Kの決断。

「ただしくん・・・」
「ん?」
「ねえ・・・ただしくん・・・」
ベッドで本を読んでいたら、隣でKが呼ぶのだ。
そういえばこんなこと、もう何ヶ月も前から時々あったのだけど、僕もそのまま気にせずに寝てしまったりしていた。そこで今日は、こちらから聞いてみた。
僕「どうしたの?あかちゃん・・・」
K「あのね・・・Kちゃん実は・・・2年経ったら仕事変わろうと思ってるの・・・
変わってもいい?」
僕「もちろんいいよ。今から新しい病院探しはじめて、いいところがあったら面接にも行けばいいじゃん」
K「うん。今の病院だと、狭く浅くって感じで、検査も全部外に出しちゃうの・・・だからあんまりやりがいもなくて・・・」
僕「前の大分の病院は大きかったし、忙しそうだったもんね・・・Kのキャリアにとってもプラスになる病院を探せばいいよ」
K「うん。ありがとう・・・」
Kが大分の病院を辞めて東京に引っ越して来たのは、もう3年近く前になるのだ。それから1年間くらい何もせずにのんびり暮らしていたのだけど、春に仕事を決めて東京で働き出したのだった。
働きはじめてまだ3年も経っていない病院を辞めることで、Kもどうしようかずっと迷っていたらしい。女性が多い病院にはきっと重宝がられていると思うし、3年くらいはいてくれると思っているだろう。
思えばKは、大分にいれば心配なく給料を貰い、一生涯続けていける大きな病院で働いていたのだ。ひょんなことで僕に出会い、数年の後には仕事を辞めて東京に出てくる決断をしたのだった。
Kは、大分から東京に出て来たことを後悔していないだろうか?
時々そんなことを聞いてみたくなることがある。
僕と一緒の東京の毎日は、Kをしあわせにしているだろうか?
毎日毎日起こる出来事は、そんなに大きなことはないように見えても、僕たちの人生はほんの少しずつ、確かに変わっていっている。
出会った頃のKは27歳で、僕は43歳だったのに、今はもう、33歳と49歳なのだ。
キラキラと幸福に満ちている毎日に、いつも感謝している。
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