アイ,トーニャ

アメリカで、はじめてトリプルアクセルを成功させたトーニャ・ハーディングが、1994年リレハンメルオリンピック出場権をかけて、ライバルであるナンシー・ケリガンを襲撃させたと言われている事件を、改めて様々な角度から真相に迫ったドキュメンタリータッチの映画。
監督は、『ラースと、その彼女』のクレイグ・ギレスビー。トーニヤ役は、マーゴット・ロビー。そしてトーニヤの鬼母役がアリソン・ジャネイ。アリソン・ジャネイはこの役でアカデミー助演女優賞を獲得した。
作品は、ドキュメンタリー調で作られているのだけど、ところどころで出演者がカメラに向かってストーリーテラーになる。
激しい暴力のシーンでさえ、そのためかそんなに深刻にならずに、むしろお笑いの要素が入っていて笑いながら観ることが出来る。
映画自体に、2回この映画やトーニヤ・ハーディングについて出てくるフレーズがある。
トーニヤは、沢山の人に愛された。でも、それ以上に多くの人に嫌われもした。
言うなればそれは、アメリカみたいなものよね。
この映画を通してトーニヤ・ハーディングを生い立ちから追いかけて見ていると、彼女が犯したことは、間違いなく罪であるけど、彼女自身、本当に可哀想な境遇で育ったんだなぁと思わせられるのだ。
今では、プロレスラーを経て、恐ろしい形相になつて時々アメリカのテレビに出ているようだけど、彼女が体現していることは、ある角度から見たアメリカそのものであるように思えるし、僕の頭の中には、マドンナみたい…と思ったのだった。
見終わった後に爽快な映画ではないけど、とても編集が良くできた作品。
⭐️http://tonya-movie.jp/sp/

旅の行き先は、偶然決まる。

旅の行き先はいつも、なりゆきで決まる気がする。
僕の場合は、ずっと前から「ここに行きたい・・・」「今度の夏はここに行こう・・・」などと計画するよりも、自然な流れで行き先が決まり、何かの力に流されるようにしてその旅先に向かうことがほとんどな気がする。
この6月に行くニューヨークも、昨年末に『劇団ぺんぺん』の公演で『WHOSE PARTY?』をやることが決まり、『真夜中のパーティー』をブロードウェイで上演するということを『Bridge』聞き、その場で来年はニューヨークに『真夜中のパーティー』を観に行くことを決めたのだった。
先日、シンガポールの友人カップルから、ペナンに新しい家を建てたので、完成披露のハウスウオーミングパーティーを9月の週末にやるという招待のLINEが入った。
「ペナンって、どこの国だっけ?」
そう思いながら検索をすると、マレーシアの世界遺産の町だった。(なんだか面白そうではないか!)
すかさず飛行機の便をチェックすると、木曜の夜にたって、月曜日に帰れば行けないこともないかな・・・と思い、あとはKの仕事の都合だけだと返信をした。
もともと9月か10月は、石垣島か宮古島に行こうと予定を立てていたのだけど、こんな風に友人たちの誘いに乗って、予定を変更するのも面白いと思うのだ。
人生は自分の思うようにではなく、時々予期せぬことで行き先が変わることがある。
どこからか風が吹いて来たら、その風を信じて、吹かれていく。
何かの偶然で決まったような行き先ほど、ワクワクするものはない。

パレードには、ラガパンを。

パレードで僕に会った人は知っているけど、僕はいつもパレードでは、ラガーパンツを履いている。前が、黄色と緑で縦に2分割されており、後ろは赤と青で2分割されているラガーパンツ。
昔、銀座のシップスで、色が綺麗だったので買い求めたものだけど、なんとなくレインボー感があるのでここぞというパレードの時に気合いを入れる為に履くことが多い。
このラガパン、僕が大きくなったせいか(スクワットなどをすると下半身がすぐに大きくなってしまう)、履くと丈が少し短いようで、「エロい」とか、「ちょっといやらしい」という意見をいただくこともある。年上の人だと、
「あんた、よくその年でそんなの履けるわね・・・」
などと言われることもある。
今回のパレードは40代最後のパレードだったので、いい加減もう少し大人しいものを履こうかと迷った末に結局ラガパンを履いた。
OIJのスタッフのみんなは見慣れてるので特に反応はなかったのだけど、Kは僕に向かって、「そのパンツも今年で見納めだね・・・」などと言ってくる。
道行く人がやはりちょっと反応するのがわかる。
なんというか・・・原宿の道を小さな子ども連れの母子とすれ違うと、お母さんが急に子どもの手を強く引く感じというか・・・。笑
日曜日のパレードは気持ちのいい快晴で、僕は派手なラガパンに僕がデザインしたOIJのTシャツを着て歩いた。
いくつになっても、自分の好きな服を着て、こんな風にパレードを自分らしく自由に歩けたらいいなあ。

