エンジェルズ イン アメリカ

もはや20年くらい前だろうか、東京ではじめて行われた公演にも行った懐かしい芝居『エンジェルズ イン アメリカ』。
今回はBridgeのMにすすめられて、英国ナショナル・シアターが厳選した世界で観られるべき傑作舞台を、こだわりのカメラワークで収録し各国の映画館で上映するプロジェクト『ナショナルシアターライブ』を観に行った。
『エンジェルズ イン アメリカ』は、エイズが死の病とされていた80年代のゲイを真っ向から描いた映画。
あの時代特有のエイズの絶望的な恐ろしさや、同性愛者が罪深いために死の病が流行したようにささやかれていた不条理な世界観、そしてそんな世界の中で生きる人々が見事に脚本で描かれている。
俳優陣が本当に素晴らしい。アンドリュー・ガーフィールドが、とにかく凄まじいゲイを演じているし、久しぶりに観たネイサン・レインも、相変わらずの怪物ぶり。
とにかく長い芝居なのだけど、演出が素晴らしく、とてもわかりやすい舞台美術と装置の展開なので、4時間近い時間を全く感じさせない。
素晴らしい演出だったのだけど、僕にとっては何もかもがわかりやすすぎて、勝手に僕の中に抱いていた『エンジェルズ イン アメリカ』の複雑さや壮大さが感じられず大満足といったものではなかった。
改めて素晴らしい脚本だと思ったので、またいつか他の演出の『エンジェルズインアメリカ』を見てみたいと思ったのだ。
⭐︎エンジェルズ イン アメリカhttps://www.ntlive.jp/angelsinamerica

春はすぐそこ。その2

河津桜

蝋梅

千駄ヶ谷にある鳩森神社の、『河津桜』が咲き始めた。
ソメイヨシノよりも少し濃いピンク色は、寒さの中でももうすぐそこまでやって来ている春を知らせてくれている。
まるで蝋で作ったかのような渋い黄色の半透明の花は、『蝋梅』。
この地味な花を家に飾る生け花というものの、なんと奥ゆかしく美しい文化だろうと思う。
家に入った人はきっと、「あれ?この仄かな香りはどこ?」と思い、やがてその人工物のような半透明の美しい黄色の花を見つけるのだろう。

見守ってくれている人。

コスタリカから帰って来て東京の寒さにすぐに慣れることが出来ず、ちょっと寒気を感じて僕が体調を崩してしまった日があった。
そんな日はKが僕を気遣ってくれて、朝ご飯を僕に作らせないようにとパンを買いに行ったり、洗濯をしてゴミを出したりしてくれて、会社に行ってもLINEで何度か心配しているメッセージが入った。
しばらくして昨日は、昼間にKとLINEでやり取りしていて、晩ご飯は何がいいかと聞くと、「しゃぶしゃぶかな」と言われ、帰り道にスーパーで牛肉と野菜を買い、家で出汁を取り、慌てて野菜も切り晩ご飯の準備をすべて整えて待っていたのだ。
するとKからLINEが入り、「今から帰るけど頭が痛い・・・」とのこと。
帰って来たKは、そのままソファに倒れ込むように横になり、ブランケットをかぶって眠ってしまった。
僕は心配しながらも、「お腹すいたなあ・・・」などと思いながら9時になる頃、Kがやっと目覚めて、「ちょっと食べてみる・・・」と言うのでふたりでしゃぶしゃぶを食べはじめたのだけど、案の定すぐに食べられなくなってしまった。
シャワーを浴びて、「ただしくん、ごめんね」と言ってそのまま寝室のベッドで眠りに入り、僕は僕で、ひとりでしゃぶしゃぶを食べる気にもなれず、早々に片付けて、少し仕事をしてからベッドに滑り込んだ。
そして朝目覚めると、頭の痛みもなくなっていたKは、朝から元気でほっとしたのだった。
ふたりで毎日を過ごしていると、いつだってふたりが元気でいられるわけではなく、時々どちらかが頭が痛かったり、風邪をひいてしまったり、疲れてしまったり、体調や精神的に優れない日も普通にやってくる。
幸いなことに、僕たちはそういう日がお互いにずれることが多いようで、元気な方が弱っている方を思いやりつつ、こうして毎日をなんとか過ごしていける。
こうして文章にしてしまうと当たり前のことのように思えてしまうのだけど、いつもそばで家族が見守ってくれているということは、信じられないくらいありがたいことだと、改めて思ったのだ。

