生ハムと柿。

桃と生ハムもそうだけど、オリーブオイルをかけるとうまい。

昨年、桃とモッツァレラの組み合わせが流行ったけど、残念ながら僕はあまり美味しいとは思わなかった。
モッツァレラの繊細な味が、桃で隠れてしまう気がしたのだ。
昔、はじめて生ハムをメロンと食べた時、不思議な違和感に驚いた。
もともとメロンの後味が好きではない僕は、生ハムメロンもそれほど好きにはなれなかった。
数年前に家で桃が沢山余ったので、生ハムと一緒にオリーブオイルで和えて食べたら、これが物凄く美味しかった。以来、桃が出回ると、生ハムと食べてみたくなる。
先日、母から沢山送られて来た柿を、今度は生ハムと合わせてみた。
柿の甘みと生ハムの塩気がうまく合わさって、桃以来の大ヒットになった。

Hとお母さん。

Hは、僕のすぐ近所に住む39歳くらいのゲイ。なんというか、典型的なSO GAYだ。(笑)
ほんの数年前に鹿児島のご両親にカミングアウトをしたのだけど、ご両親にはまったく受け入れられず、まるで何もなかったかのようにその話題にはお母さんも触れなくなっていた。
それが、久しぶりにお母さんが、鹿児島から東京のHの家を訪ねてくることになったという情報が、神宮前二丁目ファミリーの中で駆け巡ったのだ。
「日曜日の夕方、『irodori』におかんと行きます」
 
そんな情報を聞いて、僕も紀伊国屋で買い物を済ませ『irodori』に向かうと、お母さんとHと、なんとHの恋人のKeまでいるではないか!これはいきなり、自分の恋人まで一気にお母さんに紹介するようだ。そこへ、Hの弟さんとフィアンセも加わり、なんだかなんでもありのような大所帯になった。
お店に入るなり、お母さんにご挨拶をした。
お母さん「あらあ、Hがいつもお世話になっております」
僕「いやいや、僕の方こそ、いつもHちゃんにお世話になってるんです」
僕の後に、神二のファミリーが続々と駆けつけた。ゲイ、ビアン、オナベ、ノンケ・・・なにもかも入り乱れて、お母さんにはもうセクシュアリティなんてよくわからないんじゃないかというくらいに。
帰り際、みんなで集合写真を撮って、お母さんは安心しているのがわかった。こんなにたくさんの友達に囲まれているなんて・・・と思ったみたいだった。そして、ふいにお母さんの口から、「LGBT]という言葉が出た。
僕「お母さん、LGBTなんて言葉ご存知なんですか?」
お母さん「知ってますよ。あれから私も随分勉強したんです・・・」
Hには言わなかったのかもしれないけど、お母さんはお母さんで、Hのカミングアウトを受け止め、自分の中でゆっくりと理解しようとしていたのだった。
温かい仲間たちに囲まれて大きく笑うHを見て、僕もとても幸福だった。別れ際、お母さんは何度も僕たちに頭を下げていた。

衣替え。

いくつあるんだろう…

ここ数日、気温もぐっと下がって来たので、今朝ようやく重い腰を上げて衣替えをした。
この夏、着なかった服を処分して、冬服も本当に必要なものだけを残して処分する。
改めて、毎日着る洋服は何かと考えると、ほとんど同じような服ばかり着ていることに気づく。それは、シンプルで着心地がよく、素材が自然のもの。どんなに流行っていても人工的な化繊のものは、肌に合わないようで全く着なくなってしまう。
僕のワードローブの中で、比較的数を持っているのがマフラーだ。マフラーをしているととても暖かい上に、多様な色はその時その時の気分を盛り上げてくれる。
毛糸の手袋や帽子、コーデュロイのパンツを出して、カシミアのセーターに袖を通すと、もう脱げないと思えるほど滑らかで暖かかった。
冬の準備が整いました。

