苦労は、いつか、笑い話に。

「野菜が沢山出来たから持っていくわ」と母から電話がかかって来て、急遽会うことに。
手には重たいのに、持ちきれないくらいの紙袋を下げて、待ち合わせの改札に15分くらい前に来たようだ。せっかちな母らしい。
「トマトが沢山なったから、あなたトマト好きだから…それと、茄子ときゅうりと大葉と…
今朝、唐揚げも揚げたし、ジャムも作ったのとサラダも持ってきたから…」
中華料理のコースを食べながら、とりとめのない話をする。僕が茄子の料理では焼きなすが一番好きだなあ…と言いながら、ふと焼きなすが好きだった父のことを思い出して、父の話になった。
僕「お父さん、焼きなすが好きで、毎日のように晩酌で焼きなすがあったよね…」
母「でもあの人、お酒ばかり飲んで喋ってばかりで、全然ご飯に手をつけなくて全部冷めちゃって、結局何にも食べないで酔っ払って寝ちゃったり、苦労させられたわ…」
僕「お母さん、なんであんなエキセントリックな人と結婚したの?本当に苦労ばっかりだったよね…」
母「そうね…本当に変わった人だったわね…笑」
今となっては笑い話になってしまうほど、父はエキセントリックだった。
家では色々な種類の生き物を沢山飼っていたのだけど、何かが亡くなるたびに父が悲嘆に暮れ、家中がお葬式のようになったり…
ある時は、どこか飲み屋で喧嘩になり、背中を刃物で切られて帰って来たり…父は武道の達人だったのだけど、曲がったことが嫌いでたとえ相手が怖い人たちでも折れることがなかったのだ。
やさしさと激しさが常に表裏で同居しているような人で、蝶よ花よで育ったおっとりしている母とは、まるで違う星の人だったのだ。
昔、苦労したことが、笑い話になる日が来るなんて思わなかったけど、父の話をひとしきりしながら二人で沢山笑えたのも、今の母が幸福だからだろう。
時々、あのエキセントリックだった父に会いたいと思うことがある。
今となっては、あの尋常でないやさしさを懐かしく感じる。

La Sfoglina

真蛸とフィノッキオ

トロフィエのジェノベーゼ

バルバリー鴨のロースト

久しぶりに、六本木にあるイタリアン『La Sfoglina (ラ・スフォリーナ)』へ。
ここは、僕がよく行く家のそばにある『EMILIA』の姉妹店でもあり、オーナーが今はシェフを務めている。スフォリーナというのは、パスタ職人の意味。
5800円のコースは、お通し、前菜、パスタ、メイン、デザート、飲み物で、六本木にしてはリーズナズルだろう。
※オススメを書いておくと、前菜はフォアグラのテリーヌ。パスタは、黒トリュフのタヤリン。メインは、バルバリー鴨のロースト。
パスタはすべてホームメードなので、乾麺にはない独特の食感を楽しむことができる。
実は、明日からエミリアは改装に入るそうで、二週間近くお休みをするらしい。そして、このエミリアとスフォリーナのスタッフは、この時期に揃って本場のイタリアに研修を兼ねて旅行に行くという。
エミリアの古くからのスタッフであるシェフは、イタリアにまだ行ったことがなく、ずっとイタリアに行きたいと言っていたのだけど、その夢がやっと叶うようだ。
帰ってきて、また新しいイタリアの味を届けてくれるのを楽しみにしている。
★La Sfoglinaラ スフォリーナ
03-6432-9452
東京都港区六本木7-3-22 やまうちビル 1F
http://tabelog.com/tokyo/A1306/A130603/13157731/

