母の勘。

会社にいくため歩いていたら、母から電話が鳴った。
「あんた、どっか具合悪いでしょう?お母さん、今日起きたら、なんだか左耳がかゆいから、あんたに何かあったと思ったの」
僕は話し始めたとたん、急に咳こんだ。
母「ほら。咳が酷いじゃない。お医者さん行ったの?」
僕「行ったけど、熱はなくて、のどがかゆいのがずっと続いているんだ・・・話すと咳が出て・・・」
母「別の医者に行った方がいいわ。また、連絡します。会社休みなさいね!」
母は昔から、こんな風に不思議な勘を持っていて、突然注意を呼びかけてくることがある。『左耳がかゆい』時は、家族の誰かが具合が悪い時だそうだ。そして、これは母方の祖母がまったく同じだったのだけど、僕の一族にとって、『鯉の夢』を見ると、家族の誰かが足を折ったり、事故を起こしたりするのだった。
母は、こんな勘だけでなく、『人魂(ひとだま)』のようなものを見えるらしい。
昔、通りを大きなひとだまがゆっくりと動いていったのを見た母は、「文房具屋さんの大塚さんが亡くなったわ・・・」と言ったのだけど、その通り、大塚さんが亡くなっていたのだった。
また、再婚した母が、義理の父の家に嫁いでしばらくの間は、グレーの大きなひとだまが家にいたそうだ。それは、気づくと庭をさーっと横切ったり、ふと振り返ると、母をどこか離れた所から見ているような感じだったそうだ。
母「もしかしたら、随分前に亡くなった前の奥さんなんじゃないかと思うの・・・。嫌な感じはしないんだけど、なんだか心配そうにしばらくいたけど、安心したのかいつのまにか出てこなくなったわ・・・」
そんな不思議な力を、僕はどうやら引き継いではいないようなのだけど、時々祖母や母のそんな力を、不思議と身近に感じることがある。

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