ヤスミン・アフマド

世の中に恋愛映画は無数にあるけど、いつまでも心に残る恋愛映画は、そんなにないような気がする。
僕の大好きな恋愛映画の一つに、マレーシアのヤスミン・アフマド監督の『細い目』がある。
ヤスミン・アフマドは、51歳という若さで急逝した女性監督。作品はDVD化されていないが、時々東京で回顧展が行われて、素晴らしい作品を今でも観ることができる。(明日から、シネマート六本木にて)
恋愛の始まりは、ある種のマジックのようなものだ。生まれも育ちも違うふたりが、この広い世界で偶然出逢い、化学反応が起こり、惹かれ合う…。
せつなく、息もできぬほど狂おしく恋い焦がれたことは、誰もが経験したことだろう。
映画『細い目』は、あの胸騒ぎや、せつなさ、息苦しさを、そっくりそのままもう一度思い出させてくれる稀有な作品だ。
主人公と一緒に、胸が膨らみ、傷つき、ボロボロに涙するに違いない。
『細い目』を観て、もし気に入ったら、『グブラ』『ムクシン』『ムアラフ改心』などもおすすめする。
★マレーシア映画ウイークhttp://odd-pictures.asia/mfw/film/

世界一好きなお弁当。

京都は、実は僕が10年間つきあって、昨年亡くなってしまったNとの思い出の地でもある。
Nは京都の大学を出たので京都に特に思い入れがあり、一年に何度もふたりで京都に出かけては、様々な美味しい料理を食べ歩いたものだった。
今回、Nが亡くなったことを知り、僕がみんなより一足先に京都に入ったのは、ふたりで行った思い出の京都を、僕一人で歩きたかったから。
駅からタクシーでいつもの京都ホテルに荷物を預け、真っ先に『河久』に向かった。
『河久』は、生前Nが大好きだった洋食割烹のお店。何度か足を運ぶうちに、僕もいつの間にかこの店の料理に魅せられてしまったのだ。
京都に来て、『菊乃井』や『桜田』などの正統派京料理を続けて食べていると、ちょっと和食じゃないものが食べたくなることがある。
そしてそんな時、『河久』の鴨ロースや鳥の手羽を食べるとホッとする美味しさを感じるのだった。
大将は話好きで、京都のことにとても詳しいので話していても勉強になるし、息子さんが今は若旦那になっていて、長く通っている僕のことをたいせつにしてくれる。若旦那は僕のそばにつきっきりでいて、ずっと僕に話しかけてくれるのだ。
ゆっくりとお弁当を食べながら、若旦那とNの話になって、Nがここのお弁当がどんなに好きだったかを思い出したら、涙がこぼれてきた。
Nはいつも東京に帰る時に、『河久』に立ち寄って、僕とふたり分のお弁当を買って、新幹線の中で食べながら帰るのが好きだった。
「うまいな!うまいな!」と僕に微笑みながら、本当に美味しそうにお弁当を食べる人だった。
「ああ、このお弁当を、Nに食べさせてあげたいなぁ…」
そう思いながら、世界一好きなお弁当を食べ続けた。
★河久http://www.kawahisa.com

緒方

巨大な平貝

若竹煮

稚鮎

ほぼ1年ぶりの再訪だ。
今回は4人のため、カウンターではなく奥の部屋へ通された。奥さんも大将も僕のことを覚えていてくれたので、何度も何度も顔を見せに来てくれた。
『未在』などの正統派京料理の店と違って、ちまちました料理ではなく、『緒方』は、飾り気がなくがっつり一品一品大きめだ。
赤貝と、サヨリと、平貝のお造りは、僕が貝自体あまり好まないので、食べきれなかったけど、貝好きにはたまらないだろう。
お吸い物は、ハマグリに百合根、ハマグリの天ぷらに、若竹煮、稚鮎、そして、ご飯は3種類の中から選ぶことができる。
二回行った感想は…
ミシュラン二つ星なのだけど、同じ星つきでも、『なかひがし』や、『さ々木』や、『桜田(閉店してしまった)』なんかとは違って、まだまだかもしれない…という感想になってしまった。(貝ばかりだったのが、僕にはこたえたのかもしれない)。
それでも、友人の食通たちの間では、この店の人気は根強く、京都で一番好きな店にあげる人も多い。
★緒方
http://tabelog.com/kyoto/A2601/A260201/26012136/

