お掃除のおばさん。

仕事納めの前日の26日に、クライアントから呼び出された。
当初、新しいプロジェクトを僕に任せたいというお話だったのだけれど、コピーライターと行ってみると、『オリエンテーション』だった。
ということは、年始に仕事が始まった週末には、なんらかの企画を持って行かねばならないということ。これって、年末年始の宿題を渡されたようなものなのだ。
しょうがないなあと思いながらも28日の土曜日に会社に行った。
150名近くいる僕の部署の人は誰一人いなくて、ちょこんと席に座って企画を考えはじめる。すると、トイレ掃除をしていた60歳くらいの掃除のおばさんが出てきた。
僕は、こんな日にまでお仕事をされていたおばさんに挨拶をしようと思い、近くに行って話しかけた。
「こんな日もお仕事だったんですね。おつかれさまです!」
おばさんは僕がいるのに驚いたようで、「今日もお仕事なんですか?大変ですねえ・・・」と言って僕を労い、それから少し立ち話をしたらおばさんは言った。
「良いお年をお迎えください」
「良いお年をお迎えください」
おばさんが少しうれしそうだったのは、普段、うちの会社で掃除をしていても、誰もおばさんと話をする人なんかいないからかもしれない。
僕はおじさんでもおばさんでも会うと「おつかれさまです」と挨拶をするのだけど、うちの会社ではおばさんと話している人をあまり見かけたことはない。
僕はおばさんを見ながら、母のことを思い出していた。
そして、掃除をしているおじさんと話す時は、どうしてだか父のことを思い出すのだった。

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