何か、目には見えない存在。

昼間に美味しいお寿司を食べて、日本酒を飲んだせいか、夕方になっても全然お腹が減らず、本当は水炊きを予約していたのだけど、とてもじゃないけど食べる気が起きず、どうしたものかと考えあぐねていた。
そして、Kに何が食べたいのか聞いてみた。しばらく考えたのち、Kが一言言った。
K「グ…グラタン…」
そこで僕は、福岡でグラタンを食べられる店を探し始めたのだけど、東京や京都と違って、福岡には洋食屋さんは少ないようで、暫くしてグラタンは諦めることにした。結局、福岡らしいイタリアンに行き、『七男鳥』に飲みに行った。
「たこ焼きが食べたいなぁ…」
福岡のバー『七男鳥』で飲んでいる時に、帰りにたこ焼きが食べたいと思い、周りの人に聞いてみた。
僕「この辺で、今やってるたこ焼き屋さんないですかね?」
A「うちのそばにはあるけど、この時間は閉まってるな…」
B「大阪じゃないから、こんな時間にやってるたこ焼き屋なんて福岡にはまずないよ」
七男鳥を出て、大きな通りに出るやいなや、向かいに蛸の文字が見えた。Kに、「あれ、たこ焼き屋さんじゃない…?」
道を渡ると、移動式のたこ焼き屋さんで、店の人曰く、「福岡にはもう1つくらいしかこんなたこ焼き屋さんはありません」という。
Kがコンビニでチューハイを買って来て、二人で美味しくたこ焼きを食べながら、幸せなひと時を味わった。
いい気持ちのままホテルの部屋に帰り、お酒を飲みながらカップラーメンを二人で食べた。そして、部屋の片隅をふと見ると、昨夜、今朝の朝ごはんに食べようと買ったパンが1つだけ残っているのが見えた。
僕はたいてい福岡には先に到着するので、翌朝のためにパン屋さんで適当にパンを買っておくのだ。そして、何の気なしにそのパンを2つに割ると、中から『グラタン』が出てきたのだった。(パンは、甘くないものを適当に買ったので、何を買ったかさえも覚えていなかったのだ)
『たこ焼き』も『グラタン』も、ただの偶然だと思うことも出来る。
でも、僕はそうは思わなくて、何か目には見えないものが、にっこりと笑いながら僕たちに合図をしてくれたのだと思ったのだ。
人生には、そんな不思議なことが時々起こる。
それを、どう捉えるかは、その人次第。

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