三芳

祇園に、お肉専門の割烹料理屋さんがあるというので、前からチェックをしていたお店。Kが肉好きということもあり、ミシュラン一つ星の『三芳』へ。
店はとても綺麗で、カウンターと後ろのテーブル座席がある。今回、シンガポールの友人カップルと4人だったので、テーブル席へ。
メニューは、メインのお肉によって値段が違っている。その時々のヒレか、ロースか、神戸牛か…シンガポールの友人カップルはすかさず「Kibe Beef…」というので、神戸牛に。
「4人だとかなり分厚く霜降りが切れますから、きっとうまいですよ…」と言われ、メインを楽しみにしていた。
牛タンの刺身、新玉ねぎとみすじの碗もの、牛肉と雲丹のご飯、竹の子と牛タンの焼きもの…どれも肉なのに、部位も違うし調理が違うから飽きることなく食べられる。
和食の美味しい出汁と合わせてあった煮物は、シンガポールの友人たちも気に入ったようで、出汁まで飲み干していた。
メインのステーキは、何もしなくても塩だけで言うことなく美味しいし、ご飯と味噌汁と漬け物が出て来てホッとしていたら、煮物には昆布で巻いた牛肉が潜んでいた…
祇園の割烹料理屋は日本一だと思うのだけど、その多様性においても、まだまだ知らない店が沢山あって、奥深いものだと改めて思い知らされた。
★三芳http://tabelog.com/kyoto/A2601/A260301/26002222/

Tokyo graffiti

今月号の雑誌、『東京グラフィティ』をご覧になっただろうか?
実は第二特集で、LGBTを特集しているのだ。
◯様々なカップルの自然体の写真。
◯結婚式を挙げたビアンカップルとゲイカップル。
◯タイムスリップ写真館という、同ポジの写真で歳月が経って同じ格好している写真。
◯What’s LGBT?
◯渋谷区議会議員、長谷部健さんのインタビュー
◯カップルがキスをしている写真
◯レインボー日記
LGBTに関してとても充実した内容なので、ぜひコンビニや書店で手に取ってもらいたい。
※以前、試写会で観た映画『パレードへようこそ』が、先週末から公開になっている。僕は何度も涙した。ぜひ!http://jingumae.petit.cc/banana/2359495

恐るべし。醍醐寺。

桜の咲く頃、京都の醍醐寺を訪れてみて欲しい。
山科の細い道を進むと、左側に桜の群れの濃淡が見えてくる。
桜に誘われ寺に入ると境内は広く、いつの間にか、自分が『桜の園』に迷い込んでしまったことを思い知る。
ここにある様々な種類の桜が、いったい何百年この不思議な世界を築いて来たのかはわからない。その姿は仙人のようでもあり、森の精のようでもある。
この世界に、完璧なものがもしも存在するとすると、一つは醍醐寺の桜だろう。
豊臣秀吉は、この醍醐寺の三宝院の奥で『醍醐の花見』を開き、数週間後に瞼を閉じた。
これが、世界遺産というものなのかと、身体で感じることが出来る。

桜の、京都へ。

桜は毎年咲くのだけれども、満開の時期に京都に来たことがなかった僕は、一度桜の時期の京都に来てみたいと思い、1年前に、京都のホテルを予約していた。
数週間前から桜の開花予想が気になり、暖かくなって見頃は一週間早まるかもしれない…などとやきもきしながらも、結局1年前に押さえたスケジュールが満開の時期となった。
こうしてこの時期の京都に来て思うことは、京都の桜は、東京のようにソメイヨシノだけではなく、枝垂れ桜など様々な桜が混在していて、川や古い建物と美しく寄り添っていることだ。
祇園で食事を済ませた後、円山公園まで足を延ばすと、突然目の前に、大きな枝垂れ桜が現れた。
何百年と生きてきた枝垂れ桜は、紅の色を樹の内にたぎらせ、全身を使って大空高く生きている喜びを放ち続けていた。
それは、一瞬と思える美しさを、際限なく積み重ねて、まるで永遠に続くかのように感じられる夢のような時間だった。