桜が終わったら、ハーブを育てる。

冬から春まで楽しませてもらったチューリップや水仙などの球根とパンジーやネモフィラなどを植えていた大鉢が、だいたいお花が盛りを過ぎていたので、ゴールデンウィークのはじまりに、今度はハーブをいくつか買い求めて植えることにした。
写真の上から時計回りに、
バジル・パクチー・チャービル・紫蘇・イタリアンパセリ
真ん中がディル。
家にハーブがあるととても便利で、たとえば、アサリを買って来てボンゴレを作るときでも、イタリアンパセリを摘んでくれば使えるし、バジルだってすぐに香り高いバジルが手に入るのだ。
地中海性気候を好むハーブは全般的に梅雨の湿気や夏の暑さは苦手だけど、全滅することはほとんどなく、弱ってもまた秋になると復活することが多い。
バジルやパクチーだって、スーパーで買えばすぐに300円くらいするけれども、手元に置いておけばそんな必要はないのだ。芽を摘むと、そこから分岐してどんどん枝数が増えて、太陽に向かってすぐに大きく成長してくれる。ハーブなんて、ひとつ150円とか200円で買える苗なのに、家で育てない手はないと思うのだ。
僕のベランダではこの他にも、ローレルとローズマリーは常にあるし、セージとタイム、チャイブ、オレガノ、山椒も植えてある。今回、はじめて万願寺とうがらしの苗を手に入れたのだけど、実をならせることが出来るか楽しみにしている。

TOKYO RAINBOW PRIDE 2018 [PARADE]

OUT IN jAPANのフロート

丸井にかけられたフラッグ

「HAPPY PRIDE!」 
「HAPPY PRIDE!」
パレードを歩きながら、例年になく沿道の人たちが温かく声をかけてくれた。
外国人の人たちはうれしそうにハイタッチをしてきたり、人々の顔が輝いているのが見える。
渋谷の公園通りは、『OUT IN JAPAN』の写真のフラッグが並び、丸井のビルにも大きな『OUT IN JAPAN』の幕がかけられている。
『OUT IN JAPAN』のフロートは、大音量で進み、周りのみんなもうれしそうに踊り狂っている。
いつか、
『東京レインボープライド』なんて言って、パレードとかしてたよね・・・
「え???そんな時代あったんだ?」
そんな風になったらいいと思う。
「セクシュアルマイノリティにも平等の権利を!」
なんてそんなこと当たり前すぎるのに、未だにそんなことがこの国で実現出来ていないことが不思議なくらいだ。
世界が変わり、少しずつ日本も変わる。
僕たちの未来は、もうすぐそこに見えて来ている。

TOKYO RAINBOW PRIDE 2018

OUT IN JAPANの撮影会が行われた

『東京レインボープライド(以下TRP)』は、ロゴを作ったし、それを元に様々なグッズのデザイン展開も終わったので、実は卒業したつもりでいた。
50歳が目前のおっさんがいつまでも口を出すよりも、若い人たちで盛り上がっていったらいいと思っているのだ。
昨年はKと沖縄へ旅行に出かけていた。今年は高知に行こうと思っていたのだけど、前半にKが大分に帰ってしまったためKにとってすべて旅行になってしまうのと、『OUT IN JAPAN』の撮影会を会場で実施するということが決まり、結局思いとどまったのだ。
初日の会場は晴天に恵まれ、『OUT IN JAPAN』にも多数の撮影参加者が来てくれ、結局この日だけで100人の撮影を終えることが出来た。
こうしてお祭り騒ぎになって、LGBTに限らず様々な人たちが来てくれるTRPは、世の中的にも話題になってきていて年を追うごとに少しずつ拡大していっている。
LGBTの可視化を目的とするTRPの運動に賛同出来なかったり批判的な人たちがいることも知っている。実際に、2丁目に遊びに行っている人たちでさえも、TRPに来る人というのはごく限られた一部の人でしかないだろう。
「パレードなんかして、いったいなんの意味があるの?」『私たちはそっと暮らしたいだけなの・・・」
様々な意見はあるだろうけど、僕はこういった動きが世の中で拡大していき、地方のいろいろな場所でも起こり、ニュースや話題になり、少しずつこの国が変わってゆくことをとてもうれしく思う。
近い将来にこの国でも同性婚も遅かれ早かれ成立することになると思うけれども、これからの若い人たちにとって、同性婚という選択肢が増えること自体が、とてもいいことだと思うのだ。
みんなが平等に暮らせる世の中に。それが少しでも早く来るのを心待ちにしている。

