蚊を探して。

夜中にふと目覚めて寝返りをうつと、珍しく目が覚めていたKが僕が起きたのを確かめるように顔を覗き込んだ。
K「ただしくん、電器つけていい?」
僕「どうしたの?」
K「蚊がいるの…」
それからKは電器をつけて、メガネをかけて壁や天井を目を凝らして探しはじめた。
しばらくするとKは急に飛び上がって、音を立てて壁を叩いた。
K「捕まえた!」
そして、すぐに電器を消すと、5分もしないでいびきをかいて寝はじめた。僕は、明るさに目が慣れてしまったため今更眠れず、Kのいびきをしばらく聞き続けた。
翌日、また蚊がいたようでKに夜中に起こされたのだけど、その日は蚊をしとめることが出来ず、Kは悔しそうにベッドに戻った。
そして朝になって僕が起きて、キッチンでご飯を作りはじめても、一向に寝室から出てこないのだ。
ご飯が出来上がってどうしたのかと寝室を覗きに行くと、Kは、親の仇でも取るかのように真剣な表情で、まだひたすら蚊を探していたのだ。
その真剣な表情を見て、僕は大笑いした。
僕「蚊なんて、1日あったらどこかに飛んで行っちゃうから、今晩はもう大丈夫だよ!」
そんな僕の言葉は聞こえないように、真剣な表情でKはいつまでも蚊を探し続けていた。

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