ゲイの特典。

このブログにも何度か書いている台湾人の友人カップルEとRが、台北にカフェを新しくオープンさせた。Rは36歳で日本のル・コルドンブルーで学んだパティシエで、Eは44歳の実業家。友人が多く、様々な分野に詳しく、ほぼリタイアしている。
本当は、カフェのオープンにかけつけてお祝いをしたかったのだけど、2月に動くことができなかったため、ふと思い立って週末の台北行きを決めた。そこで、Eに頼んで、どこか手頃なホテルをおさえてくれるようにお願いした。すると、すぐにEからホテルに勤めている友人とのやりとりのメールが送られて来た。
友人「彼はキュートなの?
もしイケてる男だったら、
私がパーソナルにアップグレードしてあげるわ・・・」
E「彼は、イケてるおじさんだよ」
友人「写真はあるの???
もしかしたら、ダブルのアップグレードをしてあげるわっ!」
(そこで、僕が笑いながら写真を送ると、Eがすぐに友人にその写真を送った)
友人「彼に伝えてちょうだい。
彼には、プレジデンシャルスイートをご用意するわ・・・
ロビーもすべて彼のもの・・・(冗談)」
そんなやり取りをEが送ってくれるので、冗談半分に笑いながら様子を見ていたのだけど、その後、きちんと真面目なメールが来て、グランドデラックスルームにアップグレードされていたのだった。
今までの人生でゲイでよかったと思うことは、本当に沢山ある。そのうちの一つは、ゲイであるというだけで、世界中のゲイと、一気に距離が縮まることだ。同じゲイというだけで、不思議な仲間意識があり、旅の先々ではじめて会った人であっても、すぐに打ち解けて話すことが出来る。
それはそうと、ホテルのチェックインの時に、その友人が目をパチパチしながら、ロビーで待ち構えていたらどうしよう・・・。

23歳の恋。

二丁目の仲通りを歩いていたら、通りの反対側をKTが歩いていたので声をかけた。
僕「KT! 元気にしてる?」
KT「いや、今、二股かけられていたことがわかったんです・・・」
僕「え?二股???」
とても挨拶だけですれ違える話ではないと思い、そばに言ってみると、
KT「前から1週間に一度会っていた37歳の人がいるんですけど、その人に会ってたら、食事の途中に言われたんです。前の恋人とよりが戻って、もう前からずっと会ってるって・・・」
僕「え?ひどいね・・・。それでどうしたの?」
KT「2000円机に叩き付けて黙って出てきました・・・」
そんなことを勢いよく話すKTの目は、心なしか潤んで、心臓がバクバクいっているのがわかった。その後、僕はBridgeに行き飲んでいたのだけど、先ほどのKTが気になりメールしてみた。「もしよければこっちに来ない?」
しばらくして飛んで来たKTは、落ち着きを取り戻し、もっと早く気づけばよかった。自分がバカだったと言いはじめたので、僕は、そうではないし、自分のことを責めることも卑下することもないと話した。
ゲイであろうがストレートであろうが、二股というのは結構良くある話だ。ただ、ここでちょっとないんじゃない?と思うことは、37歳にもなった男が23歳の就活をしている学生に黙って二股を続けていたあげく、深く傷つけてしまったこと。
もちろん、人間のやることだから、誰かを好きになったら仕方のないことだし、誰も彼を責めることなどできないのだけど、もっと早くKTに話すことはできなかったのか・・・。
はじめは自分を責めて、惨めな気持ちでいたKTに、「そんな風に思う必要ないよ。むしろ、別れてよかったじゃん。そんな男。次だよ次!」などと話しながら一緒に飲んでいるうちに、KTもどんどん明るくなり、後半はほとんどパレードの話になった。
23歳の恋か・・・まだまだこれから死ぬほど沢山いい男に出会えるじゃん。いいなあ・・・。
47歳のおじさんは、自分の若かりし頃の失恋を甘酸っぱく思い出したのだ。

