握手。

握手をするのが、苦手だ。
僕は、人と会う時にとても緊張するせいか、握手をすることがわかると、一瞬にして手のひらに汗をかいてしまうようだ。
外国人と会う時は、かなりの確率で握手をすることになるから、だいぶ前から手をハンカチで拭いていたりするし、直前にズボンで拭いたりもする。
外国人と握手をすると、いつも彼らの手が乾いているのがわかる。
なんでだろう?
そして握手をした後に、僕の緊張して汗ばんだ手が相手に気づかれなかっただろうか…と思って、そっと相手の顔を確かめる。

大磯。

仕事で、土曜の早朝から大磯のお宅にお邪魔した。
大磯は、知る人ぞ知る作家が多く暮らす町だけど、なんで大磯を作家が好むのか、今までは知らずにいた。
僕は勝手に、藤沢や平塚のような大きなゴミゴミした駅をイメージしていたのだけど、はじめて見た大磯の駅前は、それほど大きくはなく、いい感じに鄙びていた。駅前には地元の野菜なんかを売っているスーパーがある。
駅を背にして前方の数百m先に海があり、後ろは小高い山になっている。この、海と山が近くにあるというのが、大磯以外にありそうでなかなかないようだ。
小高い山の急な坂道を息を切らせながら登って行くと、家々がポツリポツリとあり、それぞれ美しい樹木があり、きれいな花がところどころ咲いている。
お邪魔したお宅は、山の景観に溶け込むように建てられており、風が通り抜ける。リビングからは広がる海が見渡せて、右手には遠く富士山がしっかりと見えた。
海を見渡す景色は海に近過ぎず、なんというか、大きな絵画を見ているように静かだ。
山に囲まれているから空気は新鮮で、うぐいすが時々鳴いている。
大磯は、品川まで1時間ちょっとというから、通勤圏内とも言える。
村上春樹さんも暮らすという大磯。こんな自然を感じられるのどかな場所で暮らすのも、なかなかいいだろうなあと思った。

タックス・ノットの夜。

『OUT IN JAPAN』プロジェクトを始める時に、先ずはタックス・ノットのタックにプロジェクトのことを話しに行った。タックに譲り受けた『OUT IN AMERICA』という写真集は、背景があって、その人の仕事などが記載されており、その人の生き方が感じられる写真集。
そして、今回の『OUT IN JAPAN』は、完全なポートレイトなので少し見え方は違う。(その人の仕事などの情報は24日に本サイトが出来たら見ることが出来る)
その後『OUT IN JAPAN』のそれぞれの写真が解禁になり、みんながSNSに上げ始めて、ティザームービーが公開されて再生回数が一気に1万回を超えた。
再びタックス・ノットを訪れると、タックは、SNSにあげた僕のポートレイトは見たけど、ムービーはまだ見ていなかったので、みんなでムービーを見始めた。http://outinjapan.comするとみんな興味津々で、「この人はトランス?」「この人はビアン?」「これ俺のタイプ!」といった感じで、見入っていた。
そのうちに、僕の出てくるシーン(実は僕は一人だけあることをしている)でみんなが爆笑した。「やだ!なんなの?あんた自分で編集したんでしょう!いやらしい!」
何度かムービーを流しては、僕のシーンでみんなに爆笑されて、僕も大笑いしているところに、僕の弟のようなFが到着、少しして妹のようなGが到着、店は一気に、『渋谷区同性パートナー条例』や『OUT IN JAPAN』の話で盛り上がりを見せた。
その後、三人でBridge、そして伏見さんの店に行き、夜中の3時頃、タックからLINEが入った。
タック「悩殺王子、キャプチャー成功!」
それとともに、僕のある仕草をしているキャプチャー写真が来た。
僕「そんな写真、お客さんに見せないで!」
タック「無理です」
今夜もタックス・ノットでは、僕の変な写真をみんなで見て笑っているかもしれない。
僕が何よりもうれしかったことは、タックがこのプロジェクトの考え方に賛同してくれていることだ。2020年までに10000人という大きな目標を掲げたのはいいけど、この先この国でカミングアウトプロジェクトがどこまで広がるかはわからない。
でも、このプロジェクトによって、一人でも多くのセクシュアルマイノリティが勇気を持てるようにと願っている。(24日の本サイトアップをお楽しみに!)