志摩マリンランド

2種類のペンギン

海女さんの餌やり

マンボウ♡

志摩には、賢島を臨む景色とか、横山展望台からの眺め(ただ今改築中)とか、スペイン村とか、ちょこちょこ観光地がある。
スペイン村には興味がないので、今回は『志摩マリンランド』に行ってみることにした。
水族館であれば鳥羽にある『鳥羽水族館』が有名なのだけど、入場料が2500円もする。
いつも鳥羽水族館の前を車で通りかかっても、ふたりで5000円を払って入るほど水族館に行きたいわけでもなくまだ行ったことはない。
『志摩マリンランド』の入場料は1400円。全く期待をせずに朝一番で行ったのだけど、僕たちは結構楽しむことができた。
入り口に、2種類のペンギンが沢山いて出迎えてくれるのからはじまって、中に入るとひとつひとつの水槽ごとに珊瑚礁に棲む様々な魚たちがいる。
沖縄なんかで見ることのできるルリスズメダイとか、ニモもいる。途中、ウツボやタコ、タツノオトシゴ、浮遊するクラゲを見ながら、なんだか不思議な気持ちになる。
決まった時刻に海女さんの魚たちへの餌やりがある。巨大なドーナツ型の水槽を大きな魚がすこい速度で泳いでいて、その中に海女さんが餌の入った籠を持って入って行って魚たちに餌を与えるのだ。
この水族館の一番の見ものは、巨大なマンボウ。
ここにいるマンボウは1.5メートルくらいなのだけど、マンボウは成長すると4メートルにもなるようだ。ほとんど顔しかない姿で泳ぐ姿はなんとも愛嬌がある。(マンボウの身体の後半の尾の部分は退化してしまったそうだ)
「マンボウが見たかったら、志摩マリンランド」。そう覚えておくといい。(誰もマンボウなんか興味ないか…)

ONSENオーベルジュPROVENCE

アクアパッツァ

アワビのグラタン

伊勢エビ

ここ3年くらい毎年のことだけど、暦が変わる節分の前までに伊勢に行くことにしている。
夕方の新幹線で名古屋に向かい、名古屋で晩ごはんを食べて宿泊をして、翌朝近鉄で伊勢神宮に向かい参拝をして、そのついでにレンタカーを借りてドライブをし、志摩に一泊するのがお決まりのコースになっている。
志摩は2年前にサミットが行われたけど、周りにレストランもあまりないことから、宿泊先で晩ごはんを食べることになる。
昔はじめて志摩に行った時は、有名な『志摩観光ホテル』に泊まり、アワビや伊勢エビを食べたのだけど、当時の恋人と僕はふたりともそれらの料理をそんなに美味しいと思わなかったのを覚えている。
ホテルは素晴らしかったけど、なんというか、想像していた味の域を越えなかったのだ。
それ以来、志摩に行く時は、毎回行ったことのない新しいホテルを選ぶところからはじまる。毎回ホテル選びが成功することはなく、昨年のホテルは酷い食事だったのだけど、そんな旅行の失敗もひとつの醍醐味だと思うようにしている。
今回、久しぶりに『志摩観光ホテル』にしようかと直前まで迷ったあげく、結局『ONSENオーベルジュPROVENCE』というレストランがやっているような宿泊施設に泊まることにした。
海はまだ少し遠く、線路のすぐそばに見つかったオーベルジュの建物は、一見すると「あああ、失敗だったかも・・・」と思わせるような作りで不安を覚えたのだけど、部屋はこざっぱりとしていて浴場も清潔でそんなに悪くないことがわかった。部屋からは少し遠くに海が見える。
そして何よりも食事が思いのほかよかったのだ。
よかったと言っても、高級フレンチのような豪華なものではなく、地元の食材に拘り抜いたシェフの心配りを感じられるお料理。海老や魚が入ったアクアパッツァや伊勢エビやアワビも、豪華ではなくカジュアルに料理してある感じ。
何よりも素晴らしかったのは、朝ごはん。こんなに素晴らしい朝ごはんは今まで食べたこともないくらい、お客さんに対する細やかな愛情で満ちていたのだ。
自家製のヨーグルトや、地元の新鮮な卵、パンも自家製だし、地元の野菜がふんだんに使われていたり、カレーも野菜と香辛料で丁寧に作られている。
週末のためか全館満室だったようだけど、どのお客さんも朝ごはんに圧倒されているのがわかった。フランスのオーベルジュという名前をあえて語っている宿の思いは、しっかりとみんなに届いているようだった。
⭐️ONSENオーベルジュPROVENCEhttp://www.kashikojima.com/provence/

