LUCKY

昨年亡くなってしまったが、映画『パリ・テキサス』で有名なハリー・ディーン・スタントンが、90歳の偏屈な老人役で出ている映画『LUCKY』は、年老いてゆくひとりの老人の内面をじっくりと捉えた作品だった。
昔は海軍のコックを勤めていた90歳のラッキーは、毎日自分で淹れたコーヒーを飲み、柔軟体操をこなし、外出していつものダイナーで朝食を食べながらクロスワードパズルにいそしみ、いつもの店でミルクを買って帰って、ソファに座って毎日同じ番組を見ながら過ごしている。
家族や身よりもなく、ひとりで思うように生きてきたラッキーは、頑固で偏屈で、自分の考えをしっかりと持ち、誰かに何かを言われようとも意思を曲げようとはしない。
そんなラッキーの穏やかな毎日は、ラッキーを取り巻いている周りの人々のやさしさやあたたかさによって見守られている。
90歳という年齢になっても尚、人には過去の出来事をいつまでも思い返して悔やんでいたり、死に対する計り知れない『怖れ』があるのかと、映画を見ながらさまざまな思いがよぎった。
爆発したり、人が殺されたり、宇宙船がやってきたりなどしない。
静かでしみじみとした90歳の老人の毎日を描いた映画らしい映画。
デヴィッド・リンチが友人役で出ていて驚いた。
⭐︎LUCKYhttp://www.uplink.co.jp/lucky/

かぞくへ

ブリママが前にすすめてくれた日本映画『かぞくへ』を、ユーロスペースに観に行った。
孤児院で育った主人公のあさひは、ボクシングジムで働いている。かおりという女性と同棲をしていて、半年後に結婚を控えて結婚の準備をしている。
あさひには、結婚式に招待するような家族がなく、たったひとりの孤児院からの友人ひろとがいるのみ。
あさひは、ひろとのためを思って東京での仕事を紹介したのだけど、その仕事にあやしい気配が立ち込めてくる・・・。
この映画は、ふたりが結婚式に向かってゆくだけのささやかな毎日を描いているのだけど、言葉による説明がなく、役者の演技によって繊細な心情やストーリーの展開が紐解かれてゆく。久し振りに観た日本映画だったのだけど、せつねくてむせび泣いた。
日本にも、こんな風に素晴らしい映画を作る人たちがいたのかと嬉しくなった作品。
残念ながら、今は一部の劇場でしか上映していないので、どこかで機会があったらぜひご覧になってください。
⭐︎かぞくへhttp://kazokue-movie.com/

液だれしない醤油差し

『THE』というブランドの醤油差しを手に入れた。
今まで使っていた醤油差しは、綺麗なカタチをしていたのだけど、どれも液だれしてしまうものばかりだったのだ。
醤油をさす、その度にティッシュで拭く。というのがセットになっているようなものだった。
この醤油差し、何度も試してみたのだけど、少なく垂らしても、サーっと垂らしても、液だれすることなくきちんと容器に醤油が戻るのだ。
カタチ自体は、昔両親の家にあったものに似ている気がするけど、液だれをしない完璧なフォルムを研究し尽くして出来上がったカタチなのだろう。
⭐︎THEhttp://the-web.co.jp/products/soy-sauce-cruet

ブラックパンサー

先週末に観に行こうと思っていたものの、観たい映画が多すぎて今週末になってしまったマーベルスタジオの最新作品『ブラックパンサー』。
長い映画だということを忘れるほどスリリングで予想もつかない展開、最後まで食らいついて見入ってしまった。
ワカンダという王国の王が殺されて、息子のティ・チャラが若き王になる。世界から閉ざされた文明国であるワカンダを守るために、新たな戦いがはじまる。
それにしても、白人と黒人の世界が全く入れ替わってしまったかのように見事に黒人しか出てこない映画。
改めて、黒人ってなんでこんなにカッコイイのだろう・・・と思って見とれてしまった。
久しぶりのアンジェラバセットの存在感が素晴らしいし、ルピタ・ニョンゴがやっぱり美しい。
デートにも、友人と見に行くのにも最高の映画。
⭐︎ブラックパンサーhttp://marvel.disney.co.jp/movie/blackpanther.html

