自分の仕事を愛すること。

先日ここにも書いたように、いくつもの種類の宿根草の苗をネットで購入した。

その園芸店は北海道のお店なのだけど、その後すぐにメールが入り、「ぎっくり腰になってしまったので、商品の在庫確認は休み明けで良いか?」と書かれていた。

僕はそれほど急いでいるわけではないので、もちろんゆっくりで構いませんとメールを入れておいたのだけど、休み明けすぐに返信が来て、オーダーしたヘメロカリスの1種類が、雪の中から掘り起こせないので申し訳ないけど1種類だけキャンセルさせてくださいという丁寧な内容だった。

それから数日後、その苗が北海道から届いた。園芸店の方は雪の中を、きっと大変な労力を使って苗を掘り起こして送ってくださったのだと思う。

ダンボールを開けてみると、小さな苗たちと書類が入っていた。その中の一文が素晴らしく、姿勢を正されるようなものだった。

(以下)

より良い草花があれば、より良い空間が出来ます。
より良い空間の中で生活することで、人の心は豊かになります。
人の心を豊かにするために、私たちはより良い草花を育てております。

大森ガーデン
〒089-2446北海道広尾郡広尾町字紋別14線73-2
※ラーメン鈴やのすぐ隣
TEL (01558)5-2525

大森ガーデン 事務所・圃場
〒089-2446北海道広尾郡広尾町字紋別14線98番地
TEL (01558)5-2421  FAX (01558)5-2647
HP http://omoricountrygarden.com/ Email yhl01530@nifty.ne.jp