海人の藻塩。

本当に美味しい料理を突き詰めていくと、いかによい素材を使うかということと、いかに上質な調味料を使うかにいきつくと思う。大抵の料理は、基本の調味料さえきちんと美味しければ、それほど手をかけなくても美味しく出来上がるからだ。
それゆえに、基本の調味料には、多少高いお金を払っても十分その価値があると思っている。
僕の家の塩は、基本はゲランドなのだけど、例えばお肉を焼く時は岩塩を使って焼くのも美味しいと思っているし、その他にも旅行で訪れた土地の塩を買って帰るのが一つの楽しみになっている。おみやげに買って来た塩で料理をつくると、またその旅行を思い出すからだ。
万葉集の歌にも詠まれている藻塩は、瀬戸内海の上浦刈島で現在製塩されている。平安時代から製塩が盛んだったこの土地では、その後数千年昔の古墳時代の製塩土器が見つかったそうだ。その土器を使った製塩方法を現代に蘇らせた製塩されたのがこの藻塩。
食通の間ではかなり知られている塩なのだけど、藻を含んだ塩はまあるく、直接なめてもつんとしたしょっぱさがなく旨味を感じる。
生野菜や刺身、天ぷら、僕の好物のゆで卵なんかに、直接つけて食べると、口の中で自然な旨味が広がる。
★海人の藻塩http://www.moshio.co.jp

サム・スミスのスピーチ(OSCAR 2016)

毎年、月曜日の朝から友人Mの家で、映画好きな友人たちと一緒に見る恒例のアカデミー賞だが、今年は諸々の事情があり、二丁目のBridgeで夜の9時から集まってお客さん共々見ることになった。
誰がオスカーを受賞するのか、日本ではまだ公開されていない映画がノミネートされる中、それぞれが予想をして、一番多く当たった人には賞品がもらえるという企画に。
今年のアカデミー賞は、黒人のノミネートが一人もいなかったことで、随分前からスパイク・リーやウイル・スミス夫妻などが続々とボイコットを表明していて、いったいどうなってしまうのだろうと固唾をのんで見守った。
司会者だけでなくプレゼンターまでも、オープニングからクロージングに至るまで、ずっとこの話題に触れ続け、見ている方はさすがに「いい加減にして賞を楽しんだらいいのに・・・」という気持ちだったにがいない。
それでも、これを機に、アカデミー会員のあり方を抜本的に変えて行くことが決まったそうなので、歴史的な節目になったように思う。
全体的に、スピーチも短く、派手さにかけた今年のアカデミー賞だったけど、パフォーマンスに関しては、(レディ・ガガが話題になっているようだけれども)ディヴ・グロールが追悼のシーンでビートルズの『Blackbird』を演奏。本当に素晴らしかった。
そして話題になっているのが、『サム・スミス』の歌曲賞でのスピーチ。
「イアン・マッケランがゲイを公言してオスカーを獲った人はいないと言っていたのをどこかで読んだことがある。だから僕は、ゲイを公言して初めてオスカーを受賞したことになる。もしそうなら、またはそうではなかったとしても、この賞は世界中のLGBTコミュニティに捧げたいと思う」
スピーチとしては、とてもいいことを言ってくれた!と僕も喜んだのだけど、『ゲイを公言してオスカーを穫った人はいない』というイアン・マッケランの発言がそもそも『ゲイの俳優』という意味だったということ。過去にはエルトン・ジョンおばさんが同じく歌曲賞、ダスティン・ランス・ブラックが『ミルク』で脚本賞などを穫っていて、これに気づいた人々が一斉に突っ込んで血祭りにあげたのだ(この手の話題に対するくらいつきや炎上具合は日本もどこも変わらない。苦笑)。
でも、このスピーチに対するダスティン・ランス・ブラックの突っ込みが激しい・・・
Dustin Lance Black ‏@DLanceBlack 2月29日
Hey @SamSmithWorld, if you have no idea who I am, it may be time to stop texting my fiancé. Here’s a start: https://www.youtube.com/watch?v=vfPXcCroPJc …
短いツイートの中には自分のフィアンセ(水泳のオリンピック選手)にサムスミスがちょっかいメールを送っていることなどの私的な怒りも織り交ぜてあり、改めて、ゲイって怒らせると恐いなあ・・・と思ったのです。
Dustin Lance Black ‏@DLanceBlack 2月29日
THE POINT: knowing our LGBTQ history is important. We stand on the shoulders of countless brave men and women who paved the way for us.
ダスティン・ランス・ブラックは、脚本家でありそもそもLGBT活動家の肩書きも持つ人。彼の残した功績は大きいし、ミルクで脚本賞を受賞した時のスピーチは、この先も永遠に歴史に残るスピーチとなることだろう。
だからダスティン姐さん、サム・スミスのちょっとした不勉強さなんて、大目に見てあげて!
★ダスティン・ランス・ブラックのスピーチ
ダスティン・ランス・ブラック: ミルク脚本賞

