Kのお父さんとお母さん。

夜にベッドで本を読んでいたら、ゴールドジムから帰って来てシャワーを浴びたKが隣に来た。
「ただしくん?
ねぇ、ただしくん?」
「どうしたの?なんかあった?」
「実はね…
さっきお兄ちゃんから電話があってね、
しばらく話したんだけどね…」
「お兄さん元気だった?」
「うん。お父さんの病気のこととか、色々話したの」
「それで?」
「お父さんとお母さん、もう年を取って来たから、病院に通うのも今の田舎だと大変だから、別府に引っ越そうという話があるのは前にしたよね?」
「うん。聞いた。止まったままだよね」
「お父さんが、引越したらお金がかかるから心配してて…
それで、お兄ちゃんがね、僕たち三人兄弟で少しずつお金を出してあげよう…と言ってるの」
そう言ってKは、お兄さんからのメールを見せてくれた。
「このお金は、Kちゃんが貯金してあるからあるんだけどね、これからお父さんとお母さんのためにお金もいるし、今後の暮らし方をきちんと考えないといけないと思ったの…」
「そうだね…うちの親も80歳が見えて来てるし、いつ何があるかわからないもんね…」
「うん…ただしくん…
ちゃんと聞いてるの?」
僕は、これから年老いてゆく、まだ会ったこともないKのお父さんとお母さんのことを考えていた。
近い将来に、ふたりには予期できない出来事が立ち上がってくるかもしれないと思ったのだ。
そんな話を僕にしたら安心したのか、Kはいびきをかいて一度も起きずに朝まで眠っていた。
僕はなんだか眠れずに、朝方にうつらうつら眠気とともに2時間くらい寝ただろうか。
朝起きてKに、こう話した。
「Kちゃんのお父さんとお母さんは、ただしくんのお父さんとお母さんだからね。
ふたりでたいせつにしようね」
そんな僕の話を聞きながら、Kの瞳の奥に、明るさが戻って来るのが見えた。
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