緑溢れる小諸へ。

懐古園

布引観音

あぐりの湯こもろ

ゴールデンウィーク前半はKが大分に帰っていたため、後半は旅行に出たいと思っていたものの、東京レインボープライドでの写真撮影の話が決まり、旅行をキャンセルした。
そうはいっても、晴天続きのゴールデンウィーク、旅行好き人間としてはじっとしていることが出来ず、唯一予定を入れていなかった4日に、日帰りで小諸に向かった。
小諸は、小諸城の跡があり、古くからの家もそのまま使われていて趣のある町。なんとか一台だけ残っていたレンタカーを佐久平駅でゲットしておそばを食べて、先ずは懐古園へ。
懐古園は、小諸城の跡にある公園で、この時期、新緑がまぶしいほど輝いていた。桜の時期は相当綺麗に違いないし、もみじもあるので紅葉も素晴らしいだろう。
次に目指したのは、『布引観音』。その昔、強欲なばあさんがいて、そのばあさんを懲らしめるために牛に化けた観音様がばあさんの布をかっさらって逃げてばあさんは牛を追いかけ、挙げ句の果てにたどり着いた断崖絶壁の山。ばあさんはその山で改心し、やがて布とともに岩肌になったというようなマンガ日本昔話のようなお話の寺。
資料で見る限り、そんな山あるのかな?くらいに思っていたら、登れど登れどお寺は見えてこなくて、行きを切らせながら岩肌が見えるような断崖絶壁がやっと見えて来たかと思うと、あり得ないほど急な岩肌の上に、小さなお寺が出現した。
まるで日本とは思えない景色に圧倒させられる、小諸に行くならば絶対に行くべきスポット。
『布引観音』から車で5分くらいのところに、『あぐりの湯こもろ』という露天風呂のある温泉施設がある。ちょっとお風呂でも入って行こうか・・・くらいの気持ちで入ったら、思いがけず雄大な浅間山の見える絶景風呂だったのだ。
小諸は、新幹線を使わなくても、新宿のバスタから高速バスで行ける。高速バスの利点としては、値段が安いこと。デメリットは道の混雑に影響されること。ゴールデンウィークで1時間くらい遅れたものの、これだけ小諸を堪能できて片道2500円ならば大満足だと思って帰路についた。
⭐️懐古園http://www.kanko.komoro.org/midokoro/kaikoen.html
小諸城は、豊臣秀吉天下統一のとき小諸城主となった仙石秀久により完成された城。城下町より低い位置に城を築いた「穴城」は全国でも珍しい城で「日本百名城」でもある。仙石秀久が築いた「大手門」や野面石積みの石垣は400年前のまま当時の姿で残されている。
⭐️布引観音http://www.kanko.komoro.org/midokoro/nunobiki.html
「牛にひかれて善光寺」の伝説の舞台となった寺。小諸駅の西よりにある行基創建という天台宗の名刹。断崖絶壁にかかる観音堂(重文)に安置されているのが、牛に化身して、強欲な婆さまを善光寺に連れていき改悛させたという布引観音様。
⭐️あぐりの湯こもろhttp://www.komoron.com/agrinoyu/浅間山が一望出来る絶景露天風呂。

メリーポピンズ(ミュージカル)

