たんぱく質。

僕のジムのトレーナーはレスリングの日本代表だった人。あまりにも身体が大きいので、周りからは『ハルク』と呼ばれている。
当たり前のことだけど、毎日の食事によって僕たちの身体は出来上がっている。ハルクはいつも僕に、「食事はきちんと摂られてますか?何をどんな時間に食べましたか?」としつこいくらいに聞いてくる。
パーソナルトレーナーにとって、僕の身体の管理は、自分の仕事の一つのように感じているらしい。ちなみに、僕の身体自体が、彼の作品ということになる。(ごめんなさい)
毎日の生活の中で、今の身体をきちんと維持してゆくためには、たんぱく質が欠かせない。そしてそれは、その人の身体の大きさにもよるのだけど、かなりの量が必要なのだ。
僕のジムで言われている1日に必要なたんぱく質の量は、大まかに言うと、『体重の2倍のグラム数』。つまり、体重72キロの僕は、72×2=144g のたんぱく質が必要ということだ。(ちなみに、これは肉144gではなくて、肉の中に含まれるたんぱく質144gということ)
その量を摂取しないと、たとえ身体を動かさず寝ていたとしても、身体を維持してゆくために自分の身体の中にある筋肉を食べ始める。
144gのたんぱく質を摂ることは、実はかなり難しい。たとえば、良質なたんぱく質と言われている1本のささみ約50gの中には、12gのたんぱく質がある。ということは、僕の体重ならば、1日に12本のささみが必要ということになる。(これはすべてたんぱく質をささみで摂った場合)
そして、理想的には食事は1日3回ではなくて、3時間ごとに6回摂るのが望ましいと言われている。1回の食事で撮れるたんぱく質は、そんなに多くはなくて、しかも3時間くらいで分解が進み吸収されるので次のたんぱく質が必要ということらしい。
ハルクは、僕が食事を生き甲斐にしていることも知っているし、毎日お酒を飲むことも知っている。
ハルクの『作品』は、気分屋でわがままなので、なかなか思ったように仕上がらないのだ。

僕のトレーナー。

Jカトラー(宇宙人みたい…)

ビクトー・ベウフォート

昨夜、飲んで家に遅く帰って来たら、ジムのトレーナーKiからメールが入っていた。
『Tさんに、ますますやる気になってもらいたいから、かっこいい写真を送ります!また、月曜日に!』
添えられていた写真は、Kiが憧れている格闘家とボディビルダーの写真で、彼らの話をする時にKiはいつも、うっとりしたような目をしながら、
「ベウフォートの肩と僧帽筋がめちゃくちゃかっこいいんですよ…」
「黒人ばかりのビルダーたちの中に、Jカトラーは白人で一人で挑んでいるんです…もう、ちょっと人間じゃないみたいなんですけど…」
Kiは、元レスリングの日本チャンピオンだというのを、僕は本人からではなく、周りから聞かされた。恥ずかしがり屋で大人しく寡黙なKiの、どこに闘志が秘められているのかわからないけれども、かっこいいという意識は、完全に男性の肉体に向けられている。
僕のジムには、格闘家のAさんもいるのだけど、いつも惚れ惚れするような身体で、もくもくとトレーニングしている様は、すべての男の視線さえ釘付けにするようなかっこよさだ。
当然、KiもAさんのことは見ていて、「足が長くて、大胸筋や肩や背中の筋肉が半端ないですねー」などと言っている。本当に、オケツとかプリッと上がっていて美しいのだ。
Kiは、ストレートなのか、ゲイなのか、さすがに僕も今となってはわかりかねている。
なんとか僕に、もっとかっこいい身体になってもらいたいと言って、真剣に僕の身体を触りながら、トレーニングをしてくれるし様々なアドバイスをしてくる。
なんか、変ですよね…僕たち…

生きているという実感。

実は、一ヶ月半くらいジムをさぼっていた。
筋肉は、一ヶ月何もしなくても、落ちることはないことは立証されているらしいのだけど…。
年末になると慌ただしく行けない日が増えて、正月に突入し怠惰になり、そのまま行かなくなってしまうのは毎年のこと。
そこで、思いきってトレーナーを変えてみた。
いつもトレーナーは、気持ちが清々しい人で選んで来た。1時間ともに過ごすのは、意外とトレーナーとの波長の問題は大きいと思う。
今回のトレーナーは、元レスリング日本代表。耳が潰れていて身体は僕の2倍くらい大きくて、腕は僕の脚くらい太い若者…。
それでいて、ちょっととぼけている感じがある。たとえば、ベンチプレスを13回やるところを、数えながら熱くなって早口になり、途中で一回分進んだりする…笑
それと、いちいちトレーニングする時に、筋肉の部位を意識するようにと言いながら、僕の身体を触って来るのもなんだかかわいい。
火曜日に一ヶ月半ぶりに軽くトレーニングしたら、翌日からずっと激しい筋肉痛が続いた。
金曜日にまたジムに行き、筋肉痛のことを話すと、トレーナーは目を輝かせながら我がことのように筋肉痛を感じて喜んでいるようだった。
筋肉が肥大してゆくメカニズムに筋肉痛は欠かせないことや、今日は肩をこのような順番で血流を上げて、全体のフォルムを整えて行きましょう…など、熱心に話してくれる。
そしていつも思うのだけど、この、筋肉痛を感じてる時って、『ああ、生きているなぁ…俺…』という実感を感じる瞬間なのだ。
ちなみに、激しい二日酔いの時にも、『ああ、生きているなぁ…俺…』っていう実感を感じるのだけど…笑
これからは、ジムに行くのも楽しみになって来たことがうれしい。

