ヴィンセントが教えてくれたこと

ここ数年、高齢者が主人公になっている映画が増えて来ているように思う。
思いつく限りでも、両手でも足りないくらいあるのだから、やはり映画は、高齢化の社会をいち早く映し出していると言えよう。
映画に詳しい友人Mが、ずっと僕に観に行った方がいいと勧めてくれていた映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』は、ところどころ笑えて、ちょっと胸が痛くて、見たあとに幸福な気持ちになれる作品だった。
ビル・マーレイ演じる爺さんは、バーで飲んだくれて人に突っかかるは、ものを盗むは、年増の売春婦と楽しむは、競馬ばかりしている、一言で言うと、ろくでもない爺さんだ。
そんなろくでなし爺さんの隣に、太った母親と、神経質そうな少年が引っ越して来る…。
映画は、ろくでなし爺さんと気弱な少年の交流によって人生の様々なテーマを描こうとしている。
僕がこの映画がいいなあと思うところは、このろくでなし爺さんや、盛りを過ぎたおばさん売春婦や、太ったお母さんや、気弱な少年の誰もが、それぞれに弱みがあったり悩みを抱えながらもなんとか人生を生きているところだ。
誰一人完璧な人間などいなくて、それぞれにいびつで、傷ついていたり問題を抱えながら生きている彼らを見ていると、なんとも愛おしくなる。
一番驚いたのは、この東欧訛りの盛りを過ぎたおばさん売春婦を、ナオミ・ワッツが演じているところ(キャストを読まなかったら、最後までわからなかったかもしれない)。相変わらずナオミ・ワッツは、素晴らしい演技だった。
観終わったあとに、清々しい気持ちになれる佳作。
★ヴィンセントが教えてくれたことhttp://vincent.jp/info/?page_id=8

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