さよならを言う時はいつも。

昔、10年間つきあった人は、僕の家にほとんど泊まっていて、朝会社に行く時なんかに彼を送り出した後に、道の角から消えるまで4階の窓から見送ったものだ。
その時に決まって彼は、こちらをもう一度振り向いて、僕が手を振るのを確かめてから、彼も、「バイバイ。バイバイ。」と言って手を振ってくれた。
彼には実は、奥さんがいた。
ある日彼が寝ている時に、寝言で誰かに「バイバイ。バイバイ。」と言うのを聞いた奥さんは、彼に聞いたそうだ。「誰にバイバイしてたの?」と。
新大阪の駅で、西へ向かうKを見送りながら、ホームで「バイバイ。バイバイ。」と言っていた。Kは、瞳の奥に色々な言葉を抱えたまま、僕に手を振っていた。
人は、一生のうちに何度、人を見送るのだろう。
また会えると知りながらも、さよならを言う時はいつも、胸の奥がかすかに痛い。

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