河久。

手羽先揚げ

万願寺の炙り

しめの一口おにぎりと赤だし

京都で、15年くらい通っている店の一つに、『河久』がある。
昔つきあっていた人に連れて行ってもらった時に驚いたことは、『何てことのない普通の料理が、なぜこんなに美味しいのか…』ということだった。
京都には、『仕出し屋さん』がいくつもあって、一般的に知られているのは、『菱岩』の美しい和食の仕出しだろうか。
この『河久』も仕出し屋さんなのだけど、河久の料理は、和洋食といった感じ。汲み上げ湯葉もあれば、牛ヒレ肉の照り焼きなんかがあるのだ。
大将は75歳。ハンサムで、お父さんは京都では有名な料理人だった。奥さんは73歳で、繊細なやさしさを持っている人だけど、久しぶりに会ったら、脚を少し悪くしていて心配になった。
今まで食べた手羽先料理の中で、最も美味しい手羽先は、ここ河久の『手羽先揚げ』だろう。じっくりと中まで染み込んだ塩味はさっぱりとしていて、何本でも食べられそうだ。
昔は手羽先など誰も食べない東京オリンピックの時代に、大将が料理人として選手村に行った時に、インド人シェフの調理法からヒントを得たという。
そして、この店の一番のおすすめ商品は、仕出し屋さんならではのお弁当だ。蓋を取ると中にはギッシリと、鴨ロース、牛ヒレ肉の照り焼き、手羽先揚げ、春菊の胡麻和えなんかが詰まっている。この弁当を買って、帰りの新幹線で食べると、隣の人の羨ましそうな視線が気になることがあるくらいだ。
大将や息子さんと久しぶりに飲みながら話が出来て、年をとったなあ…と感じるとともに、それだけ時代が変わったのだと感じた。『食べログ』のようなものに、本当は載せたくないし、わけのわからない一見さんに来られても困ると言う息子さんは頑なだけど、そっと応援したくなる名店。
★河久http://www.kawahisa.com

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