中川政七商店

蕎麦猪口(蛸足文様)

塩壺

どんぶり

中川政七商店のことは、もう何年も前から知っていたし、表参道のはずれにお店が出来た時も知っていた。
でも、表参道店は、通りを奥へラスチカスの更に先へ入ったところにあり、あの近辺に散歩に行くことはあっても今まで行かずにいた。
東京駅のKITTEにも入っているし、銀座SIXにも入っているみたいだし、いつでも行けると思いながらもそちらにも行けずにいた。
晴れた土曜日にKと渋谷まで散歩に出て、帰り道にふと思い立って『中川政七商店』に行ってみると、これがとても居心地のいい空気が流れていた。
「こんなものが欲しかった」
そんな風に思える、日本の本当に美しいものたちが揃っていて、見ていて飽きることがない。
用の美を兼ね備えた道具たちを見ていると、
「小さなものでもこれらの道具は、きっと誰かの毎日を幸せにしているに違いない」
そんな風に思える佇まいをしている。
Kとお揃いの蕎麦猪口に、塩壺、清々しいどんぶりと、塩壺に入れられる小さじなどのスプーン・・・。
気がつくと、久し振りに大人買いをしていたのだった。
⭐︎中川政七商店 表参道店http://www.yu-nakagawa.co.jp/top/

リメンバー・ミー

『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』のディズニー/ピクサー最新作であり、アカデミー長編アニメ賞及び主題歌賞受賞ということで、期待していた映画『リメンバー・ミー』を、上映初日に観に行った。
音楽を禁止された少年が、その秘密を巡る冒険に出るというお話。
メキシコという異国情緒あふれる設定や死後の世界を描いているところは、アメリカ人が好きそうな題材だなあと思う。
観る前から宣伝が何度も流れていたせいもあるからか、アメリカ的な予定調和が感じられ、ストーリーがとてもわかりやすすぎる…。
全体としては、とても良くできているアニメーション作品なのだけど、どうしたことか僕はあまり好きになることが出来なかった。
主題歌も、『This is me』の方が100倍好きだ。
長編アニメ賞は、『この世界の片隅に』のような映画が取って欲しいと、改めて思ったのだった。
⭐︎リメンバー・ミーhttp://www.disney.co.jp/movie/remember-me.html

母が家にやってきた。

週のはじめに母から電話があった。
母「あなた、木曜日の午後は早く帰れないの?
わたし、初台の友だちのところに行くから、
その後にあなたの家に寄ろうかと思って」
僕「仕事だけど、調整出来たら連絡するね」
いつもは再婚した父と一緒に会っていた母が、急に母だけで僕の家に来るということは今までなかったので、何か話しでもあるのかと思い、急遽半休を取り駅に母を迎えに行った。
前から気に入っている鳩森神社へふたりでお参りに行き、ゆっくりと歩いて僕の家に。
母はカフェインが飲めないので何を飲まそうかと迷っていたが、フルーツのジュースは甘いから好きじゃないと言うので炭酸水を出すと、美味しくないと言って笑った。
母「そういえば、○○銀行に貸金庫があるのよ。あなたにそれを言っておかないとと思って・・・中身はいくらあるのか全然知らないんだけどね・・・どうせそんなにないと思うんだけど・・・笑」
母「それと・・・金の棒がしまってあるのよ。延べ棒っていうの?よく金を買うと見本で出てくるようなやつ。そういうものもあるみたい」
僕「お母さん、貸金庫とか、金の棒とか、なんで急にそんなこと言うの?」
母「私ももう76歳だし、あの人も年だし、何があるかわからないから・・・もっときちんと紙に書いておくけど、何かあった時にと思って・・・」
自分たちの人生の終い方を考えはじめている母を思うと、なんだか急に寂しくなってしまう。若い時に苦労ばかりしていた母を思うと、出来るならば僕よりも長生きして欲しいと思う。
一通りそんな話をしたあとに、またゆっくりと歩きながら帰って行った。

