フリー・フォール

先日、ドイツ人のカップルと偶然飲み屋で一緒になって、この『フリー・フォール』を映画祭でやると言ったら、彼らが「素晴らしい映画だよ。ブロークバック・マウンテンよりも好きだ」と言っていた。
警察につとめるマルクは、妻が妊娠していて家も引っ越したばかり、すべてが順風に思えるのだけど、警察のトレーニングでカイに出会い、自分の中で封印していた欲望が燃え上がり、生活のバランスを崩していく話。
マルク自身の中にある『ホモフォビア』が痛い。なんとか生活を保とうとするあまり、カイに対して酷い当たり方をするのも、見るに耐えないものだ。
そして、マルクの奥さんの精神的な苦痛を考えると、自分のセクシャリティを隠して嘘をついて生きるのがいいのか、自分のセクシャリティに正直に生きるのがいいのか、自然に答えに導かれる。
ホモフォビアの問題を、じっくりと丁寧に描いた秀作。

アゲンスト8

アメリカでは、今でこそ同性婚を認めている州がどんどん増えているのだけど、一度は同性婚が合法化されたカリフォルニア州で、2008年、結婚を男女間に限定する州憲法修正案『提案8号』が通過して、事実上同性婚ができなくなった。この『提案8号』を人権侵害として州を提訴したゲイのカップルとレズビアンのカップルのドキュメンタリー映画。
二人の敏腕弁護士をつけて、平等の権利を勝ち取るために法廷で戦う彼らの姿は、我々すべてのセクシャルマイノリティを代表していた。
彼らの戦いがあったからこそ、今のアメリカがあるのだし、今の我々日本のセクシャルマイノリティも少なからず影響を受けているのだ。
法廷で、恋人のことを自分以上に愛していると語った男性の言葉を聞きながら、涙が溢れて止まらなかった。
この素晴らしいドキュメンタリー映画が、いつかもっと広く日本において公開されることを願うばかりだ。
★http://thecaseagainst8.com

ハワイ

『東京国際レズビアン&ゲイ映画祭』二日目は、『ハワイ』と『ヴァギナウルフなんかこわくない』の二本を観た。
『ハワイ』は、アルゼンチンの映画。小さな頃に一緒に遊んだ幼なじみが、再び昔の町で出会い、ともに時間を過ごすうちに、男同士の友情が微妙に変化してゆくエロティックな物語。
カメラが登場人物を描きながら、じれったいくらいにゆっくりと話が進んでゆく。ゲイ映画祭だから、当たり前のようにエッチなシーンを期待して観ていたのだけど、これは完全に裏切られることになる。
ひょんなことから一軒家で一緒に暮らしはじめたふたりは、まるで小さな子どもの頃のように無邪気に遊ぶ。空気銃で射撃をしたり、走って競ったり、川で泳いだり…昔と何も変わらないように見える幼なじみのふたりが、やがてお互いへの性的な興味が溢れ出し、関係性が微妙に変わってゆく。
セックスシーンはないのに、なんていやらしい映画だろう…。最後に大画面いっぱいにふたりの男のキスシーンが広がるのだけど、その美しさに胸が張り裂けそうだった。

GBF

246にたなびくレインボーフラッグ

スパイラルホールでの『東京国際レズビアン&ゲイ映画祭』初日、オープニングの映画『GBF』を観た。
GBFは、ゲイのボーイフレンドのこと。アメリカではセレブをはじめ、ゲイのボーイフレンドを持つことがステイタスとされるくらい、華やかな女性のそばには必ずと言っていいほど、ゲイの友人がいるものらしい。
一つの高校で、政権争いをしている3人の個性的な女子高生たちが、自分もゲイのボーイフレンドを獲得して、他よりも一歩抜きん出て学校のトップアイドルになろうと画策する話。
Gleeを思わせるテレビドラマのような安い作りだし、内容もバカバカしいのだけど、所々で腹を抱えて大笑いしてしまった。
ゲイゲイしさをここまで笑にしながら映画を作って公開するアメリカは、やっぱり日本よりも20年くらい先を行っている気がする。
オープニングにふさわしい爽やかでバカバカしいコメディだった。

希望の鳥。

生きてゆくことは、順風満帆な時ばかりではないということを、先日のY&E夫妻から聞かされた。
いつも幸福そうに見える人や家庭であっても、人知れず困難な時を過ごしていて、人生とはまさに、『山あり谷あり』なのだと・・・。
これから僕が生きてゆく人生で、山であれ谷でもあれ、どんな時でも『希望』がありますように。そんな言葉とともにこの希望の鳥『LOA』をいただいた。ピンク色の帽子の色は僕のイメージだそうだ。笑
長く厳しい冬を過ごすアイスランドで、『LOA』という千鳥は、春になると太陽と夏を運んでくる。そのあたたかな存在、さえずりや愛らしい姿が、雪と悲しみを洗い流してくれると言われている。
2008年に経済危機により国中が失意のどん底にあった時に、陶芸家のインガ・ホスクルズドッティルは、人々の心に太陽を取り戻したい。悲しみを洗い流し元気になって欲しいと願い、『ロア』を作ったそうだ。
この、一つ一つ手作りの『LOA』は、アイスランドの変わりやすい天気のために手編みのニット帽をかぶり、黒い斑点は火山の国を表している。
人間は、姿も形もないものに名前をつける。
『希望』
なんて美しい言葉だろうか。