この世界のどんな仕事であれ、人のためになっている。

自分のやっていることや自分の仕事を愛している人は、美しい。

生まれながらにあるもの。

海は、生まれてまだ4ヶ月と少ししか経っていないのに、すっかり僕たちの家族になった。

LLBeanのベッドを買ってみた

何をするにもほとんど一緒で、料理をしていてもそばで見ているし、昼寝をしても横でくっついて寝ている。

僕やKがくしゃみをすると、驚いてすぐに顔色を伺いに来るし、どこかが痛い時には、その表情や声で察知して心配そうに顔を舐めるのだ。

お母さんのお腹の中からこの世界に生まれてきたばかりなのに、海はやさしさを持っている。

この世界には、やさしさがはじめから存在するのだ。

犬の匂い。

海を初めて車に乗せて、奈良から熱海まで運んだ時に、
車の中で、犬の臭いがした。

それは、犬特有の臭いというか、人間とは違った臭い。

それから1ヶ月に一度くらいの感覚で海をシャワーで洗うけど、
すぐにその臭いは感じられるようになる。

海の垂れた耳は時々耳掃除シートで掃除しているけど、
いつもチーズのような臭いがする。

そしてこの臭いもいつのまにか匂いに感じられて好きになってしまった。

海を置いて東京に仕事に出かけた帰り道、
早く家に帰って海の匂いを嗅ぎたいと思う。

帰ってくるKを。

僕はテレワークなので、毎朝三島の病院に出勤していくKを見送っている。

海を抱きながら階段を降りていくKに手を振る。海はいつも、Kが出かける時に寂しそうに鳴く。

夜になってKが三島から帰ってくる時間になると、僕は料理の手を時々休めて、窓の外を見つめる。

三島から我が家は40分くらいだろうか。暗闇の中、走ってくる車の音が聞こえないかと何度も耳を澄ませる。

ちょうど、Kが車で帰ってくるのを見つけたり、車を置いて歩いてくるKを見つけることもある。

窓を開けて海を抱っこしながら海に話しかける。「Kちゃんが帰って来たよ」海は興奮して喜んでいるのがわかる。

Kが下から僕たちに気づいて何か話しかける。

家には灯がともり、暖房もついている。

僕は、今日もKが無事に帰れたことを感謝する。

ハンドクリーム。

朝ごはんも昼ごはんも夕ご飯作る僕は、洗い物もその都度するのでお湯を使う。

お湯は手の油分を奪い去ってしまうようで、乾燥している冬場はどうしても手が荒れてカサカサになってしまうものだ。

僕はそんなことはあまり気にせず外で庭の手入れや家事をしていて、ついついハンドクリームもつけるのを忘れてしまう。

夜、Kが先にお風呂に入って、その後僕がお風呂に入って、Kの待つ布団に潜り込む。

するとすかさずKがハンドクリームを自分の手に出し、僕の手を摑んで塗ってくれる。

そんな時に、Kのこんなやさしさが好きなのだと思う。

裂けたパジャマ。

僕たちは、8枚くらいのパジャマを毎日洗濯しながら順番に着ている。

それでもお気に入りのリネンのパジャマは何年も着ているとさすがに弱ってくるようで、僕のベージュのパジャマの背中が少し裂けてしまっていたようだ。

僕はそのパジャマを役目が終えたので捨てようと思っていたところ、昼御飯が終わってKが裁縫道具を取り出して縫い始めた。

途中僕に1回針に糸を通してくれと言うのでて通したけど、しばらく真剣に縫っていたかと思ったら、少ししたら裂けた部分を綺麗に取り繕いパジャマが元に戻った。

僕は、「破れた服はすぐに捨てて買い換えればいいや」という性格なのだけど、僕とは真逆で何事にも慎重で倹約家のKは、こんな風に地道に縫ってくれる。

そんなKの質素な暮らし方が、僕はとても好きだ。

暖房のない暮らし。

熱海の家は、もともと冷暖房の付いていない日本家屋で平屋の一軒家。

部屋が3つあるのだけど、リビングだけは暖房をつけてもらい、他の2部屋は今の所電気の工事が終わっていないため冷暖房がついていない。

日本家屋で暮らしたことのある人ならわかると思うけど、障子や襖という紙と木でできた家の中は、隙間風が通ったりして寒いものだ。

毎日、リビングでKと一緒にヌクヌクと寛いだあとは、風呂に入って寝室に向かう。寝室はこの時期、すでに寒くなっていて、二人で、「寒いねー。寒いねー」と言いながらベッドの中に潜り込む。

でも不思議なことに、ベッドの中はあっという間に温かくなってくる。二人の体温がみるみるうちに羽毛布団の中に溜まり、このまま布団の中から出たくないとさえ思う。布団から出ている顔はひんやりと寒いのに、布団の中は驚くほどあったかい。

でも、もしこれが一人だったら、きっとこんなに早く温まることはないのだと思う。二人の体温は、1人×2ではなくて、1人×4くらいの温かさがあると思うのだ。

そして朝起きた時も、隣にKの温もりを湯たんぽのように感じながら、「なんて幸せなんだろう・・・」と思うのだ。

母の小包。

午後になって母から電話があり、野菜を送ったとのこと。千葉県からの宅配便は、その日のうちの届くので最近は驚いてしまう。

小包の中には、ミョウガとピーマン、ナス、その上には手作りのマスクがいくつも入っていた。

不思議な柄ばかりのマスク

先日、Kを連れて母の家に遊びに行った時に、母からもらった手製のマスクをしていたので、母は嬉しかったのかもしれない。目が老眼でなかなか見えにくいだろうに、ざっくりと縫ってこんなにマスクを作ってくれたのだ。

K「お母さん、こんなにたくさんマスク作ったんだね・・・」

僕「つけきれないくらいあるね」

お金では買えないものを、母はいつも届けてくれる。

愛するものを失った時に。

松本の器屋さん「陶片木」を訪れた際に、またあの猫に会えるかと思っていたのだけど、猫は残念ながら他界していた。

店員さんに猫に会えなくて残念だと伝えると、店の入り口にありし日の猫の写真があるから見て行ってくださいと言われて眺めた後、店を後にした。

ホテルに着いて、購入した器などを開けると、器とともに手紙が添えられていた。

『死はいつか必ず訪れる。
だから、誰かを愛することは、
耐えがたい悲しみを育むことでもある。』

誰か、何かを愛することがなければ、それを失うというとてつもない喪失感を味わわずに済むのだろう。

それはわかっていても、誰かを愛し、それを失った時に途方に暮れるのだ。

昔、犬を飼っていて老衰で亡くした時に、心が砕けてしまうかと思ったのを覚えている。

今回また、僕とKで犬を飼おうと話しているのだけど、その悲しみがいつかやってくることはわかっていながら、それでも犬と一緒に暮らし、愛する日々を選択しようと思っているのだ。

たとえ大切な家族を失ってしまったとしても、彼らを愛した日々は、決して失われるものではないのだから。

母の手術。

母と別の件で電話で話しをしていたら、明日歯茎の手術をするという。

歯茎を切開して、中に注射をするらしい。

僕は心配になり、手術をした日に電話をした。母はもしかしたら話もできないかもと思ったけど、麻酔が切れても痛みはなく、大丈夫だと言っていたのでほっとしたのだった。

でも、年をとった母が手術をするというのは、たとえ歯茎であっても胸の痛むもの。

できるならば自分が代わってあげたいと思う。

そんな風に母は僕と兄のことを、ずーっと見守ってきたに違いないと思うのだ。