日付の大きいカレンダー

詩人の岩崎航さんは、少しずつ身体の筋肉が少なく動かなくなってゆく、進行性筋ジストロフィーである。
わずかに動く指先を使って、五行で五行歌を綴っている。
父と母が
受けきった
かなしみ
そのままになんか
しはしない
「人の助けを借りないと、
一日も、一瞬も生きられない人間なんです。」
そんな風に淡々と語る岩崎さんを見ていると、不思議とその歌からは、『難病を患ったかわいそうな人』などという気持ちではなくて、むしろ、先天性の難病を背負いながら、ひたすらに今日を生きる姿に心動かされる。
日付の大きい
カレンダーにする
一日、一日が
よく見えるように
大切にできるように
その歌はきっと、自分に呼びかけているような言葉なのだけど、読んでいるうちに僕自身に向かってくる。
そして、身体のずっと奥深くから、今日を生きてゆく勇気がじんわりと湧き上がってくるのだ。
『詩』とは、何か美しいものを心の中に遺すもの。
そんなことを、岩崎さんの詩集は教えてくれる。
★『岩崎航エッセイ集 日付の大きいカレンダー』http://www.nanarokusha.com/book/2015/11/19/3621.html
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