花咲くころ

久しぶりに、素晴らしい映画を観た。
岩波ホールで上映している『花咲くころ』は、ジョージアという国(昔はグルジアと呼ばれていた)の映画。
1992年、ソ連から独立したジョージアは、内戦や紛争が続いていた。そんな不安定な情勢の首都トビリシ。エカという高校生の少女とその親友ナディアの毎日を軸に、ジョージアの空気感が描かれる。
この映画は、いわゆる『映画好き』な人にしか受けないだろう映画だ。わかりやすいハリウッド映画岳がお好きな人にはおすすめできない。昨今の日本に氾濫するテレビドラマのような説明過多な映画の真逆を行っているのだ。
静かな映像の中に流れる燃えるような少女の情熱を読み取りたいと思うならば、とてもおすすめ出来る映画。言葉による説明はまったくなく、淡々とした映像が紡いでゆくものは、ジョージアの片隅に暮らす普通の人々の生活。
でもそこに描かれる人々の息づかいからは、今の時代の日本人が見ても胸に迫る真実が確かに感じられるのだ。
それにしても、グルジアの映画を観ることの出来る日本って、素晴らしいではないか。
⭐️花咲くころhttp://www.hanasakukoro.com

グレイテスト・ショーマン

主人公のP.T.バーナムは、19世紀半ばのアメリカでショービジネスの原点を築いた人物。この作品は、バーナムの波乱万丈な人生を描いたミュージカル映画。
『ラ・ラ・ランド』で2016年度アカデミー賞の主題歌賞を受賞し、世界の注目を集めたベンジ・パセック&ジャスティン・ポールに、歌って踊れるヒュー・ジャックマン主演ということで、かなり前から期待していた。
結論から言うと、映画としてはかなりベタな演出だった。
映画関係者や評論家の間ではあまり評判はよくないようなのだけど、それでもこの映画は、僕は一見の価値ある映画だと思っている。
何が素晴らしいって、曲がどれもこれも本当に素晴らしいのだ。
一度聴いただけでちょっと涙ぐんでしまうようなメロディーは、ミュージカル映画としてはよく出来ていると思う。
華やかな踊りや演出は、これでもか?これでもか?と畳みかけてくるけど、勿体ないのは脚本というかストーリー展開。テレビを見ているかのように次の展開がわかってしまうところ。
でも、たとえ先がわかったとしても、ミュージカル気分を味わいたい人には、きっと楽しめるであろう作品。
ヒュー・ジャックマンは、なんだか急に年をとってしまったように感じだけど、調べたら「そりゃあそうだよな…俺と同じ年だよ…」と思い、今まで以上にもっともっと好きになった。
愛するミシェル・ウイリアムズは、ちょっとはまり役ではなかったか、出番が少なかったかな?
エキゾチックなゼンデイヤが容姿も歌も素晴らしい。
アカデミー主題歌賞『This is me』をはじめ、素晴らしい曲の数々を聞きたくて、サントラを買ってしまった。
⭐️グレイテスト・ショーマンhttp://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/sp/#/boards/showman

田亀源五郎『弟の夫』の世界展

神宮前二丁目のirodoriの二階において、『田亀源五郎『弟の夫』の世界展』が開催される。http://webaction.jp/action_blog/2018/02/
展示の手伝いを頼まれたので、ここに告知させていただきますね。
NHK『弟の夫』ドラマ化を記念し、原画及び複製原画、関連資料などが間近で楽しめる作品展を開催!(irodori/カラフルステーション2階 東京都渋谷区神宮前2-14-17 )
● ネーム原画から下絵、ペン画、そして完成原稿データによる複製原稿まで、その筆致をたどる資料を展示。日本国内では一般流通していない外国語版コミックス『弟の夫』のほか、「月刊アクション」誌面で掲載されたドラマ化最新情報なども復刻ポスターとして掲示。
⭐️【トークショー】
● 日時:2月24日(土)16時〜17時半
● 登壇者 田亀源五郎(漫画家)/ 須崎岳(NHKエンタープライズ プロデューサー)
     ○モデレーター 松中権(認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表)
● 場所: irodori/カラフルステーション 東京都渋谷区神宮前2-14-17
● 入場料:無料
● 要予約:お申し込み殺到により、トークショーの受付を終了いたしました。当日18時半からの懇親会のみの参加は可能となります。
⭐️【展示】
● 開催期間:2月26日(月)〜3月24日(土) 
      16時〜20時(日曜定休 ※1階が飲食店となっている都合上、予約状況により開催時間が若干前後する可能性がございますので御了承ください。)
● タイトル:田亀源五郎『弟の夫』展
● 場所:irodori/カラフルステーション2階 東京都渋谷区神宮前2-14-17
● 入場料:300円