やさしさ。

人間が持つ最大の力は、『やさしさ』ではないだろうか。
『やさしさ』とは、自分のことではなく、他者を思いやる気持ちから生まれるもの。
『強くなければ男じゃない。やさしくなければ男じゃない』
昔、僕と10年間ともに生きたNが、結婚式で祝辞として贈られた言葉は、Nにとって生きてゆくための指標のようになっていた。
Nは、やさしい人だった。
自分のことを犠牲にしてまでも、僕のことを守り、たいせつにしようと生きた人だった。
『やさしさ』は、人が生きてきた道程において、深く傷ついたり、悲しい思いをしたり、大切なものを失うことによって、より大きく深くなるのかもしれない。
そして人が、他者に対してやさしくあるためには、その人はきっと、『強さ』も持ち合わせていなければならないのだと思う。
もっともっと、やさしくなりたい。
先日読んだジョージ・サンダースのスピーチが素晴らしかったので、ここにあげておきます。
★全米No. 1ベストセラー作家 ジョージ・サンダース(54)シラキュース大学卒業式スピーチ
http://tabi-labo.com/106833/jeorge-speech/

「なんで僕が、こんなところに?」

僕のことをご存知の方なら、もうどこかで目にしたかもしれない。31日の渋谷区議会の決議の日の報道が、想像を遥かに超えるニュースになっていて、様々なメディアに僕の顔写真が出回っていたようだ。
“いたようだ”と言うのも、「出てたわね!」「おめでとう!フジテレビで見たよ!」「いきなりただしくんが映っていて驚いた」等、周りの友人たちが親切にLINEやメールを送って来てくれたから。
でも、一番驚いているのは僕かもしれない。決議が決まってみんなと区役所を出た時に、坂道を降りた遠くに夥しい数の報道陣が待ち構えているのを見ながら思ったのだ。
「なんで僕が、こんなところにいるんだろう・・・?」
でも、ふと冷静になって、このバナーは友人のビアンカップルに。こちらのバナーは、僕の弟と妹に持たせて・・・急に仕事モードになって、どうやったらより印象的にメディアに写るだろうか・・・と考えていた。(大我さんと一緒に歩いたら、僕たちがカップルと思われたら困るから、大我さんは向こう端を、僕はこちら端を・・・・・・笑)
その日はみんなと祝杯をあげて、朝までなぜだか興奮して眠れず、朝になって会社に行く時に急に思ったのだ。
 
『あ!ニュースを見た会社の同僚、上司、後輩から、何か言われるかもしれない・・・クライアントが変な目で見るかもしれない・・・』(今頃気づくなよ・・・)
早朝から少し緊張して会社に行ったら、仲良しの年上のゲイの大姐さんのFからランチを誘われた。
「見たよ。よかったね。本当にいいことをしたね」と、二人で様々な経緯や傍聴会の話をした。
そして驚いたことに・・・結局、他には誰からも何も尋ねられることも、話をされることもなかったのだ・・・うちの会社の人が、ほとんどメディアを見ていないということも考えられるけど…(もしもそうだとしたら相当笑えるのですが)
多くの人にとって、僕のセクシュアリティがどうであろうとも、そんなにその人の人生に関係がないのではないか・・・と思ったのだ。
もしかしたら、これからじわりじわりと日常の中で聞いてくる、あるいは、僕のいないところでよからぬ噂になることがあるのかもしれない・・・でも…
人生は一度きり。
昔の恋人を喪ったけれども、彼を愛して愛されていた確かな記憶がある。
そして今はKがいて、ささやかな毎日を生きている。
愛する仲間たちに囲まれている。
自分の信じるままに生きよう。
そんなことを自分に言い聞かせながら、なんとか自分を勇気づけている。