OUT IN JAPAN メイキングムービー。

OUT IN JAPANのメイキングムービーは、もうご覧になっただろうか?http://outinjapan.com
音楽は、『WE ARE ONE』という楽曲で、カミングアウトをテーマに新しく作られたもの。考え抜かれた歌詞と耳に残る曲なのでぜひ耳を傾けていただきたい。
YouTube で公開されて数日のうちに一気に1万回の再生回数を突破したこのムービーは、『OUT IN JAPAN』の出演者111名全員がそれぞれちょっとだけ映っている。
これは、撮影をして編集してくださったAさんの繋いだものを、僕が全体の構成を考えて展開を決めて、最終的に仕上げたもの。
すべて撮影したメイキングシーンを繋いだものになっているのだけど、これに対してレスリーから、エンディングに自分の撮影したスチール写真を入れて完パケにして欲しい…とオーダーがあった。
僕と編集者のAさんは、ムービーの中にスチール写真を組み込むと、曲の尺は短いし、全体の流れがムービーからスチールで途切れてしまうためいいものにならないと思い難色を示していた。
散々悩んだ挙句、メイキングだけのムービーと、スチール写真を繋げたムービーを二本合体させることでレスリーに提案、ようやくレスリーの了解を得ることが出来て、スタッフ一同胸を撫で下ろしたのだった。
★『OUT IN JAPAN』
4月21日(火)から28日(火)まで、GAPフラッグシップ原宿にて展示される。メイキングとスチールを繋げたムービーは、店頭で見ることが出来る。『OUT IN JAPAN』本サイトは、4月24日に立ち上がります。

カミングアウトの行方。

3月最終日の渋谷区『同性パートナーシップ条例』が決まったニュースにより、思いがけず沢山の新聞やテレビに出てしまって、僕としては予期せぬ華やかなカミングアウトとなってしまった。
その後、会社で何か言われるかな?と思いながらも2週間が過ぎたのだけど、一つあったのは、美容院で、「テレビ見ましたよ!よかったですね!」と、美容師さんに言われたことくらいだ。
それにしても、あれだけの媒体に出て、ゲイの友人たちからは反響があったのに、会社ではまるで何事もなかったようなのはどうしてなのだろうか?
一つは、前にも書いたように、仕事場の人のセクシュアリティなど、特に自分には関係ないと思っているのかもしれないのと、「テレビ見ましたよ!実はゲイだったんですね!」などとは、さすがに本人には言いにくいのかもしれない。
そう思いながらも、入社以来、一番一緒に過ごしてきたコピーライターIがこの2週間顔を出さないのは、やはりテレビを見て、僕に近づきたくないと思っているのかもな…と思っていた矢先、会社のゲートでばったり会った。
Iは、今までと何も変わらず僕に話しかけて来て、最近の仕事のことなんかを立ち話しながら「またランチ行きましょう!」と言いながら去って行った。
僕は、勝手にカミングアウト後の会社での影響を色々妄想していたのだけど、あまりのリアクションのなさになんだか拍子抜けしてしまった。そしてそんな一部始終をKにLINEを入れた。「なんで、誰も何も僕に言わないのかな?」と。するとKは、
「ただしくんは、自分では周りに気づかれていないと勝手に思っているだけで、周りはもうずっと前から知っているんじゃない?
だって、どこからどう見ても丸わかりだもん」
小さなカミングアウトは、仕事場でもしていたのだけど、あれだけ華やかにカミングアウトされると、もう疑う余地もないから意外と周りの反応はこんなものなのかもしれない。
そう思いながらも、いつか誰かが何か言ってくるのではないかと、今はすでにそれが楽しみになっている。