いつだって、変われる。

大人になってから思い出す限り、お酒を飲まなかった日がない。
実際には、社会人になって2週間入院した間はお酒を飲まなかったし、それ以外にも仕事で徹夜してそのままプレゼンなどの時には飲んでいなかった。
でも、それ以外はどんなに朝起きた時に二日酔いだろうと、夜になれば当たり前のようにお酒を飲んで生きてきた。
今思うとそれは、すべて父親から受け継いだ習慣であり、幼い時から『酒を飲むのが男。酒に強いのが男』というイメージが頭の中に刷り込まれていたからだと思う。
毎日のように二丁目でお酒を飲んでいた時に思っていたことは、「お酒を飲まずに、どうやったら酒場に居られるのだろう?」ということだった。周りがお酒を飲んでいるのに、お酒を飲まずに二丁目のバーにいることは、僕にはとても出来そうになかった。
実は今、2週間という僕にとっては信じられないような長期間において、お酒を飲めない状態にある。(身体が悪い訳ではないのでご心配いりません)
あと数日でお酒を飲めない期間が終わるのだけど最初は、「2週間お酒を飲まないなんて絶対無理…」と思いながらも、Kも一緒にお酒を断ってくれているので、意外にも断酒を続けることに成功している。
断酒を続けるコツは、食事の時にもお酒を飲みたくなるような店には行かないことなのだ。(これが結構難しくて、飲食店はお酒代が店の売り上げに直結するため、手を替え品を替えお酒が飲みたくなるようなメニューや広告に溢れている)
今改めて思うことは、『人間、いつだって変われる』ということ。
お酒を飲むのが当たり前だと信じて疑うこともなかった僕でさえも、お酒を飲まなくても普通に生きていけるということを知ったのだ。
30年くらい当たり前に思っていたことも、それは勝手に自分が信じて作り上げていた常識であるだけだった。
今度の火曜日に、久しぶりに口にするお酒を何にしようかと考えを巡らせながら、今から心待ちにしている。

IZIPIZI

かけ心地バツグン

折りたためる

年をとって、一番不便に感じることは、なんといっても老眼だろう。
ほんの数年前までなんともなかったのに、今ではレストランなどの暗い場所で文字が見えづらくなり、本の細かい文字も見えなくなってしまった。
見えづらいと、見ることや読むこと自体が億劫になり、昔よりも本から遠ざかってしまったように思う。
数ヶ月前に、近眼で作ったメガネを老眼用に作り変えてとても便利に使っているのだけど、そのメガネを年中持ち歩いているわけではなく、ふと家に忘れてしまい、外出先で見えづらくて困ったようなことが何度かあった。
そんなある日、ふと入った丸の内のコンランショップでかわいい老眼鏡を見つけた。
IZIPIZIというパリのブランドのもの。
色は黒からグレーや鼈甲色まで数種類あって、形もシンプルなウエリントンと写真のような丸メガネがある。
何よりも気に入ったのは、その老眼鏡らしくない佇まいだろう。それに、コンパクトにたためてかけ心地もいいこと。
世の中、今までなかったような素敵なデザインのものがどんどん増えてきていますね。
⭐︎IZIPIZIhttp://shop.element-yabui.com/?mode=grp&gid=1256313

