彼岸花。

糸島に行った時に買ってきた日めくりカレンダーをめくると、彼岸花のことが書いてあった。
あんなに暑かったのに、気がつくといつの間にか朝晩が涼しくなり、秋の気配が漂いはじめた。
カレンダーで見たからかどうなのかわからないのだけど、朝、駅に向かう道で彼岸花が咲いているのを見つけた。
彼岸花はそっと咲きながらも、僕に見つけられるのを待っていたかのように、周り中に向かって手を差し伸べているように見えた。
彼岸花が咲くと、彼岸なのだと思う。
目まぐるしく過ぎ去ってゆく毎日を、きちんともう一度心に留めるかのように、白い彼岸花は咲いていた。

シンガポールのL&Jカップル。

月餅をいただいた。9月16日満月の夜に恋人同士が食べるそうだ。

久しぶりにシンガポールからL&Jカップルがやってきた。
夜の9時頃にBridgeで待ち合わせをして、そこへ次から次へと偶然友人たちが飲みに来て、ワインのボトルがどんどん空いていった。
13年間つきあった彼らは、数年前にバンコクで家族や友人を集めて結婚式をした。その時の家族中が並んだ写真は、まるで『華麗なる一族』とでも言えそうな豪華な家族写真だった。そんな写真を僕たちに見せながら、Lが言い出した。
L「ただしも早くKと結婚式をあげなよ!
 そうだ!僕が日にちを決めてやる。
 ええと・・・2018年の8月18日はどう?」
僕「え?なんでその日なの?」
L「8が続いていてとてもラッキーな感じがするから」
僕「どこでやろうか・・・やっぱり東京かな・・・」
酔った勢いとはいえ、自分の結婚式を想像するなんて、今まで考えたこともなかったことだ。もしも僕が結婚式をやると言ったら、友人たち、そして母親や兄の家族、Kの家族は結婚式に出席してくれるのだろうか?
数年前までは、自分が周りにカミングアウトするなんて、思っても見なかったことだ。でももし自分が望めば、自然と道は開かれ、今までは思いもしなかったような現実が目の前に現れる。
結婚式だって、自分が本気で望めば、かなえられる気がしたのだ。

串カツ田中

低価格の串

アスパラ、手羽、煮卵

この抜け具合…

新宿で串カツが食べたいと思い、前々から気になっていたチェーン店の『串カツ田中』へ。
数日前に顔を殴られたようなアザが残る店員さんに席を案内され、しばらくすると、MtFのような元気いっぱいの店員さんが注文を取りに来た。
ここは東京によくあるコースになっている串カツ屋さんとは違って好きな串を選んで頼める店なのだけど、他の店と違うのはかなりリーズナブルなところだ。
100円、120円、150円、200円という価格帯なので、値段を気にせずに串カツをオトナ食いすることが出来る。本来、大阪では串カツなんて、こういう価格帯なのだろうけど、東京に入ってくる時点で高級串カツ屋さん風になってしまっていたのだろう。
周りを見回すと10代20代がほとんどで、Kがすかさず、「ただしくんみたいな年の人、1人もいないね…」とつぶやく。
途中、LINEにお店を登録すると串揚げが一つタダでもらえたり、変わった出で立ちの店員さんが実はとても気さくで楽しくて、沢山食べて、飲んで、会計は1人3000円だった。安いって最高!
★串カツ田中 新宿3丁目店
03-6274-8594
東京都新宿区新宿3-12-4 熊三ビル 1F
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13177506/

小肥羊

ラム

友人のXと食事をしようということで、何がいいかと尋ねると、「蒸し暑いから何か辛いものがいいな…」と言うので、久しぶりに火鍋を食べたいと思い、新宿の『小肥羊』へ。
ドアを開けた瞬間から、なにやらエキゾチックな香りが店中に充満している。コースは色々あるのだけど、僕たちは大抵一番安い1980円のコースにして、後は食べたいお肉や野菜を追加して頼むことにしている。
陰陽のマークのように分かれた白いスープと赤いスープの鍋は、基本的にはスープは同じなのだけど、赤いスープにはたっぷりと赤唐辛子が入っている。
牛、豚、仔羊、鳥など様々な肉が頼めるが、火鍋は中国では元々羊の肉を食べる料理のようで、ラムを多めに頼むことにしている。
辛い辛いと言いながら、Kと三人でたらふく食べて飲んで、それでも会計は1人4000円だった。
★小肥羊 新宿店
03-3208-7727
東京都新宿区歌舞伎町2-26-3 アミモトビル2階
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13047261/