包丁を研ぐ日。

研ぎ終わった包丁

砥石

時々ふと、「明日は包丁を研ごう…」と思って、砥石をキッチンに出しておくことがある。
朝起きて、軽く朝ごはんを食べながら、砥石を水に浸ける。洗い物をしたら、砥石を置いて、ゆっくりと包丁を研ぎはじめる。
〈包丁の研ぎ方〉
予め水に濡らして置いた砥石は縦に置く。包丁は、刃を手前に向けて上から見た時に斜め45度くらいに持つ。
歯に、力が満遍なく入るように指を丁寧に添える。砥石と包丁の当たる角度は、十円玉2枚入るように15度くらいの角度をキープする。
押し出す時には力を入れて、力を抜いて引き戻す。そしてそれをリズミカルに繰り返す。
表を7研いだら、裏を3くらいの気持ちで研ぐこと。そしてこれを、更に細かい砥石でもう一度繰り返し研ぐこと。
最後に新聞紙で磨きをかける。
包丁の研ぎ方は、文字にして書くとなんだかとても難しそうだけど、やってみると意外と出来るものだ。
ちなみに僕は、包丁を研ぐような地味な作業がとても好きで、包丁をひたすらに研いでいる間、気がつくと無心になっていることがある。まるで、瞑想のように。
そして研ぎ終わったあとに切れ味を確かめたくて、俄然お料理を作りたくなるのだ。

トロントパレード。

カナダから、オンタリオ州観光局の人たちが来日するので、夜に会えないかと言うので、新宿二丁目へ。
今年のトロントパレードは、7月4日に行われる予定なのだけど、カナダの若きイケメン首相も参加を予定していると今から話題になっている。http://jp.sputniknews.com/life/20160223/1663210.html
首相としてパレード自体に参加するのははじめてのようだが(昨年のパレードでは、この首相がまだ党首の頃に歩いていたように記憶しているのだけど…)、オンタリオ州知事やトロント市長までも参加するというから、きっと盛り上がるに違いない。
それにしても、保守的なキリスト教の多いイタリアでさえ変わりはじめているこの時代に、日本でもセクシュアルマイノリティに関する問題が表面化し、少しずつ民間企業も変わりはじめてきた。
パナソニック社内で同性パートナーに対して結婚に相当する規定を作るようになることや、ANAやJALなども同性パートナーを家族として認めるようになって来たのだ。
様々な分野で、多くの方々が尽力してくださっているおかげなのだけど、ゆっくりと、しかし確実に時代が目の前で動いていくのを、僕たちはつぶさに見ている。
中には、区議会議員が、『同性愛は、性嗜好』というような、知識のない発言も表沙汰にされていたのだけど、そんな発言が話題になり、何が間違っているのかをニュースで取り上げられるようになったことさえ、この国が大きく変わって来ている証なのだろう。
それにしても僕たちは、なんて幸福な時代に生きているのだろうか。