雲井窯

1.5号炊き

20年近く使っている3号炊き

2号炊き

雲井窯の土鍋を使いはじめて、かれこれ20年くらいになるだろうか?
雲井窯の中川一辺陶は、文久元年に京都の清水において創業以来、料理人に愛され続けて来たようで、京都の割烹料理屋さんでごはんをいただく時に注意して見ていると、たいていこの中川一辺陶の土鍋でごはんを炊いている。
はじめに買ったのは、黒い三号炊きのもの。その当時で3万円くらいしたごはん炊き専用の土鍋は、勇気のいる買い物だったけど、この20年壊れることなく我が家の食卓でほっこりと美味しいごはんを作ってくれている。
その後、いわゆるふつうの鍋を買い、しゃぶしゃぶ用の鍋を買い、2号炊き用の鍋を買い、おかゆ用の鍋を買い、香味鍋を買い、久しぶりに1.5号炊き用の土鍋を買った。(自称、土鍋番長)
2号炊きでは、毎日の食事にはほんの少し多く、1号炊きでは、Kが大食いのためいつもほんの少し足りないようで、気兼ねする感じが嫌だったのだ。
果たして家ではじめて炊いた1.5号炊きのごはんは、お米がツヤツヤに輝いて、ふっくらとしてこの上なく美味しかった。
今回もちょっと高い買い物だったけど、僕にとって、パンでも麺でもなく美味しいごはんは、何よりも大切な食の要なので、つくづく買ってよかったと思っている。
⭐︎雲井窯http://www.kumoigama.co.jp/

ゲット・アウト

昨年公開された時に予告編を観ていて、なんだか恐そうな映画だったので見るのをやめていたのだけど、アカデミー賞の作品賞監督賞候補に上がって来ているので、渋谷のヒューマントラストに恐いけど観に行ってみた。
黒人の青年が白人の彼女の実家を週末に訪問するというありきたりの設定なのだけど、そこから先が息もつかせないほど見事なストーリー展開で、最後まで鷲掴みにされたまま持って行かれる。観終わって、この作品が脚本賞をとってもおかしくないと思ったほど。
映画は、ホラーではなく、サイコサスペンスなのだろうか?
黒人の男の子が白人だらけの実家に連れて行かれて・・・という話の展開は、誰しもが人種差別のイメージを持つに違いない。アメリカ南部の未だに残る黒人差別の風習・・・
それを逆手に取って、面白いくらい見事にストーリーは展開してゆく。
僕は、恐いというよりも、途中で吹き出してしまった。
どこかコミカルで、観終わった後に心地よいエンターテイメントを味わわせてくれたことに拍手を送りたくなるような映画。
⭐️ゲット・アウトhttp://getout.jp

ぼくの名前はズッキーニ

アカデミー長編アニメーション部門ノミネート、ストップモーション・アニメーションの傑作という話題作を、新宿ピカデリーに観に行った。
描かれているのは、まさに現代の親子の問題で、様々な問題を抱えた親が、それぞれの理由で子どもを育てられなくなり、孤児院に預ける。子どもは子どもで、それぞれに深い傷を抱え、周りの友人や先生たちに支えられながら毎日を生きてゆく。
観終わって感じたことは、これをもし実写でやるとすると、結構残酷でシュールな話になってしまうかもしれないということだった。
ストップモーション・アニメーションの作り出す子どもたちは、素朴でどこかぎこちなく、創造力を膨らませてくれる。ひとコマひとコマ撮影して編集する時間を考えると気が遠くなるけど、これほど素晴らしい作品にまとめ上がっのは、作者のイメージが細部にわたりしっかりとあったからだろうな。
⭐️ぼくの名前はズッキーニhttp://boku-zucchini.jp

