大久保醸造の醤油と味噌。

薄口醤油

松本の外れの山の中に、扉温泉という鄙びた露天風呂のある温泉がある。その温泉を訪れた帰り道、ふと思い立って『大久保醸造』に電話をしてみた。
『大久保醸造』は、松本市にある醤油屋さん。
先日、友人の結婚パーティーの引き出物にもらった醤油が香り豊かで、塩分が立っていないまろやかな醤油だったので、どんなところで作られているのか、見てみたいと思ったのだ。
電話に出たのは、『大久保醸造』の奥さんだろうか?「今日はお休みなんですけど、そばにいらっしゃるなら、いらしていただいてもかまいません…」
扉温泉から町に入る手前辺りに『大久保醸造』はあった。程なくして、きりっとした気の強そうな、それでいて美人の奥さんがやって来た。
「何をお持ちしましょうか?」
僕は、薄口醤油が欲しいこと。それと、あれば、濃口も欲しいと。そして、この土地ならではの田舎味噌をいただきたいと伝えた。
奥さんは、すぐに裏から味噌と胡瓜を持ってきて、僕たちに味見をさせた。
「今の味噌は、時間をかけないで色んなものを入れて作るんですが、うちのは昔ながらの製法で、たっぷり時間をかけて余分なものは入れてません。だから食べるとちょっとしょっぱく感じるかもしれませんが、この味だから、味噌汁もボヤけないんです…」
醤油や味噌の話を沢山聞いて、僕たちは温かい気持ちになってお醤油屋さんを後にした。
東京に帰ってから、醤油を取るたびに、味噌をお出汁に溶かすたびに、あのキリッとした美しく芯の強そうな奥さんを思い出す。
お醤油も、お味噌も、そんな思い出とともに我が家の冷蔵庫にあるのだ。
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