Mのお母さん。

会社のガラケーに入っている留守録が、実は長い間あったのだけど、その留守録をずっと聞けずにいた。(いわゆる本当の留守電は聞くことが出来たのだけど、留守録のようなものが溜まったままだったのだ)
なぜ聞けなかったのかというと、ゲイは機械に疎いから…
というのもあるのだけど、ガラケーの使い方がどうしてもわからなくて、ずっとそのままにしていたのだ。
昨夜、何年もそのままだったガラケーを、ふとKに渡してみた。
「この留守録みたいなやつ、どうやったら聞けるかわかる?」
Kは、単純なので、何か僕から与えられると、一生懸命解明しようとする性格だ。しばらくして僕がご飯を作りながらキッチンにいた時に、突然Kが言った。
「出来た!これで聞けるよ!」
果たして、留守録メモに残っていた10件は、なんと3年近く前のものだった。(3年も経つのに、気にも留めなかった自分に呆れてしまった)
その中にひとつ、仲のよい友人Mのお母さんからの長いメッセージが入っていた。
「ただしさん、今日は美味しいイタリアンを食べることが出来て、ありがとうございました。本当に美味しかった。
ただしさんは、いつも私のお相手をしてくださって、やさしい方だと思っています。
いつもありがとうございます…」
そこには、東京に来るたびに、Mと一緒にご飯を何度も食べた、Mのやさしいお母さんの声があった。
ご飯のあとはいつも、MのBridgeに飲みに行って、ふたりで隣に座っていつまでもたわいもない話をしては、ケラケラと明るく笑ったものだった。
実は、MとLINEで、Mのお母さんの話をつい昨日していたのだ。
お母さんはもう、目を開けることもなくなってしまい、ほとんど食べられない食事も目をつぶったまま…手を握って話していると、握り返してくると書かれていた。
出社して、なんだかMのお母さんの留守電が気になっていたので、MにLINEを入れた。すると、お母さんが、今朝亡くなったということを知らされた。
Mにはなんと言っていいのかわからなかったけど、僕が思うに、昨夜の留守録のメッセージは、お母さんが最後に僕に話しをしに来たのだと思ったのだ。
お母さんは、元気な頃のやさしい声で僕に言っていた。
「 ありがとうございました
ただしさん、からだだけは気をつけてね
本当にありがとうございました」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です