黒牛

特上ミスザブ盛り

黒牛カルビと黒牛ロース

冷麺1/2

このところ、友人Xのせいか焼肉を食べに行くことが増えた。
いつも新しい店を探しては、他の店と比べてみるのがちょっとした楽しみになっている。
焼肉屋さんは、お肉で決まるのだろうけど、どこどこ産のA5が美味しいと感じるかというと、必ずしもそうでもないと僕は思っている。
それと、もともと甘い焼肉のタレの味が苦手なので、なるべく肉本来の味を味わえる店を探してみる。大抵そういう店は高級焼肉店なのだけれども、代々木の外れにある『黒牛』は、とてもリーズナズルな値段で美味しいお肉を提供していた。
元々このお店も、神戸牛や近江牛などブランド牛だけにこだわらず、その時その時で良い牛を産地にこだわりなく取り入れているようで、その日によって仕入れている牛が表示されている。
ミスジとザブトンの盛り合わせは、お肉らしさを存分に楽しめる一皿だし、黒牛カルビも黒牛ロースも、余計なタレが絡まっていなくて美味しかった。
店内も、黒が基調で焼肉屋さんの猥雑さや臭いはなく、煙がたたないような作りになっているため、デートをしているお客さんも多く見られた。
★黒牛
03-6803-1129
東京都渋谷区代々木3-1-11 代々木パシフィックスクエア代々木ビル B1F
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130403/13045232/

腸マッサージ。

先日、ここにも上げたテコセンターで、『腸マッサージ』をしてもらった。
加齢とともにお尻は下がり、骨盤は開き、内臓が全体的に下に垂れてくるものだそうだ。
腸マッサージは、内臓の下からはじまり、ゆっくりと上に横隔膜まで上がっていく。
マッサージというよりも、内臓の中にある部分的に固いところを、ゆっくりと柔らかくほぐしていく感じだろうか。
「便秘はありませんね…あ、ほんの少し胃が下がってますね…上げときましょう…」
僕は全く痛みは感じないのだけど、便秘気味の人は、腸が硬くなっており、腸マッサージをされると痛いほどだという。
「横隔膜も上げておきましょう…肋骨もしっかり動くように…」
「あれ、内臓が少し冷えていますね…あまり冷たいものばかり飲み過ぎないでください」
目を閉じていると、まるで内臓の中に手を入れられて触られている感じがする。
考えるとなんだかちょっと気味が悪いけど、終わった後に、自分の身体を鏡で何度も見て、内臓は上がっただろうか…肋骨はしっかり動くだろうかと、ひとしきりチェックしてみた。
少しずつでも、理想の身体に近づけますように…。

Brady

ARIEL TROUT gents

Bicycle Bag

Tote

Bradyの鞄を初めて買ったのは、高校二年の頃。黄色い網が前面に着いたフィッシングバッグだった。
それから、ベーシックなARIEL TROUT gentsを買い、その使いやすさに惚れ込んでしまった。
1887年イギリスで創業されたBradyの鞄の素晴らしいところは、キャンバスと革という自然の素材を用いながら、3種類のウォータープルーフ・ツイル地のため防水性があるということだろう。
実際に、くったりしている1番目の写真のARIEL TROUTは、これで2代目という惚れ込みようなのだ。
鞄も、思い起こせば、様々なものを手にしてきた。それでも、何十年も経って、自分が手放さずに、これから先もともに年をとると思われる鞄は、いくつも持っているGlobe Trotter の旅行鞄と、Henry Cuirの革の鞄と、このBradyだろう。
今回、九州などの小旅行用にと思って、新しく2番目の写真のBicycle Bag を手に入れた。
たっぷり入る容量と、肩からかけられるというのが気に入ったのだ。
あまり新しいものは買わない僕でも、たまにこうして買い物をして、欲しかったものを手にすると、うれしくてワクワクする。
この鞄とこれからずっと一緒に、色々なところに旅行をしたいと思っている。
★Bradyhttp://bradybags.jp