どさくさカミングアウト。

フカヒレ入り手羽先揚げ

ハマグリのガーリック風味

香ばしい車海老

今日は、僕のセクシャリティも知っているアライのY&E友人カップルに食事をごちそうになった。
Yさんの会社のカタログのアートディレクションのお手伝いをしたので、一緒に仕事をしてくれた会社のコピーライターのSさんとふたりで千駄ヶ谷の『新亜飯店』へ。
長嶋一茂さんが10本も食べたというフカヒレ入りの手羽先揚げなど、食事の美味しさもさることながら、この『新亜飯店』は、文化革命の時に上海から逃れて来た人がオーナーでEさんのご学友でもあること。なんと28年前にEさんが設計したお店は、今もそのままの姿で営業しているということに驚いた。
無事に終わった仕事の話から、国立競技場の新建築に対する不安、集団的自衛権の話、話題は様々に拡散して、当たり前のように同性婚の話とLGBTの話へ。
同席していたSさんは僕がゲイだということは知らなかったので、LGBTがなんなのか?という話しの流れの中で、「あのー、実は僕はゲイなんですけど・・・」と話して、そのまま会話を続けた。
しばらくして、「驚いた?」と僕が聞くと、
S「いえ・・・なんか、私に話してもらえて、うれしいです」と言った。
そしたらYさんが、「人がゲイだってことなんて、私がレモンが好きということとなんの違いもないと思うの・・・なんでみんなそんなに騒ぎ立てたりするのかしら・・・」
さすがは周り中ゲイの友人たちに囲まれているYさん。そんな話しを聞いて笑ってしまったのだけど、実際の話、その人のセクシャリティなんて、その人の嗜好であって、人間として変だとか劣っているということではないのだ。
その後、『irodori』に流れて、またしても偶然集まっていた友人たちに囲まれて、温かく、楽しい夜だったのです。
★新亜飯店http://tabelog.com/tokyo/A1306/A130601/13001989/

東京国際レズビアン&ゲイ映画祭『海外短編集』

再会の夏休み

パーフォーミング・ガール

ロニーと僕

僕が毎年楽しみにしている『東京国際レズビアン&ゲイ映画祭』が始まった。いつもは表参道のスパイラルホールで行われているのだけど、今年は先行して、ユーロスペースでも映画祭をやるようになった。『海外短編集』は、残念ながら7/15のみの上映だったのだけど、見応えのあるセレクトだった。
『ミュリエルの妊活奮闘記』
パリで暮らすレズビアンのミュリエルは40歳を迎えた。彼女の夢は自分の子どもを産み、自分たちで育てること。レズビアンカップルが自分の子どもを産み、育てるというのは、社会的にもいろいろな偏見の目にさらされるのだろう。
子どもの成長に従って、いつか子どもが「自分の親はなんでふたりともお母さんなのだろう・・・」と思った時に、どうやって対応するのだろうか・・・。
様々な不安はあるものの、パートナーとともに、子どもを持つ夢に近づくために奮闘する興味深い話。これからの日本でも。こんなカップルがもっともっと増えてゆくに違いない。
『再会の夏休み』
バカンスを子どもふたりと奥さんとともに過ごしに来た海辺で、昔の恋人に再会するというスリリングな話。イスラエルの映画なのだけど、胸がドキドキするスリリングなゲイ映画だった。
『パフォーミング・ガール』
トランスジェンダーであるスリランカ系アメリカ人のパフォーマーが、保守的な家庭でカミングアウトするまでの大変な道のりを、をご両親のインタビューを交えながら表現した爽快なドキュメンタリー。
『ロニーと僕』
彼女と別れて、自分が男が好きだと気づいた青年が、幼なじみと小旅行に行くというドキュメンタリータッチの映画。全編をiPhone5で撮影されたという斬新な作品。
今年、この映画祭で上映される映画作品は15本とコンペティション。毎年のことだけど、この映画祭でしか観ることのできない作品がいくつもあるものだ。スパイラルホールにたなびくレインボーフラッグを見ると、いつも言葉にできない感動で胸が熱くなる。お時間のある方は、お見逃しなく!
★東京国際レズビアン&ゲイ映画祭http://tokyo-lgff.org/2014/

