公正証書のための証人問題。

16歳年上の僕が急に倒れたり、意識不明になったり、入院した時に、パートナーのKがきちんと家族とみなされて、病院や医師から直接連絡が行き、説明を受け、治療に関する意思決定が出来るように。

僕が先に死んでしまった時に、残された財産をきちんとKに相続できるようにするためには、この国では養子縁組をするか、公正証書を自ら作るしか今のところ道はないという話を以前ここで取り上げた。

僕たちは宮古島に移住して来て色々考えた末に、この公正証書を作り法務局に提出する手続きを進めていて、それには宮古島にて2人の証人が必要になってくるという問題に直面していた。

東京と九州から移住して来た僕たちに、そんな同性カップルの権利のために証人になってくれそうな知人はいなくて、そうかといって東京からわざわざ友人を呼ぶのも気がひけていたし、どうしたものかと頭を抱えていた。

行政書士の方からなかなか良い方法が見つからず、便利屋でも使いましょうかと言われてさすがにそれは躊躇われたので、ダメでもいいかと思い以前家の登記でお世話になった司法書士のお爺さんSさんに聞いてみることにした。

Sさんの事務所に電話をすると、「もしもの時に僕のパートナーが家族と認められるように公正証書を作りたいのです」と言うと、証人になるには内容を確認しなければならないから書類を送ってくれと言われた。

この時点でSさんは、僕が同性愛者だとは思っていなかったと思う。

Sさんは恐らく60代半ばから75に近い感じだろうか。正直、こんなお爺さんが僕たちにゲイの人権問題をどう思うのか心配なところもあった。

東京ならまだしも、沖縄県の離島である宮古島のおじいなのだ。ゲイなんて気持ち悪いしそんな証人などなるわけがないと言われても覚悟していた。(僕たちはこんな酷い扱いを今までの人生で何度も想像したり、実際に受けて来たのだと思う)

書類をメールで送り、少しした後にSさんから電話が入った。

「ただしさんがやろうとしていることは素晴らしいことです。今のこの国ではこういう公正証書を作らないとあなたたちのような人たちは誰も財産も守れないしいざという時に酷い目に遭うんです」

「今の自民党政権は頭のおかしいことばかり言って時代に逆行してるんです。こんな国はおかしい。わかりました。私がまず証人になります。そして他にもう一人証人を探してみましょう」

白髪のSさんは、僕たちのことを変だとか気持ち悪がるどころか、完全に僕たちの置かれた状況を理解していて自分の正しいと思うことを行おうという気概に満ちていた。

電話でSさんという白髪のおじいと話しながら、僕の胸は熱くなって自然に涙が滲んでいた。

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