OUT IN JAPAN

いよいよ『OUT IN JAPAN』のティザーサイトが公開された。まずはムービーをご覧いただきたい。http://outinjapan.com
(この中に僕もいます)
『OUT IN JAPAN #001』の写真展は、Gapフラッグシップ原宿にて、4月21日(火)〜28日(火)の8日間にて開催される。ぜひ観に来てください!
4月24日には、本サイトが公開されるので、楽しみにしていてください。
★妹のGがハフィントンポストに記事を書きました。合わせてお読みください。:「LGBT、当たり前になるように」写真家レスリー・キーが語る、自分らしさ。そして愛のかたち【動画・画像】
http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/14/lgbt-out-in-japan-leslie-kee_n_7066944.html

渋谷区 同性パートナシップ条例の行方。

渋谷区で可決された『同性パートナシップに関する条例』は、現渋谷区長が身を艇して通してくれたようなものであり、区長の任期が今月で終わることを考えると、不穏な動きも出てきている。
日本ではじめてLGBTに対して、ストレートと並ぶ権利を認めようと試みるこの条例は、十分な論議が交わされていないとか、国より先に区がやることではないとか、内容がよくわからないとか、様々な反対意見がある中で可決に至った。
今月末の区長の選挙の結果によっては、もしも反対派の区長が誕生したら、せっかく可決された条例も、放ったらかしにされたままになり、みんなが思い描いていたように実施されていかないかもしれないのだ。
様々なLGBTに関するプロジェクトが重なって動く中、一段落しそうに思えた矢先、今回の区長選がとても重要な選挙であることがわかり、更に忙しい毎日に突入した。
渋谷区の条例に興味のある方も、またそうでない方も、ぜひこのビデオを見ていただき、一緒に考えていただきたいと思う。https://m.youtube.com/watch?v=O4iCaBMWQck
僕の弟のようなFの語るこのビデオを見ていて、僕も涙が出た。
性的少数者だからと言って、自傷行為に及んだり、自殺をしてしまう中学高校生などの若者の数は、ストレートの6倍だという。
そんなこと、絶対にあってはならないことだし、なくしていかなければならないと思うのだ。

まっちゃん

二丁目の老舗ゲイバー『九州男』に、まっちゃんに会いに行った。
まっちゃんは、OUT IN JAPANの撮影に参加してくれたので、カミングアウトにまつわる思い出を書いてもらうためだ。(間も無くOUT IN JAPANのWEBが立ち上がるので、楽しみにしていてください)
『九州男』は、30年以上になる老舗。まっちゃんは、67歳。それでももう、35年以上、ほとんど毎日の出来事をメモにして書き留めている。昔は手で紙に書いていたようだけど、今はiPhoneの中のメモに書き留めていた。
僕「まっちゃん、フレディ・マーキュリーと出来たの、いつだっけ?」
まっちゃん「あれは、19◯◯年5月11日!」
Queenのフレディ・マーキュリーは、その翌年にもまた、まっちゃんに会いに来たそうだ。お店には、その当時のフレディ・マーキュリーが、まっちゃんと肩を並べてこちらを見ている写真が飾ってある。
まっちゃんを見ていると、67歳になった今でもなんとも言えずかわいいし、若い頃はとてもモテたというのも頷ける。(巨根だというまことしやかな噂もあるのだが、確かめたことはない…笑)
みんな年をとる。僕もあなたも。そしてそれは、ほんの少し僕たちにとって、不安なことでもある。
でも、こうしてまっちゃんを見ていると、幸せそうに年をとる人もいるのだとなんだか温かい気持ちになれる。