僕がこの映画を観たのは今から7年前くらいだろうか。いつものようにBridgeのMと一緒にロンドンに行くことになり、ミュージカルの『メリーポピンズ』を観ることになって、その予習のために慌てて映画を観たのだった。
映画ももちろん最高なのだけど、ロンドンで観たミュージカルは本当に素晴らしく、最後にメリーポピンズが帰ってしまうところでは、胸がジーンとしてその演出も含めて完全にノックアウトさせられたのだった。
そして先日、Mから連絡があり、「いま日本でやってるミュージカルのメリーポピンズが素晴らしいよ!ロンドンと同じで、欠点を探すのが難しいくらいよくできてる!」と言うのだ。
調べると、渋谷のシアターオーブで5月7日までとあり、慌てて3日のチケットを手に入れ、メリーポピンズなんて知らないであろうKを引き連れて観に行った。
メリーポピンズは、バンクス家で働くことになった乳母なのだけど、彼女の子ども達への接し方や教育方針が独特で、何度見ても笑ってしまう。今まで教わってきた既成概念やこうであるという思い込みは木っ端微塵に吹っ飛び、常識や枠を超えていく自由な生き方を教えてくれる。
調べてみると、映画のメリーポピンズは1964年に制作されたそうだ。映画のジュリー・アンドリュースのチャーミングで不思議なキャラクターは、50年経った今も全く色あせることなく斬新であるし、きっとこれから50年経ったって、ミュージカルを上演されたりしているんじゃないかな・・・と思わせてくれる素晴らしい作品だった。

5番目6番目のバラが咲きはじめました。フランボワーズ・パニーユとアイスバーグ

フランボワーズ・パニーユ

アイスバーグ

家のほとんどのバラはオールドローズなのだけど、中には新しいバラもある。ピンクの絞りのような『フランボワーズ・パニーユ』は、2010年にチェコスロバキアで作られた新しいバラで、しっかりとした枝に数本の蕾がつく。花びらは、ピンク色の濃淡のストライプを持ち、まるで作り物かと思うような華やかなバラ。微香だかいい香りがする。返り咲き。
白いバラは『アイスバーグ』と言う名前で、1958年にドイツで作られた比較的新しいバラ。なぜか、オールドローズの愛好家にも好まれ、世界バラ会議では殿堂入りを果たしている。半八重で柔らかい枝にうつむくように咲く様は可憐だ。微かだが香りがあり、丈夫で四季咲きで12月になっても咲き続けている。はじめてバラを育てる人にはうってつけの品種。
この時期、家の中は、ベランダで咲き続けているバラがところどころに生けてあり、自分で育てた花に囲まれる幸せでいっぱいになる。

Kが帰って来た。

新玉ねぎ

しったか

海とお父さん

月曜日、Kが大分から帰ってくるので、いつものように羽田空港に迎えに行った。
今回は、僕も母に会いに行ったり、仕事もしたり、ベランダで植え替えをしたりしていたせいか、Kの不在の寂しさをそれほど感じることなく、あっという間に3泊が過ぎた。
飛行機を降りて来たKは、手に重そうな紙袋を抱えていた。
僕「その荷物、何?」
K「お母さんが、新玉ねぎくれたの」
家についた僕たちは、新玉ねぎを外の涼しいところに移し、他にも『しったか(もしくは、にななど呼ばれる小さな貝類)』を持って帰って来ていたので、Kに茹でてもらった。『しったか』は、どうやらKがお父さんと海まで捕りに行ったらしい。そういえば、数日前に海の写真が送られてきていたっけ。
僕「お父さんたち、僕のこと何か言ってた?」
K「ううん。特に言ってないけど、お父さん心配性だから・・・お金を貯めてるのかな・・・って聞いてた」
僕「貯めてないって答えた?」
K「貯めてあげて!」
お父さんとお母さんは、自分の最愛の末っ子を、仕事をやめさせて東京に連れて行ってしまった、年のはなれたおじさんである僕のことを、いったいどう思っているのだろう・・と思うことがある。地元の大きな病院の安定した仕事をいきなりほっぽり出させたしかも男性なのだ。そう簡単には受け入れることは出来ないかもしれないとも思う。
それでも、こうして自分たちが作った野菜や、海で一緒に捕りに行った小さな貝を持たせてくれることに、お父さんとお母さんのなんとも言えないやさしさを感じることが出来る。
「Kのことを、もっともっとたいせつにしないといけないな・・・」
Kには言わないけど、そう心に思ったのだ。