人参の葉っぱ。

大根の葉っぱも好きだけど、人参の葉っぱも大好きだ。
春先によく出回る人参の葉っぱは柔らかく、味わい深い。
下に立派な人参がついた葉っぱは大抵かなり大きくなっているので、茎の下の方は硬いので、天ぷらにするか、ごま油でじゃこや油揚げや胡麻と一緒に炒める、ジェノベーゼのようにすりつぶしても美味しい。
水耕栽培のように育てられて、やっと伸びて来たような柔らかな人参の葉っぱが手に入ったならばサラダにすると、どこか遠くに感じる人参の香りが美味しさを底上げしてくれる。
柔らかな人参の葉っぱをこんもりとボウルに入れて、松の実を煎ってのせ、白ワインビネガーを少々、その3倍くらいのオリーブオイルをかける。全体をさっくりと混ぜ合わせた後に、塩を少なめにかけて全体をもう一度和える。
季節ごとの野菜や果物を、今年も逃さずいただきたいものだ。

好きな映画と嫌いな映画。

今年のアカデミー賞の予想は、当たっただろうか?
僕の予想は、おおまかなところではほぼ当たったようだ。
監督賞をダンケルクの『クリストファー・ノーラン』にしていたのが、シェイプオブウォーターの『ギレルモ・デル・トロ』になり、助演女優賞がアイ、トーニャ(まだ日本では未公開)の『アリソン・ジャネイ』になったくらいが予想を外したところだろう。
僕の周りの友人たちが、僕の大好きだった映画『シェイプオブウォーター』をこぞって観に行ったようだけど、今まで誰一人としてこの映画を気に入った人はいないようだ。笑
この映画はきっと、この映画特有のおとぎ話やファンタジーに入り込める人と、入り込めない人。この映画の世界に浸れる人と、現実のリアリティの世界に留まる人によって見方が分かれるようだ。
入り込めない人は、映画のどうでもいいような細部にばかりに気に取られ、最後まで映画の中に入りこめずに終わってしまう。
映画の好き嫌いは人の数だけあって、正しい意見などこの世には存在しないのだろう。人と意見が違うことは、話していると時々衝突を生むこともあるけど、実はとても面白いことで、その違いを話すことが僕は好きだ。
今年のオスカーを振り返って見ると、作品賞・監督賞ともども、『シェイプオブウォーター』だった。昨年アメリカで公開された映画の中で、映画業界のトップに立つ6000名以上からなるアカデミー会員が選んだ映画は、『シェイプオブウォーター』だったのだ。
アカデミー賞の作品賞をずらっと並べ立てて見ても、「なんでこの映画が作品賞なの?」と思う映画が少なからず見受けられるのは、自分の感じ方と、アカデミー会員の評価の違いやその時代の空気を考えるきっかけになる。

バラの枝の誘引。

このところの春の陽気で、急にバラの芽が動き始めた。本来ならば1月や2月のもっと寒い時期に行うものなのだけど、今こそやらねばと重い腰を上げてバラの枝の誘引を行った。
なぜ寒い時期がよいかというと、バラの葉っぱが落ちていた方が、枝を望む場所に定めやすいのと、休眠状態にある時期の方が枝を曲げやすく折れることも防げるから。また、棘も寒い時期の方がなぜか手や洋服などに絡み付きにくいようなのだ。
早朝から素手で行ったバラの誘引は、ところどころ手を棘で傷つけられてしまい、帰って来たKが心配してクリームを塗ってくれた。
それでもこれで、春の満開のバラを思い浮かべながら、毎日の成長を見守ってゆくことが出来るようになった。園芸をしていると、季節が目の前でぐんぐん動いてゆくのをリアルに感じられる。
これから暑くなるまでの間は、園芸家にとって毎日が夢の園にいるような気分なのだ。