フランス人と日本人のゲイカップル。

ホワイトアスパラガス

トルテッローネ。Nが鴨を分けてくれた。

フランス人のXと日本人のYは、つきあいだして14年になるゲイカップル。今月の頭にXの故郷に行き、親戚や友人を集めて結婚式を挙げたばかり。Xから連絡があり三人でエミリアでランチをした。
結婚式では、有名なビアンのミュージシャンがギターで歌ってくれた曲が素晴らしかったと、その時のシーンを思い出して熱くなるX。Yはフランス語がわからないので、結婚式の一部始終を、Xの弟さんが横で英語に通訳をしてくれたそうだ。
フランスでは、昨年同性婚を認めはじめたようで、ヨーロッパの中では少し遅い方かもしれない。(ちなみにイタリアはまだだ)
ふたりはずっと一緒にいられたわけではなくて、Xが大使館の仕事で台北Yが東京、Xが東京勤務になるとYがアメリカ勤務になるというように、14年のうちの11年間くらいは、遠距離でつきあいを続けていたようだ。
今は一緒に暮らし始めて3年。生活習慣の違いから小さな喧嘩をすることはあるけれども、もう、二度と離れて暮らすことは考えられないという。
薬指に同じ指輪をしながら幸せそうなふたりを見ていると、こちらまで幸せな気持ちになる。
ふたりは、ゆくゆく子どもを育てたいとも考えている。そして、ゲイカップルが子どもを持つことについて、様々なところから情報を取り寄せている。
でも、先のことを話し出すと、ふたりの顔がちょっと曇った。
X「日本に11年もいたから、私は今度、転勤をしなければならない時期なのです。ニューヨークかロンドンかデュッセルドルフに…」
Y「いつまでもこの状態は続けられないとはわかっているので、いつか、僕が仕事を諦めて、彼について行こうと思っているのです。どちらかならば、僕の仕事を犠牲にした方がいいので…」
僕は、僕が以前10年間つきあったけど、亡くなってしまったNのことや、今のKのことなんかを話した。XとYは、Nの話を聞きながら、ちょっと涙ぐんでいた。
僕「なるべくふたりが一緒にいた方がいいと思いますよ。人生は一度きりしかないのだから、こんなに愛し合っているのだから、これからも少しでも一緒に過ごした方がきっと幸せですよ」
別れ際ふたりは、「今度は友達を連れてirodoriに遊びに来ます」と言って手を振った。ふたりからは幸せなエネルギーが目に見えるように放たれているようだった。

丹田。

数年前に呼吸法を習っていた時に、「丹田を意識して、丹田を意識して。」と言われていた。「丹田」とは、おへその下およそ9センチくらいの場所を言う。
呼吸を意識してする時には、丹田を自分の方に引き寄せるように意識しながら、鼻から息を静かに出すことに集中するようにと教わった。息は吐くことによって自然と身体の中に入ってくるからと。
瞑想をする時にも、実はこの「丹田」に意識を集中することが一つの方法であると教わったことがあるし、武士が切腹をする時も、「丹田」を切り裂くことが切腹の方法であったようだ。
最近はジムとは別に、先日ここにあげた施設で姿勢を整えるトレーニングをしている。
そこで下の腹筋を意識するトレーニングで、またしても丹田が出てきた。おへその下を引っ込めて、身体を丸めずに腹筋運動をするように…。(大抵の人は、腹筋運動を身体を丸め込むようにしていないだろうか?これでは下の腹筋は使えていないということだ)
この施設は、大学野球やプロ野球選手が来ていて、痛みを和らげたり、リハビリをしながら身体がより円滑に動くようにと指導を受けている。そして彼らにも同じように「おへその下を意識して…」という指導が入る。
施設でトレーニングをした後は、毎回腹筋が筋肉痛になっていて、この分だとうまくいけば、夏までにすっきりとしたお腹になるのも夢ではなさそうだ。
そしてその手がかりは、「丹田」にあったのだと、今になってはたと気づいたのだ。
気づいてから、ことあるごとに自分で「丹田」を意識するようにしている。電車に座る時も、デスクに座る時も、立っている時も、「丹田」を意識して体幹をきちんと使えるようにと。
そうそう、人前で話をする時も、「丹田」に意識を集中することができれば、落ち着いた話し方が出来るという。
「丹田」とは、人間にとってとても重要な場所だということがわかりはじめたところだ。