違う温度。

夜中にKが突然起き上がって、トイレに行ったかと思うとしばらく帰ってこない。
「どうしたのだろう・・・?」と、リビングに行ってみると、クーラーの冷気の当たる場所で寝ていた。
「Kちゃん、寝室もクーラーつけるからベッドに戻るよ」
暑い夏の間、我が家ではリビングの冷房を26度くらいで弱めにかけて、寝室の扉を開けて寝ていた。寝室の冷房ははじめだけかけて、2時間くらいで止まるようにタイマーをセットしながら。
僕はそれでも足元がひんやりして寒く感じて、羽毛布団に足元だけ突っ込んでいたりするのだけど、Kは僕とは違って、背中に沢山の汗をかいている。
僕の平均体温は、36度くらい。Kの体温は、36.7度くらい。
0.7度違うふたりが寝ていると、感じる温度も全然違う。
汗をびっしょりかいてベッドに戻ってきたKに、
「首や腕に天花粉塗ってあげるね」
「天花粉って、赤ちゃんのぬるやつ?」
「うん。うちの赤ちゃんがあせもにならないように」
「やだ」
そんなことを話して笑いながら、クーラーをつけて眠りについた。

『同性婚訴訟』その後。

実は、7月8日に再び裁判所に行ったのだ。当初、僕が行うことになっていた意見陳述は許可がもらえなかったため直前に延期になってしまった。
その時に、こちらの弁護士と国側において応酬があった。これは、こちらが何を聞いても、国側が、「この国で結婚というものを認めた時代において、『同性婚』のことは想定していなかった」という発言を繰り返したからである。「想定していなかった」「想定していなかった」「想定していなかった」「想定していなかった」と、30回くらい繰り返しただろうか?
その後、8月9日に裁判所に行ったのは、次回の日程や何を準備するかなどを話し合う第2回進行協議期日。この場では少し突っ込んだ話し合いが、弁護士、裁判官、国の間で執り行われた。我々原告は、小さな裁判所の片隅に座り、固唾を飲んで彼らのやり取りを見守り続けたのだ。
そんな中でひとつ、とても感心した弁護士(原告代理人)の言葉をここに載せておこうと思う。
裁判官:
時代の移り変わりによって法律がそぐわなくなり、変えていくことを求められるようなケースがあるが、同性婚が認められていないという問題も、そういうことと近いのではないだろうか?
原告代理人:
性的指向・性自認が自らの意思で変更できないことや、かつて疾病と思われていたが実際には違うというのは、まさにその点である。価値観の変動というよりは、天動説と地動説やハンセン病の話に近い。科学的に誤ったことを前提にした法制度が、 後に前提が誤っていることが発覚して、そこからどうするかという話である。
つまり、その時代ではわからなかったことだけど、性的指向や性自認、同性愛に関する様々な真実がわかってきた今になってみると、当時作った法制度は、まったく前提として間違っていたということ。(ハンセン病の裁判に近い)
このようなやり取りを繰り返しながら、『同性婚訴訟』は少しずつ進んでいる。

いちじく。

初夏から夏の間中、気がつくといちじくが成っている。
気がつくと・・・と言うのは、いちじくは、「無花果」と書くように見た目で花がわからないから。どう言う意味なのかわからないのだが、どうやら花は実の中にあるというのだ。
青い小さな実を眺めているのも涼しげでいいのだけど、いつのまにか色づいてくるいちじくの実も季節を感じるものだ。
うちの小さな鉢植えのいちじくでさえ、食べるとちゃんと甘いから驚いてしまう。
鳥に狙われる前に、会社に行く前に色づいたいちじくを摘んだ。

