見送る時、見送られる時。

僕たちは毎朝、僕が朝ごはんを作り、Kが洗濯をして、Kが先に8時前に家を出るので、先に出かけてゆくKのことを窓から手を振りながら見送る。
毎日夜には帰ってくるのになぜ見送る必要があるのかというと、それは、今日一日何事もなく帰って来られるようにとの思いからだ。
もしかしたら、どちらかが事故に遭うかもしれないし、体調を崩したり、地震が起こることもあるかもしれないからだ。
ほとんどいつも僕が見送る方なのだけど、今日は珍しく僕が1時間早く起きて先に家を出た。
道を歩きながらマンションを振り返ると、Kが手を振っていた。
その目を見た時に、僕たちがまだ遠距離恋愛をしていて、僕が毎月か月に2回、大分や福岡にKに会いに行っていた頃のことを思い出した。
せっかくのふたりの楽しい時間が過ぎて、Kと別れなくてはいけない時に、Kはいつも目の奥で泣いているようなとても寂しそうな表情をするのだった。
その瞳を見るたびに僕は、Kと同じようにせつなくなったものだ。
今日気づいたのは、見送られるよりも、見送る方が、気が楽だということ。見送る時は、ただ元気よく手を振っていればいいのだ。
そんなことを考えながら、早くKの待つ家に帰りたいなあ…と思いながら、駅への道を歩いたのだった。

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