ローマ環状線、めぐりゆく人生たち

ベネチア国際映画祭で、ドキュメンタリー映画が金の獅子賞受賞という快挙を成し遂げた。
7つの丘で成り立つ巨大都市ローマを囲むように、環状線は走っている。それは、華やかな都心でもなければのんびりとした郊外でもない、都市の周辺部で暮らすどちらかというと人目につかないような人々の暮らしを、この映画は丁寧に追っている。
椰子の木の中の音を調べて研究をしているお爺さん。
没落貴族になってなお、貴族の称号にしがみつく男。
近代的なマンションに暮らす老紳士と娘。
痴呆症の母の面倒を見ながら、事故現場に駆けつける消防隊員。
ウクライナ人のお嫁さんを持つうなぎ漁師。
車で暮らす、トランスジェンダーの売春婦たち。
カメラは、一人一人の人生にそっと寄り添い、その過酷な人生もやさしさの中にある人生も、つぶさに捉えている。
このドキュメンタリーを見ていると、いつしか自分とは全く違う人の人生を想い、その苦労や不安、毎日の暮らしを想像してしまう。
誰の人生にも驚くようなドラマがあり、それぞれが時には過酷な人生の主人公だということがわかる。
ありふれていて、他の誰かと変わらない人生の人など、きっと誰一人いないのだろう。
やがてこの映画が、ローマ環状線で暮らす限られた人たちだけの人生の話ではなく、自分の人生の話であることに思い至る…。
★ローマ環状線、めぐりゆく人生たちhttp://www.roma-movie.com/sp/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です