玄琢。

赤坂五丁目交番の近くの小さな路地を入ったところに、とんかつ屋さん『玄琢(げんたく)』はある。
赤坂へは、いきつけの美容室があるのでちょくちょく顔を出すのだけど、その美容室のみんながすすめてくれるのではじめて行くことが出来た。
ご夫婦でやっているお店は、大将が身体を壊してから、しばらくお店を閉めていたのだけど、最近またランチのみオープンするようになった。大将の身体の具合が悪いときはお休みだし、15時までの営業になっているけれども、大将があまりにも疲れてしまっていたら、早めにお店を閉めてしまう。
僕は、とんかつ自体ほとんど興味がないし、1年に1度食べるか食べないかだと思うのだけど、ここの『厚切り』をいただいたら、大きいのに脂っこくなくてさっぱりしていて、それでいてお肉の味がぎゅっと凝縮されていて驚いてしまった。
4センチ以上ありそうな厚みのある『厚切り』をオーダーすると大将が、「10分以上かかるけどお時間いいですか?」と聞いてくる。待つこと10分。分厚いかつに山盛りのキャベツが盛られてくる。奥さんが、「お塩も美味しいですよ」とすすめてくれるので、塩を振って食べてみると、豚肉のうまみがより一層感じられる。
ひっそりと小さな路地に佇む『玄琢』。ご夫婦でやっているこんなこだわりの店は、そうそうどこにでもあるわけではないだろう。この先、大将が元気なうちは、この小さな良店に時々食べに訪れたいと思う。
★玄琢http://tabelog.com/tokyo/A1308/A130801/13032178/

ケンカをして気づくこと。

実はKとつきあってから、今までに3回くらいケンカをしたことがある。
ケンカと言っても、突然Kが噴火してしまい、僕は言葉を返すのだけど、まともな話し合いにはならずに終わることが多い。笑
これは、ふたりのコミュニケーションの違いでもあるのだけど、Kは日頃から、自分の感情を表に出さない性格で、いつも平静でほんわりしているように見える。
僕は、思ったことや話したいことはなるべくその場で言うし、感情がすぐに顔に出るからわかりやすいとは思う。またそれがかえって、鼻につくこともあるだろう。
二人でいても、なんでも受け身のKは、どこに行くか、何をするか、自分から何かを言い出すことはない。ご飯も、映画も、どこに行くかも、決めるのはすべて僕だ。(年齢の差もあり、Kはあえて僕を立てているようなところもあるのだけど)
でも、まったく違う人間のすることを横で見て従っていると、色々とその『違い』が気になりはじめて、それがある極限まで行くと噴火するようだ。そして、それはいつもとても些細なことで始まってしまうものだ。
今回の大分では、前回の福岡で起こってしまったケンカを、なんとかふたりできちんと話し合いたいと思っていたのだけど、結局、ふたりでゆっくりと時間を過ごしているうちに、ふたりとも、なんであんなことで言い合いになったのだろう…と思えて来た。
2年間近く、ふたりで色々なところに旅行をしたこと。美味しいものを、ふたりで食べたこと。失敗をして笑ったこと。様々な思い出が蘇り、それを話して笑うことが出来たし、ふたりが出会った頃のことも思い出すことが出来た。そして、今までよりももっと強く結ばれた気がする。
でも、僕が本当に思ったことは、たとえふたりがいつか離れ離れになってしまったとしても、ふたりで経験したことはなくならないだろうということだ。
誰かとつきあうということは、そんな宝物のような瞬間を、いくつもいくつも重ねることなのだ。

吉鳥。

ももの炭火焼

Kとつきあい出してから、大分には10回以上来ているのだけど、大分市内には、ふぐの良店はあっても、残念ながら美味しくて気の利いた食べ物屋はほとんど無い。
例えば『食べログ』で大分市内を検索すると、上位20位の中の15軒くらいはラーメン屋さんだったりする。
そんな中で、久しぶりになかなかいい焼鳥屋さん『吉鳥』という店を見つけた。
場所は、大分随一の飲屋街『都町』の中にあり、カウンターと掘りごたつ式のテーブルが並ぶ。
ももの炭火焼は、まっ黒だけど身がプリプリしているし、つまみも酒盗とクリームチーズとか、豆腐のチーズ風味とか、少し変わっていて美味しい。
若鶏の塩唐揚げは肉汁がたっぷりジューシーだし、ぼんちり、せせり、ヤゲン、焼き物はどれも本当に美味しい。
大分は、唐揚げも美味しく日本一の消費量だし、とり天という鳥の天ぷらは、有名な郷土料理。そのせいなのかわからないけど、鳥の食文化はちょっと目を見張るものがある。
もし、大分市内に行かれた際は、お金があればぜひふぐの店『良の家』がいいけど、鳥を召し上がりたい時は、『吉鳥』に行くのもいいかもしれない。
★吉鳥http://s.tabelog.com/oita/A4401/A440101/44004702/