ありがとう、トニ・エルドマン

カイエ・デュ・シネマ、スクリーン・インターナショナル、サイト&サウンドなどの各国の映画誌が、2016年のベスト映画にしたという『ありがとう、トニ・エルドマン』は、ところどころ大笑いして時々泣ける、父と娘の不思議なドイツ映画だった。
ユーモアがあり、子どものように無邪気な父親ヴィンフリートは、遠くルーマニアのコンサルタント会社で働く娘イネスのことが心配でたまらない。イネスは仕事のことばかりで年老いた自分の母親に会うことさえしないし、たまに帰郷しても仕事の電話ばかりしていて家族と話すこともない。
ある日、遠くブカレストで離れて暮らす娘の元へ父親が突然尋ねてくる。父親は娘が心配なあまり、娘の仕事や友人たちの世界に現れる。突如別の名前『トニ・エルドマン』として・・・。
父親が、時々へんてこな入れ歯をつけたり、仮装したり変装したり突拍子もないことをする人なのだけど、その純粋で不器用な愛情と、仕事のことばかり考えていておよそ幸せからはほど遠く人生が狂いはじめているのにそれに気づかない娘との対比が素晴らしい。
映画を観ていると、自分が若かった頃に父や母に心配されていた日々のことを思い出した。
人生には、かけがえのないたいせつなものがすぐそばにあるのに、若い時には多くの人はそれに気づかず、ただ忙しく慌ただしく過ごしているうちに年を取り、たいせつなものはなんだったかがわかり、自分の人生の終わりが近づいてくることを知るのだろう。
笑いに満ちていて破滅的で、せつなくも美しい父と娘の物語。
☆ありがとう、トニ・エルドマンhttp://www.bitters.co.jp/tonierdmann/index.html

四谷 ふく

海老出汁のゼリー寄せパリソワール

オコゼとアボカドの天ぷら

鮎と枝豆のご飯

友人のGに食事をごちそうになったのだけど、そのお店が、東京で食べた和食店の中でも久しぶりにとても美味しかったので、ここにご紹介したい。
『四谷 ふく』は、四谷と書いてありながら、場所は新宿御苑と四谷三丁目の中間にある。どちらかというと、新宿御苑の駅が近いように思う。昔有名だったサンミュージックの真裏と言えばわかりやすいかもしれない。
店は、こんなところに?という場所の地下で、ソムリエだったご主人が板前で、女将さんはサービスをしてくれる。アルバイトの女性もとても感じが良い。
コースは10300円と書いてあるけど、これだけのお料理が出て来て10300円は、ちょっと驚きのお得感だ。
料理は全般的にお魚とお野菜を中心に揃えられており、お魚もその季節に寄って様々な種類を扱っているようだ。野菜も日本各地から珍しい野菜が来ており、一皿一皿に季節感が存分に味わえる。
京都のように、手の込んだ仕事ではないけれども、美味しい魚と野菜を、すっきりとした仕事でお料理に昇華している。ところどころパリソワール風だとか、クレームブリュレとか、フレンチの技法も取り混ぜてあるのは、ご主人がワインに詳しいからだろうか。
系統的には、四谷三丁目の『和食こんどう』に似ているかもしれないけど、『はらまさ』『和食こんどう』と並んで、四谷三丁目界隈のベスト和食店の一つだろう。
先付
豆乳と海老出汁ゼリーのパリソワール風
揚物
おこぜ唐揚げ アボカド
お椀
鱧 玉蜀黍すり流し 湯葉 モロッコインゲン
お造り
鯵 石垣貝 加賀胡瓜
焼き物
たかべ塩焼き 金時草浸し 鬼灯
煮物
真蛸旨煮 黒皮南瓜 石川芋 炊き合わせ
口替
鱚昆布締め 素麺瓜 海ぶどう
食事
鮎と枝豆の土鍋炊き込みご飯 汁
甘味
白桃のクレームブリュレ
☆ふくhttps://tabelog.com/tokyo/A1304/A130402/13044916/