そばで寄り添い、支えてくれるもの。

そろそろやめよう…と思っているFacebookを、このところ、珍しく毎日覗いている。
それは、今年の初めにいくつかの癌が見つかった友人(お守りを送ったことをこのブログに書いた友人)Hが、手術に向かう日々をほぼ毎日アップしているからだ。
Hのために何もできない自分は、Hの様子を見続けながら、手術が成功してほしい、なんとかよくなってほしい、という気持ちでいる。
そしていつの日からか、彼のFacebookの様子を、僕はKにもコピペして送るようになった。時々、Kに送るのを忘れていると、KからLINEが入ることがある。
「Hさん、どうしてるかな?何か書いてなかった?」
KはHには会ったこともないのに、彼のFacebookを読み込んでいるので、今では僕よりもHの状態に精通している。
手術前は様々な友人がHをお見舞いに訪れていて、僕もHが友人たちに恵まれていて本当によかったなあと思っていたのだけど、先日、手術が終わった直後に、Hが身体の傷を写した写真は痛々しかった。(自分が手術をした直後で大変な時に、Facebookによくあげることが出来るなあ…と思ったのだ)
でも、今まで明るく強がっていたHは、手術後に恋人のTkに会って、何か大きな温かいものに包まれて安心しているように見えた。
「Tkは一番。」
その安心感は、そんな言葉に集約されていたのだ。
愛とは、なんと強く、揺るぎのないものであろうか。

Miele

家に帰ると、Miele からダンボールが届いていた。
先月Mieleの掃除機を買ったことはここに書いたのだけど、その掃除機はちょうどキャンペーンをやっていたのだ。
中を開けると、掃除機用の紙パックが入っていた。なんと、8年分!
Mieleの掃除機はまず故障をしないし、吸引力もまったく変わらずに20年間は軽々と働いてくれると言う。もしかしたら、僕が死ぬまで壊れないのではないか。さすが、ドイツが世界に誇る実直さを体現したブランドだ。
それにしても、8年分の紙パックを顧客に送るなんて、なんて豪快な会社なのだろう。
Miele のことが、ますます好きになってしまった。
次は洗濯乾燥機を前から狙っているのだけど、お値段がちっともかわいくないので、当分は買えそうにない・・・。

ちょっとだけ、ごはん。

家に帰って、切り落としの牛肉と残りものですき焼きを作ったのだけど、作っている途中に炊いた白米がないことに気づいた。
「ちょっとだけ白米が食べたいけど、家に炊いたご飯がない」
そんな時にどうするか。炊飯器だと炊き上がるまでに時間がかかるので諦めてしまうだろう。(そもそも僕は炊飯器の形が好きになれず持っていないのだけど)
お米は1合では多すぎるので、半合だけでいい。そんな時に一番簡単なのは、小さな厚手の鍋でご飯を炊くこと。(たとえばストウブの14センチの鍋)
お米をといで、水に浸し10分待ってから、同量のお水に1割くらい多めのお水を加えて底の全面が当たるように火を入れる。沸騰したら、ごく弱火にして7分くらい。→火を止めて蒸らして7分くらい。→完成!(3合でだいたい10分ずつを目安に、お米の量で加減する)
小さな厚手のお鍋さえあれば、30分くらいあればすぐに美味しい白米が食べられる。

心に残る仕事。

昔、尊敬する上司のコピーライターに聞いたことがある。
「1年のうちでどれくらい満足のいく仕事ができますか?」
その人はちょっと考えて、
「そうですね・・・。
1年間にひとついい仕事ができたらいいですかね・・・」と静かに答えた。
その時に僕は、
「こんなにいい仕事をしている上司でも、1年間のうちで納得のいく仕事は1本しかないのか・・・」と驚いたのを覚えている。
あれから10年くらい経っただろうか・・・。
1年間のうちに、1本もいい仕事ができない情けない年もあった。
今思うと、若い頃はどうしてもこの仕事を通したいという思いがあまりにも強過ぎて、その願いは叶わなかったことの方が多いように思う。
年を重ねてきて変わったことは、最善の努力をしたあとは、力を抜いて、なるようにしかならないと腹をくくってどこか天に任せるような気持ちで待ってみるようになった。そうすると、気づくといつの間にか思っていたことが叶うことがわかったのだ。
今年はおかげさまで、ひとつ、心に残るいい仕事が出来た。
僕たちの仕事なんて、時間が経てば消えてなくなってしまうようなものだけど、限りある人生の中で、自分で満足のいく仕事を、これからもひとつひとつ丁寧に重ねてゆこうと思っている。