風邪のゆくえ。

家に帰って来たら、Kが『ガラスの仮面』を観ていたのだけど、話す声が鼻声で、おまけに咳まで出ているのだ。
「ただしくんの風邪がうつったみたい…」
ふたりで暮らす楽しさは1プラス1ではなくて、驚くような楽しい毎日なのだけど、ほとんどの時間一緒にいて、夜寝る時は隣で寝るので、風邪をひいた時は風邪をうつしてしまうことも多いようだ。
だるそうなKに、僕が会社の病院でもらって来ていた風邪薬を飲ませる。
Kの風邪が悪化していくのとは裏腹に、僕の風邪はどんどん良くなっていき、台所に立つことも億劫ではなくなった。
でもその代わり、普段はKがやってくれている洗濯も僕がやり、結局慌ただしい朝を迎えることに。
会社に行く時に、玄関先で僕が靴を履くと、いつものようにKが玄関先まで来て見送ってくれる。
「いってくるね。ゆっくり休んでいてね!」
そう言って、いつも通りにキスをしながら手を振って別れたのだけど、こんな風に毎日キスをしながら見送ってくれるから、風邪もうつってしまったのかもしれないと思ったのだ。

かえし。

冷蔵庫に、『かえし』を用意しておくと、とても重宝する。
ちょっと蕎麦が食べたくなった時や、納豆おろしうどんなどを食べたくなった時や、料理でめんつゆが必要な時、すぐに蕎麦つゆなりめんつゆを作ることが出来るから。
かえしの便利なところは、1年くらい放ったらかしでも腐らないこと。醤油と味醂と砂糖なので、長期保存が効くのだ。
〈かえし〉
濃口醤油200ml
味醂50ml
砂糖40g
〈かえしの作り方〉
濃口醤油、味醂、砂糖を鍋で煮立て、砂糖を溶かし、煮沸消毒した瓶などに入れて、口を塞がずに布やキッチンペーパーなどで覆い輪ゴムで口をとめ、冷蔵庫で1週間くらい寝かす。その後蓋をする。
〈かえしの使い方〉
◯蕎麦つゆには、鯖や鰹などの混合節を強火で10分くらい煮立て出来た出汁を、かえし1:出汁4で混ぜ合わせる。(濃いめの蕎麦つゆが好きならば、1:3)
◯納豆うどんやおろしうどんなどの後からかけるめんつゆには、かえし1:出汁6くらいでよい。薄めが好きならば1:8くらい。(この場合の出汁は普通に取った出汁)

風邪をひいて思うこと。

あまり風邪をひくことはないのだけど、週末に冷房で寒気を感じ、少し身体が重く、頭が痛いような状況が続いていた。
僕の役割は、『家では毎食のご飯をつくること。』
でも、風邪気味で頭が痛く身体が重いと、料理をすることも、キッチンに立つのさえもおっくうに感じる。
もしも僕がひとりで暮らしていたら、自分の食べるものなんて適当に手抜きをして済ませているのだろう。
でもKと一緒に暮らすようになってからは、よくご飯を食べる育ち盛りのKのことを考えると(筋肉を肥大させたいらしく、やたらたんぱく質を摂ろうとしている)、なんとかがんばってご飯をつくらないと・・・と思い、自分を奮い立たせてなんとかキッチンに立つ。
特に難しいのは朝食。自分は何も食べる気がしないし、身体が重いのでぎりぎりの時間まで横になっていたいと思うのだけど、冷蔵庫の中身を思い出しながら、「今日は何を作ればいいだろう・・・」と考える。
幸い、数日前に作った鴨ロースが残っていたのでスライスしてタレをかけて、昨日のおかずの残りのゴーヤチャンプルーがあったので、卵を溶いてもう一度炒め直す。ご飯を蒸し直して、みそ汁の残りを温め直して、生のトマトを添えたらなんとか朝食が出来上がった。
Kはそんな僕を見ながら、「ご飯なんかつくらなくていいから、じっとしてて」と言うのだけど、こんなことをしなければと思うのも、二人暮らしになって変わったことだと思う。僕が出来るうちは、なるべく家族のためにご飯を作ろうと思うのだ。
自分の身体が弱った時に思うことは、いつも母親のことだ。
母親はきっと、自分が風邪の時も、頭が痛い時も、当たり前のようにせっせと洗濯をして、掃除をして、家族のためにご飯を作っていたのだと思う。
Kと一緒に暮らすようになって、家族の愛情や思いやり、やさしさを、しみじみと思い出すことが出来るようになったのだ。