ストレートをアライへ。

今回のOUT IN JAPANの撮影風景が、夕方にNHKの首都圏ネットワークで放映された。そんな縁があって、記者さんふたりと数軒飲み屋をはしごした。
彼らはストレート。そして、今年になって世の中が騒ぎ出したLGBTの話題をネタとして取り上げようとしている人たち。
彼らと話していると、LGBTに対する垣根や偏見があまりないことに気づいた。どうしてなんだろう?と聞いてみると、ふたりとも海外で学校にいたことがあって、そこでは普通にゲイがいて、寮では同室だったりしたのだそうだ。
でも、たとえば、セクシュアルマイノリティが幼い時からどんな風に生きづらさを抱えて生きてきたかとか、いじめがあったり、精神的に弱ったり、自傷行為や自殺をする人の割合がとても多いということや、ホモフォビアによるヘイトクライムが未だに世界で蔓延り続けているといった話は、彼らはほとんど知らなくて、驚いてばかりいた。
この国でも、ようやくセクシュアルマイノリティの置かれている環境が変化を迎えはじめていて、ところどころで今まで気づかなかった問題も浮かびはじめている。
そうした中でも、僕たちセクシュアルマイノリティのうちわだけではなく、こうやってストレートの人たちと接触して、僕たちのことを出来るだけ正確に理解してもらうように働きかけることがとてもたいせつな気がするのだ。
身の回りのストレートたちに、セクシュアルマイノリティのことをきちんと話し、理解してもらい、少しずつでも周りにアライが増えてゆくことで、この国もゆっくりと動いてゆくかもしれない。

OUT IN JAPAN #004 in TOKYO

渋谷で、第4回目のOUT IN JAPANの撮影が行われ、総勢121名のセクシュアルマイノリティの方々が参加してくださった。
スタッフは、朝の7時から夜の11時まで、ぶっ通しでボランティアで関わり、途中何度も気が遠くなるような疲れや眠気に襲われながらも、なんとか全員撮影を終えることが出来た。
撮影前にほんの少しずつそれぞれの人とお話ししながら、こんな境遇の人もいるのか…こんなトランスジェンダーの人もいるのか…と感心することがたくさんある。
今回、とても綺麗な23歳の女の子がいて、なんというか、ちょっと女優みたいな透明感のある子なのだけど、プリントアウトにはFTMと書いてあって、最初、何かの間違いかと思ってセクシュアリティをもう一度聞き直した。
すると、やはりFTMで、「まだ勇気がなくてカミングアウト出来ていないけど、これを機に周りにカミングアウトするつもりです。」と言うのだった。
そして、「私もあんな風になりたいんです」と彼女の次の人を指差すと、そこにはどこからどう見ても30代の毛むくじゃらの男にしか見えない、大胸筋の盛り上がった日に焼けたFTMがいたのだった。
23歳の彼女の場合、もの心着いた時から自分が男だと感じていたのだけど、身体の性である女性の方として長い間生きてきたのだ。それが今になってやっと男になれるのだと、顔を赤らめて興奮していたのだった。
彼女にとって、今回のOUT IN JAPANがちょっとした勇気を出す機会になったのかと思うと、僕たちもとてもうれしかった。
まだまだこれからが、彼女というか、彼にとっての正念場なのだろうけど、高揚して輝く顔を見ていると、きっとあと3年もすれば、見違えるようなかっこいい男になるのだろうと思えるのだった。
★OUT IN JAPAN #003 in OSAKAの写真とプロフィールが公開されました。http://outinjapan.com

秋のバラ。

秋のマダム・アルフレッド・キャリエール

例年は、僕のベランダでは秋のバラはあまり咲かないのだけど、今年は忙しく、ほとんどほったらかしで週末のたびにどこかへ出かけていたのに、なぜだかバラがいくつも咲いている。
オールドローズの『マダム・アルフレッド・キャリエール』は、僕の大好きなツルバラなのだけど、春にはたくさんの奔放で華麗な花を咲かせ、秋には少し色褪せたような大人な雰囲気の花を咲かせる。
僕が育てて来たバラの中では、このバラが一番強健で、環境に順応しやすく、虫もつかないことから、誰かにバラを勧めて欲しいと言われた時には真っ先に名前を挙げるバラだ。
秋の花の香りはかなり弱いけど、春の花はなんともいえない爽やかないい香りが楽しめるのも魅力の一つ。
いつかこのバラを思いっきり延ばして、春にはバラの家と言われるくらいに咲き誇る家に暮らすのが僕の夢なのです。