挫折のあとの道。

このところ、ジムとは別に通っているトレーニング施設(テコセンター)で、時々身体のメンテナンスをしてもらっている。
そこは、大学生の野球選手やプロ野球選手、社会人フットサルの選手、プロのバトミントン選手なんかがトレーニングに来ていて、身体のトラブルの治療もおこなっている。メンテナンスとパフォーマンスは両面のように繋がっているのだ。
渡辺さんという人に僕はいつもやっていただくのだけど、体重は100キロを越えていて、大きな熊のような29歳の男性。他の人とのマッサージの違いは、力がとても強く大きいことだろう。そして大きな声で笑うのだ。「がはははは!」
それでいてマッサージは的確で、今後僕がどのように身体を正しい姿勢、正しい動きにしていったらよいのか、丁寧に導いてくれる。
先日、マッサージをしながら話をしていたら、渡辺さんがこんなことを言った。
渡辺さん「僕は、めちゃくちゃラッキーな男なんですよ。」
僕「へー、なんでそんなにラッキーなんですか?」
渡辺さん「僕は、ずっと野球やっていたんですけど、ある日身体を壊してしまって、野球をやめなくてはいけなくなったんです。そして、普通にサラリーマンをやったんですけど、これは続けていけないなあ・・・と思っていたら、知り合いの野球選手が塩見さんを紹介してくれたんです。」
僕「へー。塩見さんって、あのクマみたいな人だよね?僕が勝手にジャイアンと呼んでる」
渡辺さん「はい、塩見さんは、すんごい人なんですよ。スポーツ業界でも有名な人で、野球を本格的にやった後、高校卒業後アメリカに渡り、スポーツに関する身体の仕組みや動き、治療を学んで、帰国後はプロ専属で働いていたような人なんです。」
渡辺さん「それで俺はこの道に入ることが出来たんです。すんごいラッキーでした」
僕は、渡辺さんのマッサージを受けていると、「この人、天職だな・・・」と思ってしまうほど素晴らしいと思うのだけど、それにはきっと、自分の知識や施術を信じていて、身体をなんとか治したいというまっすぐな思いがあるからなのだろう。
野球がすべてのように生きて来た人が、身体を壊して味わった挫折感は相当なものだと思う。
でも、そこからまた、人生は続いてゆくのだ。
渡辺さんのように、もう一度そこから自分が生きる道を探りあてた人は、更に一回り大きくなって、しなやかに、強靭に、人生を歩いて行くことが出来るに違いない。
子どものようなでっかい笑い声を聞きながら、そんなことを思ったのだ。
★テコセンターhttp://tecocenter.jp

劇団ぺんぺん。

新宿二丁目に、『ぺんぺん草(以後ぺんぺん)』というお店があって、開店してからもう37年を迎える。
お店がオープンしてから10年経った時に、マスターのひろしさんはお客さんと遊び半分で芝居をした。そしてそれからなんと、26回も芝居を毎年公演してきたのだ。
ぺんぺんの芝居は、『真夜中のパーティー』から始まり、オリジナル作品があり、和物があり…正直くだらないなぁと思うものばかりなのだけど、中ではオリジナル作品の『TAKE FIVE』のシリーズはとても面白く、笑あり、涙ありで、僕にとっても忘れがたい作品だ。
『TAKE FIVE』のシリーズは、二丁目の小さなゲイバーが舞台になっていて、そこのゲイバーで起こるお客さんたちとのやりとりや事件が面白おかしく脚本となっている。
僕たちからすると、ゲイってなんて身勝手で、虚栄で、自分のタイプには目がなくて、いつも恋愛したがっていて、欲望に溢れ、涙もろく、滑稽な生き物なのだろう…と思ってしまうけど、実際にゲイバーの中から客席を見ていたら、本当にゲイの会話は芝居のように面白いのだろうと思う。
ひろしさんは、自分の目の前で起こっているゲイバーの日常のシーンや会話を繋ぎ構成することによって、新しい二丁目ならではのゲイ文化を作ることに成功したのだ。
そんな僕にとっては愛おしいぺんぺんの芝居も、残すところあと4回限りで終了になるという。あと4年やったら丁度30回を迎えるので、それでキリよくおしまいにするらしい。
(自称)68歳のひろしさんも、そろそろいいかなと思ったようだけど、側から見ている限りは、まだまだ元気だし、死ぬまで芝居を続けて欲しいと思うのだが…。
願わくば、31回目に、昔の懐かしい『TAKE FIVE 早春』を、もう一度観たいものだ。