シークレット・スーパースター

シンシア

お母さんがかわいかった。

大ヒットしたインド映画『きっと、うまくいく』の、アーミル・カーンの新作映画『シークレット・スーパースター』は、インド映画らしい人生盛りだくさんの作品だった。
あまり裕福ではない中流家庭のシンシアは高校生。両親とおばさんと小さな弟と5人暮らし。父親は厳格で、娘に対して特に厳しい。これは、インドの貧しい階級には当たり前のことのようだけど、明らかに女性差別や蔑視がはびこっているようだ。
そんな父親は、自分の奥さんにも同じように厳しく、家庭内暴力も頻繁に起こっている。
シンシアは6歳の時にお母さんに買ってもらったギターを弾き、歌を唄うことが大好きなのだけど、父親には娘にそんな趣味は許してもらえず、自分の身元を隠して、大好きな音楽を続けていく。
少女の成長を軸にして、家族のありようや人生を描いた今作は、ベタではあるけど演歌のような読後感があり見応えがある。僕は、父親像がかなり自分の父親と被るところがあり、ところどころ泣かされてしまった。
アジア的熱情の世界を感じる映画。
⭐️シークレット・スーパースターhttp://secret-superstar.com/

永遠に僕のもの

この映画は、1971年から1972年にかけて強盗と殺人を繰り返したカルロス・ロブレド・プッチという実在の人物の半生を元に作られた作品。カルロスは逮捕された当時、まるで『青年のマリリン・モンロー』のようだったと言われたほどの美しさだったようだ。
予告編を観た時に、「これはちょっと僕には関係ないかな・・・」と観るのをやめようと思っていたのだ。
窃盗や殺人という暴力シーンが出てくる映画があまり好きではないからなのだけど、『Bridge』のMが、「この映画はゲイ映画らしいよ」というので、観ることにした。
実際には、ゲイ映画には入らない、頭のおかしい殺人鬼の映画だった。
若者特有の自己中心的なありよう・・・というよりも、狂気の入った殺人鬼を描いた映画。ある一定数こういう人間がこの世界にいるのかと思うと、ちょっと恐ろしくなる。犯罪映画が好きな人にはおすすめできる。ゲイ映画と思っては、期待できない。
⭐️永遠に僕のものhttps://gaga.ne.jp/eiennibokunomono/

午前10時の映画祭

見逃さないようにトイレに貼った。

午前10時の映画祭が始まって、かれこれ10年がたつそうだ。
僕は10年前にこの映画祭が始まったことで、『ベニスに死す』、『アラビアのロレンス』、『ロミオとジュリエット』、『ウエストサイド物語』など、いくつもの名作と呼ばれる映画を劇場できちんと観ることが出来た。
10年間様々な名作を公開してきたこの映画祭も、今年を最後に一旦なくなってしまうようで、ちょうどやっていた『ローマの休日』をKとふたりで観ようと、TOHOシネマズ新宿の予約をしようとしたら、土日はすでに売り切れだった。
僕が感心したのは、きっと何百回と上映しているであろう『ローマの休日』でさえ、こうやって今、多くの人が見に行こうとしていることだ。
新宿がダメだったので、錦糸町を探したら、4割くらい空いていたので無事に観ることができたのだけど、実際には行ってみると前の席までほぼ満席だった。
はじめて『ローマの休日』を観たKは、やっぱり感動したようで、今回これで5回目くらいになる僕も、やっぱり細かなところを思い出しながら感動したのだった。
改めて思うことは、名作と呼ばれる歴史上で評価された作品は、必ず劇場で観る価値があるということだ。
今後の作品をここに載せておきますので、興味のある方はぜひ、お近くの劇場で!
⭐️午前10時の映画祭http://asa10.eiga.com/

ティ・ロランドカフェ西武渋谷店

クレープというか、ガレットが時々食べたくなる。しかも甘くない方のそば粉のガレットが。
神宮前にブルターニュのガレット屋さんがあるのだけど、渋谷にいる時は、僕の高校時代からあるオタンジャディスか、渋谷西武の地下2階にあるティ・ロランドカフェは気軽に入れるお店だ。
そば粉の生地は重たくなく、焼けたチーズや玉子ととてもよく合う。
休日のちょっと遅い朝にクレープはうってつけだと思う。
⭐️