台湾の包丁。

昔、まだ台湾に行ったこともなかった時に、当時つきあっていた恋人が台湾に行ったお土産で包丁を買って来てくれた。
チタンだったかなんだったか(笑)、とにかく硬い金属で出来た包丁なので、骨だってくだけるよと言って。
包丁は四角くて、ある程度重く、しばらく引き出しにしまってあったのだけど、数年経ったのち、まだ凍っている肉を試しに切ってみたら、気持ちがいいくらいにスパンと切ることが出来た。
それから、時々この包丁を使うようになったのだけど、使ってみて驚いたのは、なるほど、中国4千年の知恵が詰まっているように感じる。
たとえば、九条ネギなんかを僕はまとめて買って来て、使いきれない分は一気に刻んでしまって冷凍庫に保存するのだけど、長いネギを端から一気に切るなんて時に大活躍するのだ。
使う前は重さが気になっていたのだけど、使ってみると、その重さが実に使いやすく、持ち上げると勝手に包丁自体の重さで切ってくれる感じといったらわかりやすいだろうか・・・とにかく、単純な端から端まで切ってゆく作業なんかに力を発揮することがわかった。
それと、その切り刻んだ細かなネギをバットやボウルなどに取り分ける時に、包丁の腹に一気にネギがすくい上げられるのも素晴らしいと思っている。
切れ味が抜群なので、見かけに寄らず繊細にイカを砂漠なんてのも出来てしまう。
日本の包丁は日本人敵な切れ味や魚さばきには最適だけど、台湾の包丁は台湾らしい様々な食材を大胆に切ってゆくために作られたのだろう。
使うたびに、感動してしまう素晴らしい包丁なのです。

劇団ぺんぺん 第27回目公演『瞼の母』

第2回目からずっと観ている劇団ぺんぺんの公演がいよいよ近づいて来た。
今回の演目は、『瞼の母』。
昔、20年くらい前だろうか、劇団ぺんぺんはこの『瞼の母』と『明治一代女』を合わせて上演したことがある。
その時は、「なんで時代劇なんかやるんだろう?」なんて思って観に行ったのだけど、まんまと罠に引っかかって、泣かされてしまったのを思い出す。
『瞼の母』を全編通してやるわけではなくて、恐らくそのエキスを濃縮して演じるのだろうけど、はじめからわかりきっているストーリーなのに、また泣かされてしまうのだろうかと、今から楽しみにしている。
『劇団ぺんぺん』と言えば、突然のハプニングがつきもので、実際に芝居が無事にはじまるまで、いったい土壇場で何が起きるかわからないのもハラハラさせられるところだ。
みんなが他に仕事を持っていながら、毎週水曜日日曜日と自分のプライベートを犠牲にしながら、ほぼ9ヶ月間をかけて練習を続けるのだ。
何かあって当たり前なのかもしれない。
今年は、演出家でもあるぺんぺん草のひろしさんが、久しぶりに出るかもしれないという噂がまことしやかに流れはじめている。
そんな噂を聞くと、残り4回しか公演をやらないと言い出したひろしさんも女優魂が疼き出したのだろうか…とも思う。
今年も、バカみたいに笑って、ちょっとほろっとさせられて、みんなのかわいい踊りが終わって『ONE』がかかる頃には、なんとも言えない温かい気持ちになっているのだろう。
またここの芝居を観たことのない人にも、ぜひ一度観て欲しいと思う。新宿二丁目が生み出した、他のどこにもない独自の文化を堪能出来るに違いない。
〈公演日程〉全5回公演
12月
4日(金)19:30〜
5日(土)13:00〜 17:00〜
6日(日)13:00〜 17:00〜
★チケットは、新宿二丁目新千鳥街にある『ぺんぺん草 03 3354 6039』にて発売中。一枚3000円。
場所は、新宿にあった厚生年金会館の向かいのTheater BRATS(だったと思います。今年から新しい劇場に変わりました)。