ふたりの生きた証。

Keiさんは49歳。13年間一緒に暮らしていた52歳のパートナーAさんを、昨年、くも膜下出血で亡くした。
ふたりでリビングでテレビを観た後、Keiさんが先に休んだのだけど、朝起きたら椅子に座って上を向いたまま、Aさんは亡くなっていたのだった。
当時、あまりにも突然の出来事で、僕も驚いたし、Keiさんにいったい何を話しかけたらいいのかわからなかったのだけど、あれから一年が過ぎてやっとランチをすることができた。
お互いの家族にはカミングアウトは済ませてあったものの、Aさんが亡くなった時に、これはもう隠せないと思い、仕事場にもカミングアウトをしたそうだ。
「13年間連れ添ったパートナーが亡くなりました…」
会社の人たちは葬儀にも来てくれて、その後も仕事場においても支えてくれたようだ。もしもカミングアウト出来なかったら、すべてを隠して日常生活を続けることを思うと、地獄のような毎日だったに違いない。
時間が経ったのと、僕自身かつての最愛の恋人を亡くしたこともあり、自分の話をしながら、Keiさんに聞いてみた。
僕「Keiさんは、Aさんが亡くなってから、どんな風に過ごして来られたんですか?」
Kei「友達が支えてくれたんだよね…。葬儀の時も、僕を心配して誰かしらが家に泊まってくれて…」
Kei「娘のように可愛がっている若い子がいるんだけど、彼らが本当にちょくちょく家に来てくれて、お酒は飲んだらダメだからとか世話焼きで…」
Aさんとの共通の友人たちと一緒に沖縄や韓国に旅行に行ったり、今年もAさんの前彼たちと一緒に沖縄旅行に行くようだ。
Kei「今でも考えてしまうのは…Aとつきあいだして、Aを大阪から東京に連れてきてしまったことが、本当にAにとってよかったことなのかな?って。Aは、幸せだったのだろうかと…」
突然の別れは、遺された者にさまざまな疑問を投げかけてくるものだ。答えのない問いが次々と浮かび、何度も繰り返されることもある。
「本当に彼は幸せだったのだろうか…」
僕には、Aさんの気持ちはわからないけれども、本当に仲良く暮らしていたふたりを見ているから、Aさんも幸せだったのではないかと思う。
Aさんは、Keiさんに、「Keiの親が年をとったら、俺が面倒見るから…」と言っていたそうだ。そんな話をしながら、Keiさんは、懐かしそうにAさんを思い出していた。
Aさんとふたりで過ごした日々は、Keiさんの中でいつまでも心に残り、輝き続けるだろう。

パリの色。

今の時期、町を歩いていると、ところどころで美しいアジサイを見かける。
梅雨の湿度の高い日本の気候にアジサイはとても合っているようで、様々な色合いのアジサイを見るとどこかほっとするものだ。
三越本店の上のチェルシーガーデンは、昔から僕の憩いの場所なのだけど、先日遊びに行った際に、このアジサイ(西洋アジサイ:ハイドランジア)に一目惚れしてしまった。
青や紫色の絵の具の上から緑色の絵の具を重ねて、下地が剥げて見えて来ているような複雑な色合いは、なんとも言えず魅力的で、どこか、『パリの色』のようではないか。
アルミのバケツとの質感の違いも心地よく、思わず大人買いしてしまった。笑

四川雅園。

前菜5品

辣子鶏

麻婆豆腐

あまりにも蒸し暑いので、四川料理を食べに、赤坂にある『四川雅園』へ。
ここは、赤坂の四川料理の有名店『同源楼』の姉妹店で、本格的な辛い四川料理が食べられる。
ふたりだと数品しか頼めないなあと思っていたら、3000円のコースがあり、おまけに1200円で飲み放題というのをお願いした結果…
前菜5品、ズッキーニの炒め物、蒸し魚、ハマグリ、辣子鶏、麻婆豆腐、チャーハン、デザートと、食べきれないくらいの品数で、これで3000円でいいの?という驚きのコストパフォーマンスだった。
麻婆豆腐は、辛いけど、ほんの少し甘みも感じるので食べやすいかもしれない。
『同源楼』もそうだけど、ランチはいつも列が出来るほど並んでいる人気店。それにしても、この3000円コースは、驚いたなぁ。また来たい。
★四川雅園
03-3584-2556
東京都港区赤坂4-3-11 1F
http://tabelog.com/tokyo/A1308/A130801/13112320/