バラの植え替え。

ベランダでバラを育てていて一番大変な作業は、コンテナの植え替えだ。
バラの植え替えは、バラが休んでいる冬の間にやらなければならないため、凍えるような冬の日にかじかんだ手をこすりながら、バラの棘に刺されることになるのだ。
このマンションに引っ越して来た年に新しい鉢に植え替えたのだったけど、2年も経つと鉢の中は根がびっしりとはびこり、新しい根が伸びてゆくスペースがないのがわかる。
新しい根が伸びないということは、それだけ花の数も咲かせられず、花の大きさも小ぶりにならざるを得ない。植物の地上と地下は、基本的には同じ大きさを反映しているからだ。
久しぶりに東京で過ごす週末はどうやら暖かいらしいので、どうしてもバラを植え替えようと思い、気乗りのしないまま午前中にはじめた。
奔放に伸びた3メートル以上ある枝を集めて紐でまとめて縛り、テラコッタの重いコンテナを運び引っこ抜く。
丁寧に付いている土を落としゴミ袋に入れ、今年からは保水性の高いプラスチックの鉢に土を入れて植えつけた。
全部で6つあるコンテナのうち2つ終わって、3つ目のバラは根元までびっしりと棘が生えていて、雑巾で枝を持っても容赦なく指を刺してきた。
その痛みときたら、「もう2度とバラなんか育てない!」と叫びたいほど超痛く、そのまま座って泣きたくなった。
「ああ、こんなこと、もうかれこれ20年くらいやってるんだよなあ…
世の中にバラがなかったら、人生はどんなに穏やかだっただろう…」
そんな風に思いながらもなんとか目標の6本のバラの植え替えを終わらせた。
仕事から帰ってきたKに、棘に刺された手や指を見せながら、どんなに大変だったかをとうとうと話したのだけど、Kにとっては全てが笑い話のようで、ケラケラ笑ってばかりいる。
今年一番しんどい作業でヘトヘトになったけど、これで美しい花が見られると思えば、やっぱり頑張って植え替えをしてよかったとつくづく思ったのだった。

ゲイの僕に、ゲイの仕事。

一昨年だっただろうか、会社の一階受付の広場で『OUT IN JAPAN』の展示を行った時に、自分の写真とともに部署名まで貼り出された僕は、実質上カミングアウトをしたわけなのだけど、カミングアウトをした後に、何か変化や嫌なことがあったかというと全くそんなことはなく、変わらない会社生活を送っていた。
そんなある日、新しい仕事のオファーが来たのだけど、内容をよく読まずにアサインして打ち合わせに出る直前に資料に目を通すと、ゲイ関係の仕事だったのだ。
一瞬、「炎上して面倒なことになったらどうしよう…」と頭の中をよぎったのだけど、気を取り直して打ち合わせに参加した。
後輩のノンケのコピーライターがコピーを書いて持って来ていて、それを見ながら打ち合わせがはじまった。
『男同士だって、きゅんきゅんしたい』
『四面ホモ』
『男と男の恋は、健気で美しい』
僕「あのー、ゲイのこと、いや、俺のこと、バカにしてるのかな?」
後輩「いや…そんなことないですよ。僕なりに男同士の恋愛って難しいだろうな…とか考えて書いたんです…」
僕「男同士の恋愛も、男と女の恋愛も、基本的にはおんなじだから。どっちが健気で美しいとか、ないからね…」
後輩「す…すいません!」
僕「それに、四面ホモって…四方をホモに囲まれている状況なのかもしれないけど、ホモって言葉、今はテレビでも広告でも使えないって知らなかったのか?」
後輩「えっ⁈ 使えないのは、ゲイじゃなかったんですか?」
僕「あのさ…今の時代、僕らの職業なら常識なんだけど…」
後輩「あちゃー、じゃあこれもこれも、ゲイにしときます!」
そんなこんなで僕は大笑いしながら打ち合わせをしたのだけど、どうやらプレゼンでは、僕に自分がゲイだということを現場で言って欲しいという要望まで出た。
僕「まあ、それで向こうが興味持ってくれるのならいいですけど、仕事ではじめて会う人に、ゲイです!とかって言うの、はじめてですね…」
さてこの仕事、この先いったいどうなることやら…。