負荷。

この夏、あまりの暑さに半袖を着る機会が多かったためか、「若い子が出来たからって、こうも変わるものなのかしら!」などと嫌みを言われていたのだけど、実はもう、3年くらいスポーツクラブに通っている。周りのみんなには黙っていたし、ごく近しい人にもまったく気づかれてはいなかったのが笑える。
40歳を過ぎた時に、「これから年を重ねて行く中で、清潔感がある颯爽とした身体でいたい」と思ったのだ。
時々面倒くさくなって、3ヶ月くらいほったらかしにしたこともあるけど、今はほぼ、平日に週に3回というペースで1回1時間未満でワークアウトを日常的にこなしている。
運動をはじめて一番良かったことは、夏場でも階段の上り下りや、歩くことも厭わなくなったこと。基礎体力がついたからか、わしわし歩いても大丈夫だと思える。
そして、食欲が更に増したこと。ご飯がもっと美味しく感じられるし、昔は66キロくらいだった体重が、実は今、周りのみんなが知らないうちに72キロにもなっている!
そのスポーツクラブは、芸能人がたくさんいるところで、芸能人以外でも、ロッカールームで思いがけず、物凄い手の込んだ彫り物を見かけることもある。
僕がいつも感心するのは、キャスターのTさん。癌という大病で、今までに何回も手術をされていながら、70歳になった時にトレーニングをはじめて、それ以来今も週に3回くらいトレーニングに励んでいる姿を見かける。
トレーニングとは、僕なりにひと言で言うと、『自分の身体に負荷をかけること』なのではないかと思う。今までの負荷ではなく、少しだけ今まで以上の負荷を身体にかけることによって、身体の細胞に刺激が入り、加齢によって少しずつ縮小してゆく身体の状態をキープ出来る。もしくは、少し成長することが出来るのだ。
正直、「自分の身体に負荷をかけること』は、とてもきつい。それこそ、『ドM』でないと、こんなことやってられない!と思うこともある。それでも、遠くにTさんが必死になって自分に負荷をかけている姿を見ると、Tさんに比べるとまだまだ僕なんて若いのだから、こんなことくらいで弱音を吐かずに頑張らなくてはと思う。
また、一つの重さを達成出来ると、自分の中に次の目標が生まれるのも楽しいものだ。自分にしかわからないけど、身体も少しずつ変わって来る手応えを感じることが出来るのもうれしい。
今は、週末の台北パレードに向けて、見せるカラダ作りに励んでいるところ。
というのは、冗談です。笑

挑戦し続けること。

今まで出来なかったことでも、諦めずに続けていると、何かの拍子に突然出来ることがある。
その感覚は、小さい時に、自転車を小さな車輪をつけずに乗れた時に似ている。
トレーニングに、ベンチ・プレスという種目があって、身体をベンチに横たえて、バーベルを真上に上げるのだけど、僕は、左肩を何度か繰り返し痛めているので、長い間軽い重さでかばうように様子を見ながらやっていた。
この二ヶ月くらい、夏なので週に3回くらいジムに通っているのだけど、昨日、トレーナーと相談して、何気なく昔上がっていた重さでやってみたら、軽々と上がった。
シャフト(バー)が世界共通で20キロ。それに45ポンドの重さが両側に加わるので、全体では60キロ。痩せた大人一人分くらいの重さだ。
今回の度重なる肩の故障で、肩がいかに繊細な動きをする関節なのか、人間の筋肉がどのように動くのか、色々な勉強をした。
重い重量を上げようとすると、肩がかばうように前に出てしまい、そのために、他の筋肉が引っ張られ、結果的には肩を痛めてしまうことも、身を持って体験した。
表の筋肉がいくら強靭になって来ても、結局インナーマッスルが鍛えられていなければ、故障をきたすこと。
そして、あらゆるスポーツで言われていることだけど、フォームが一番重要だということ。
美しいフォームは、そのまま安定した強さに繋がる。
次の目標は、70キロ。
どんなに小さなことでも、目標がある毎日って、楽しい。