交感神経と副交感神経の乱れ。

昼間に活発になる交感神経と、夜になってリラックスする時に優位になる副交感神経が、なにかの原因で入れ替わったようになり、夜中に目が冴えて眠れなくなってしまうようなことが時々起こる。
こういう時は、自律神経が少し乱れている時のようで、そんな日は、昼間も身体が重く眠たく、このサイクルをまた元の状態に早く戻したいと思うものだ。
僕の場合、アイデアを探したり頭を使う作業が重なった時にそうなってしまうことがあるようで、このお盆に夜中に目が覚めて眠れなくなってしまった。
そんな時には、リビングに行って、ストレッチポールに仰向けになり、肩甲骨を動かしてみる。大抵眠れない時は身体が強張っていて、筋肉も緊張していることが多いから。
それから、お水ではなく、白湯を飲んでみる。身体を中から温めて、しばらくしてからもう一度ベッドに入る。首の位置と身体の向きを、一番居心地のいい場所にしてみる。これができたら、眠りにつくまではもう一歩。ふんわりと温かいものに包まれているところを想像してみると、そのまま深い眠りに落ちていく。
そんな眠れない日が2日とか続いてしまった時は、僕は整体院に行くようにしている。柔道整復師のいる整体院に行って、背中の緊張をほぐしてもらうのだ。
僕の場合は、マッサージよりもこれが一番よく効くようだ。

北の果ての小さな村で

デンマークから、28歳の青年が、家の家業を継ぎたくないばかりに、グリーンランドの東にある人口80人の小さな村にやってくる。
デンマークからやってきた先生は、村の小さな学校で子どもたちにデンマークの言葉を教えるのが仕事。でもその仕事が思ったように簡単ではなく、子どもたちも全然言うことを聞かないし、子どもたちの親も親戚も村の人々も一向に懐いてくれない。
極寒のグリーンランドの美しい景色と、そこで暮らす人々の野生的だけど美しい暮らしがゆっくりと映し出されながら、少しずつ先生の心も変わってゆく。
まるでドキュメンタリーフィルムのように自然な人々の表情を捉えたこの作品は、監督がこの村に惚れ込んで住み続けながら、先生と生徒の暮らしを追って登場人物すべてが本人であるという驚きの作品。
「人生って、こうなんだよね」という、答えなど映し出さないけど、映像をみることで各々が感じ取れる美しい作品。
⭐️北の果ての小さな村でhttp://www.zaziefilms.com/kitanomura/

風をつかまえた少年

『風をつかまえた少年』は、実際にアフリカでも最も貧しいケニアのワラウイという電気もない村で、14歳の少年が学校で学んだ知恵によって、風車で電気を起こし、日照り続きの畑に電気によって水を組み上げることに成功した実話を元に作られた映画で、原作は世界23ヶ国で翻訳されている。
このお父さん役がどこかで見たことあるなあ・・・と思っていたら、キウェテル・イジョフォーという人で、アカデミー作品賞を受賞した『やがて夜は明ける』の主人公だった人で、今回初の監督も務めている。
主演の少年の演技が本当に素晴らしく、アフリカの貧しい村の人々の暮らしを丁寧に描写している。
真面目で心根の優しいお父さんは、日照り続きや大雨によって畑の収穫に波があり、予測のつかない天候に左右されるしかないと半ば諦めかけている。
貧しくても、真面目に生きる村の生活に天災が降りかかる。そしてその時に14歳の少年が立ち上がる。
世界の貧困の問題をきちんと見せつつ、それに対する鮮やかな解決策を見せてくれる映画。
「これが実話だなんて、信じられない!」と思わずにいられない、見終わった後に圧倒的な爽快感に包まれる作品。
⭐️風をつかまえた少年https://longride.jp/kaze/