柿。

母から電話が午前中に来た。
「柿を送ったから、今日の夕方そちらに着きます。うちの柿は甘いのよ・・・唐揚げも入れておいたから・・・」
クロネコヤマトは、このごろ、その日のうちに配達するようになったようだ。アマゾンといいクロネコといい、いったいどんなシステムなのだろう・・・
思えば、『柿』というものを、店頭で買ったことがない。自分から敢えて面倒くさそうで買わないのもあるが、お店にある時期も限られているからか。
夕方になり段ボールが届く。開けてみると、いびつな柿がいくつか入っていた。
母は、素朴な人だ。
人や物事を疑うことをせず、逆境にある時もあるがままの境遇をそのまま受け入れて生きて来た。エキセントリックだった僕の父と別れてから、今の旦那さんに出逢い、今では平穏な毎日を送っている。
柿を剥いてみると、驚くほど甘かった。自然に木になったものが、なんでこんなに甘いのだろう・・・。
母のような人はきっと、幸せが何かを知っているのかもしれない。
デパートには並ばないような、いびつな柿を手にしながら、そんなことを思った。

親子旅行。

Kが、お父さんとお母さんと一緒に東京へ旅行に来た。
Kは毎年ご両親と一緒にどこかに旅行に行っているのだけど、昨年に引き続き今年も、なぜだか東京に来ることにしたようだ。2泊するうちの中日は日光に行ったらしい。
それに伴い、旅行を決める間、ホテルはどこにするか、どこに東京観光に行くか、ごはんはどこが美味しいか、Kは何度も何度も僕に聞いてきた。
昨年泊まった帝国ホテルは、Kのご両親は敷居が高く感じられてしまい、緊張してしまったので、もっと庶民的なホテルにしたいと言って来た。
レストランも高いところではなく、安くて東京らしくて美味しいところ…なかなか難問が重なった。
それに加えて、Kはまったくの方向音痴なのだ。いつもは僕の後にくっついてぼんやりしていれば目的地に着くのだけど、お父さんお母さんを引き連れて東京案内するほど、東京の地理が全くわかっていないことに気づき、慌てはじめた。
そこで僕が、Googleマップで新宿の地図と歩き方、ホテルから築地までの行き方、銀座の歩き方などの地図をわかりやすく作ってホテルに届けておいた。Kが道に迷わないように。
ところが、新橋の地下でさえ、どこかいつもと違った場所に出てしまうとどこにいるのかわからなくなってしまうようで、初日は浅草線の出口からホテルに帰るまでに相当苦労したようだ。
そして土曜日、またKから連絡が入った。カレッタ汐留の地下の鼎泰豊で食事をしているのだけど、ホテルまでどうやって帰ったらいいのかわからないと…
僕が逐一説明するけど、何度も何度も聞き返してくる。地下が広くてわからない…
結局、指示した通りに地下を通り、銀座に向かいホテルに帰ることが出来たのだけど、地方で暮らす人にとってみたら、東京は巨大過ぎて、新宿の地下なんかは全くもって迷宮にしか思えないようだ。
それにしても、物凄い方向音痴なのに、ご両親と一緒に毎年旅行しているKを、なんだかかわいいと思える。旅行の間中、お父さんとお母さんがケンカしはじめた…などとLINEを送ってきたりしてハラハラしたけど、ご両親思いのやさしい子だ。
本当は、お父さんお母さんに僕が恋人ですと挨拶をして、ゆっくり一緒に東京を案内して回りたいと言ったのだけど、すかさずKは僕に、
「そんなことしたら、ふたりとも泡ふいて失神しちゃう…」
と言って、とりあってくれなかった。