自分の会社でカミングアウト その3

自分の会社で、『OUT IN JAPAN』の展示が始まり、写真と実名、コメント入りで大々的にカミングアウトをして、会期はあと1週間となった月曜日、またほんの少しドキドキしながら会社に向かった。
お昼頃、パソコンに向かっていると、見慣れた後輩Iがのぞいた。
I「ただしさん!(実際には僕の姓)やっと会えた!うれしいな!」
僕「久しぶりー。元気だった?」
I「元気でしたよー。ちょっと会議室入りませんか?」
Iと僕は、Iの入社以来22年間、ずっと一緒に仕事をして来た、言わば兄弟のような仲だった。Iは結婚して子どももいて、お互いにプライベートで大変な時も支え合って生きて来た。
今回の全社的なカミングアウトにあたり、真っ先に気になったのは、Iのように、家族のように支え合ってともに生きて来た仲間や先輩後輩たちのことだった。
いったい彼らは、僕に会った時にどんな反応をするのだろう?
今までと変わらずに話しかけてくれるのだろうか?
何もなかったかのように黙殺するのだろうか?
それとも、もはや近づいてはこないのではないか・・・。
会議室で話すIは、今までと何も変わらず、久しぶりに僕に会えたことをとても喜んでいた。最初から最後まで、会社の玄関の展示の話には触れることはなかったのだけど、瞳を見れば彼が僕のカミングアウトを知っているのがわかった。
そして午後、社内のホールで、LGBTに関するトークショーが繰り広げられた。レスリーも会社に来ることになっていたので、僕も前の方の席に座り、トークショーの終わりにレスリーを見送りにホールの外に出たその時、先ほど話したIが、たった今ホールでトークショーを聞いていて終わったとたんにホールの外に出て来た。
Iは僕を見つけると、僕に向かってとてもうれしそうに手をふったのだ。
恐らく僕のいないところで、Iは仲間たちと一緒に僕の話をしているに違いない。そこでは、おもしろおかしく僕のことを笑い者にしている人や、気持ち悪いと思っている人もいるのかもしれない。でも少なくともIは、僕の前では事実を受け止めてくれ、今まで通りに接しようと心がけてくれていた。
カミングアウトは、自分から声を上げたら、それで終わるものではない。
僕のカミングアウトを、その人がどうやって受け止めるのか。
拒むのか。
時間をかけてその気持ちが変容してゆくのか・・・。
自分の会社でのカミングアウトは、まだまだこれから先の道のりがあったのだった。
ゲイの恋人や友達と食事をする時に、周りを気にせず自分のセクシュアリティをそのまま出せて、男同士であっても手をつないだり、抱き合ったり、人によってはオネエ言葉でまくしたてて周りを笑わせたり、心の底から楽しめるお店が身近にあったらいいと思う。
そんなお店の一つが、新宿にある『○○』だ。この度5周年を迎えてお祝いのパーティーが開かれた。
『○○』は、基本的には大将のSさんの知り合いやその知り合いばかりが通う和食店。たまにストレートのお客さんが偶然通りかかって入って来ようとすると、「予約でいっぱいなんです」と言って断られるようだ。
というのも、Sさんが、自分の周りのゲイの友人たちが心からリラックスして、美味しい料理を食べられるようなお店にしたかったのだろう。
5時から始まったパーティーは、早い時間から店内にぎっしりとお客さんが押しかけ、ところどころでシャンパンが開き歓声が上がっていた。
小さな仕出し弁当が配られ、中には出し巻き卵、満願寺とじゃこのたいたんなど、沢山の種類の美味しいおばんざいがぎっしり詰められていた。
周年パーティーに訪れた人たちの顔ぶれを見ていると、つくづくいい男が集まるお店だと感心する。心の底から笑っている声が溢れ、誰もがとても幸福そうな表情で輝いていた。
そんなお客さんを見ながら、一番幸福そうだったのは、大将のSさんと店員さんのHちゃんだった。
きっと、自分たちが願い思い描いたお店に、少しずつ近づいているのだろう。
みんなの笑顔を見ながら、僕たちも本当に幸福な時間を過ごすことが出来た。
5周年おめでとう!!!

アンナとアントワーヌ

『男と女』で有名なフランスの名匠クロード・ルルーシュによる、50作目の作品『アンナとアントワーヌ』を楽しみに、ルシネマに観に行った。
クロード・ルルーシュの作品の中では、僕は、「しあわせ』という作品が一番好きなのだけど、テーマが奥深く、見終わった後に余韻を残すのだ。
アンナはインドで暮らすフランス大使夫人。映画音楽家のアントワーヌが映画音楽の制作のためにインドに訪れ、歓迎の晩餐会でふたりは出会う。
アンナはスピリチュアルな世界や輪廻転生を信じていて、宇宙や神、転生の話をしたがるのだけど、アントワーヌは現実的な視点で物事を捉えていて、「ブーメランはいったいいつの瞬間で、戻ろうと決めるのだろう…」などと、おかしな疑問を投げかける。そう、ふたりは全く違う視点で世界を見ているのだ。
ふたりは静かに惹かれあい、インドで有名な神様のような存在の人に会うための、巡礼の旅に出ることに…。
全編を通してテーマになっているのは、『男と女の恋愛』だ。成熟した大人であるはずのふたりが出会い、物凄い引力で惹かれあい、恋の駆け引きがはじまる。
行き先の見えない危ない恋愛は、やがて驚くような結末へ向かってゆく。
今年79歳のクロード・ルルーシュは、老いても尚、『恋愛』というテーマを精力的に追い続けていた。主演のジャン・デュ・ジャルダンは、映画『アーティスト』で主演男優賞を受賞した俳優だけど、今回も溜息がこぼれるほどハンサムだった。
★アンナとアントワーヌhttp://anna-movie.jp/sp/