少なく伝わるだろうし、布団を引っ張ったとしても、隣の人にはまるで影響は出ないだろうから。
どんなに一緒にいたいパートナーであっても、寝る時はお互いの睡眠のペースを優先して、大切な睡眠をできるだけ確保できるようにという考えなのかもしれないと。
でもよく考えると、たとえふたつに分かれた布団を使ったとしても、きっとKには関係ないだろうな・・・とも思う。分かれたマットの境界線なんて気にせずに、ずんずん僕の方にくっついてきて、僕を端に追いやり、僕の布団までまるごと奪ってしまうに違いない・・・。

加藤牛肉店シブツウ

コーンビーフ

揚げ物三種

赤身三種

山形牛で有名な銀座の『加藤牛肉店』が、渋谷にもお店を出していたというので、友人のXと、たまたま会ったSと、肉好きのKも鼻息荒く乗り込んだ。
僕が勝手に、ステーキか鉄板焼きの店を想像していたらそれが違って、豚肉も扱うし、ランチなんかは揚げ物がメインのようだった。
まずは、『加藤牛肉店』特製のコーンビーフを。昔食べたことがある、缶詰のコーンビーフとはまるで別物だ。手作りのコーンビーフは、脂が適度に少なく感じられ、赤身のお肉の味が立っている。
自家製のハムやサラミ、ソーセージも美味しいし、オムレツも前菜にしてはボリュームがある。
三種類の揚げ物は、サクサクで、ランチに揚げ物を食べに来てもいいなあと思わせる。
バーニャカウダは、アンチョビの味が効いていて、煮込んで食べるものだった。余ったソースは、後ほどリゾットになって出てくる。これがうまかった!
牛と豚が6:4のハンバーグは、ほどよく柔らかい。
そして、お待ちかねの赤身の三種盛り。トモサンカクは赤身の中でも脂の美味しさを感じる。
このお店、メニューが多岐に渡っているので、注文する時に店員さんに相談した方がいいだろう。
店内も綺麗だし、デートにも最適。
驚くことに、この店も渋谷二丁目。略して『シブツウ』!
★加藤牛肉店シブツウ
03-6427-5961
東京都渋谷区渋谷2-12-12 三貴ビル B1F
http://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13180717/

ABASQUE

モンサンミッシェルのムール貝

ヤリイカのファルシ

キントア豚のロースト

デンマークから帰るやいなや、Kが東京にやってきた。
ずっと前から、スペイン料理を食べたい…と言っていたので、渋谷にある『アバスク』へ。
20席に満たない客席、そして暗めの店内。入った瞬間にきっと美味しいだろうな…と思う。
メニューはアラカルトもあるし、コースもある。その中から、6242円で3皿というプリフィックスのメニューをお願いする。これは、1人分の料金ではなくて、3皿分なので、これをシェアしながら、他に食べたいものを別に頼む形にした。
◯キントア豚の生ハム(ハーフサイズ)
◯ラタトゥイユ
◯ヤリイカ・ファルシのソテー
◯モンサンミッシェルのムール貝
◯キントア豚のロースト
◯パエリヤ
キントア豚とは、バスク地方で放牧されている豚で、身がしまっていて味に深みがある。まずは生ハムで深みのある味を楽しむ。
Kは、ラタトゥイユが気に入ったようだ。酸味が抑えられ甘みがある。
ヤリイカのファルシは、香り高い。
モンサンミッシェルのムール貝は、小ぶりでありながら、身はぷりっぷりしていてふくよかだ。貝殻を使って食べるムール貝の食べ方をKに教えたら、同じように貝殻を使って食べていた。
この店の自慢と言われるキントア豚のロースト。豚肉本来の味がしっかりとして、それでいて硬くない。付け合わせの人参のローストもびっくりするくらい美味しい。
パエリヤは、値段の割にいまひとつだったけど、パエリヤ自体、バレンシア地方の食べ物だから、致し方ないかも。
全体としては、また必ず再訪したいと思う、素晴らしいバスク料理の店でした。ワインも素晴らしい。
こんな店が、渋谷二丁目にあったなんて!!!(しかも二丁目!)
★アバスク
03-5468-8908
東京都渋谷区渋谷2-12-11 松下ビル 1F
http://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13045262/

F t M のこと。

僕が、あちこち旅行ばかりしている間に、実は、『OUT IN JAPANhttp://outinjapan.com』の第二弾の募集があり、撮影の段取りが進んでいた。
帰国後、初日の撮影をしている時に、「どこからどう見ても男だろ…」という髭面の男前が、実はFtM(female to male)だとわかり、「え〜!」と驚いたのだけど、もっと驚くことがその先にあったのだった。
彼は左手の肘から下を骨折をしたような防具をつけていたので、怪我でもしたのかなと思っていたのだけど、レスリーとのやりとりで、その防具が外されたら、腕の中に長い穴が一本、貫くように空いていた…
それはなんと、尿道を作っているところだったのだ。
一年間をかけて尿道を作り、一年経たのちにその周りごとペニスとして移植するということだった。その際に、足りない皮膚は、お尻などからも移植して、より完璧なペニスにするとのこと…。(ただのオカマの僕は、聞いただけで気絶しそうだった)
その後また、「こりぁ、どこからどう見てもヤンキー風粋なおっさんにしか見えないなぁ…」というFtMの人が来て、その人はすでに、ちゃんとペニスがついているとのことだった。その人の場合は、足のふくらはぎで尿道を作ったようだ。そしてその人曰く…
「俺のは刺青入りなんですよ。刺青って言っても、おちんちんの色に見えるように、亀頭はきれいなピンクにして、下の方は使い込んだように黒くなってるんです…。
銭湯でも温泉でも、誰が見ても本物のおちんちんとしか思わねえと思いますよ…」
そんな話を聞きながら、僕は彼らのことを、まだまだ何にも知らないのだなあと思い知ったのだ。
いつも驚かされることは、そんな話をする時の彼らの率直さだ。
それは、痛かったとか、辛かったという苦労話というよりも、僕たちの驚く顔を見ながら、笑い話のように仕立ててしまう彼らの強さであり、懐深さだ。