神宮へ。

てこね寿司

伊勢神宮では毎年、お神札をもらうようにしている。
家の小さな神棚に、伊勢神宮のお神札と一緒に地元の鳩森神社のお神札を飾っている。今年も、古いお神札を家から持って来て神宮に返し、新しいお神札をいただくことが出来た。
伊勢神宮に行っていつも驚くことは、参拝に来ている人の多さだ。
かなり年をとって脚の不自由な老人や車いすの人が懸命に参拝する姿を見ていると、それらの人たちが生きてきた道のりと今背負っているものや気にかけているであろう家族がいるのかもしれないと想像してしまう。
参拝のあとの楽しみは、おかげ横町でのランチなのだけど、今年は『てこね寿司』をいただいた。
来年もまたこうして、神宮に参拝に来られますように。

名古屋東急ホテル

もしも名古屋で泊まる予定があったら、名古屋東急ホテルをお勧めする。
昔は名古屋に来ると、毎回駅の上のマリオットを利用していたのだけど、昨年調べ直して、食事や飲みに便利な栄にある東急ホテルに泊まって驚いたのだった。
会社の割引もあったせいか値段は安く、室内はクラシックでしっかりしていて、ホテルマンはよく気がつき対応も温かい。
このホテルで素晴らしいものの一つは、『なだ万』の朝ごはんが味わえること。
お粥と一緒に煮物や焼き海苔をいただくと、日本の朝ごはんは改めて素晴らしいと思わせてくれる。
今年はなぜかスイートルームにアップグレードという幸運をいただいた。僕がこのホテルを気に入っていることを、フロントの人が感じ取ってくれたのかもしれない。
⭐️名古屋東急ホテルhttps://www.nagoya-h.tokyuhotels.co.jp/ja/sp/index.html

ふじ原

若竹煮

名古屋コーチンの唐揚げ

とんかつ

夕方の便で、名古屋へ。
『ふじ原』は、ジャンルで言うと高級居酒屋。
店内は満席で、席が空くと次々とお客さんが入ってくる。
料理は、和食の基本がきちんとした京料理のように感じた。甘鯛があったり、ノレソレやモロコなんかもあるためより京都を感じるのかもしれない。
料理はコースではなくアラカルト主体。焼き物、揚げ物など、ジャンル別に分かれており、季節やその日の入荷によって変わるらしい。
お造りは、東京で食べる和食屋さんのようなもの。このお店で特筆すべきは揚げ物だろう。
とんかつは厚みがあり柔らかくとても美味しかった。
店内は始終大将の大声が鳴り響いている。お弟子さんやサービスをする若者たちにしょっちゅう檄を飛ばす。
そんな声を聞きながらKは、
「僕だったらこのお店、すぐに辞めちゃうと思う…」とつぶやいた。
女将さんは素晴らしいし、お料理はとても美味しいし、大将は激しいけど、真剣な人なのだろうと僕には思える。
値段はメニューに書いてないのだけど、トータルではかなり高いと思う。名物大将がいる名古屋の名店のひとつだろう。
⭐️ふじ原
052-959-5513
愛知県名古屋市東区泉1-14-23 ホワイトメイツ 3F
https://tabelog.com/aichi/A2301/A230103/23059862/

スリー・ビルボード

映画『ファーゴ』で、不思議な存在感を見せつけてアカデミー主演女優賞を獲得したフランシス・マクドーマンド主演の作品『スリー・ビルボード』は、打ちのめされるような圧倒的な作品だった。
アメリカのミズーリ州の田舎町、ほとんど車の通らないような一本道の3つの大きな道路看板に、ある日、広告が掲げられる。
広告を出したのは、ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)という疲れ果てた労働者階級の初老の女。7ヶ月前に家族を失った女は、怒りと復讐に燃えて、町中を席巻してゆく…。
怒りや憎しみは、次の怒りや憎しみにつながってゆく。女性蔑視、人種差別、セクシュアルマイノリティ差別、白人優位主義…今現在のアメリカが抱える問題を見事に凝縮したような透徹した監督の視点が映し出される。
先の読めない脚本に翻弄されて、憎しみに燃えるミルドレッドを固唾を飲んで見守り続け、見終わった後に全身の緊張感が抜けて、心から拍手を送りたい気持ちになった。
これが、映画だ。
こんな映画、今の日本では作れないだろうなあ…
アカデミー主演女優賞、助演男優賞、作品賞を取るかもしれないと確信させられる素晴らしい作品。
⭐️スリー・ビルボードhttp://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/sp/