タマネギと白花豆とパンチェッタのスープ。

以前、ここでミネストローネを紹介したことがある。http://jingumae.petit.cc/banana/2093859
ミネストローネには何を入れてもかまわないけど、トマトを入れすぎないことと、灰汁の強い野菜(ほうれん草)などは入れない方がいいというのが僕の個人的な考えだ。トマトを入れすぎると、トマトスープになってしまって他の野菜の味わいを楽しめなくなるということと、灰汁の強い野菜は、その灰汁がスープ全体に回ってしまうから。
また、必ず入れた方がいい野菜もある。それは、タマネギと白花豆。もし2種類の野菜で美味しいスープを作るなら、タマネギと白花豆がいいかもしれないと思う。コクを出すために、パンチェッタを一緒に煮たら、冬のように寒い一日にぴったりのスープが出来上がる。
★タマネギと白花豆とパンチェッタのスープ。
1.オリーブオイル大さじ1に、微塵切りにしたタマネギ2つを入れて、油が回ったら食べやすい大きさに切ったパンチェッタ70グラムくらいを入れて軽く炒める。
2.水を600ml入れて沸騰したら弱火にして20分したら、茹でてあった白花豆をカップ1杯くらい茹で汁ごと入れる。茹で汁は200mlくらい。再び沸騰したら塩を軽くふって10分くらい煮て完成。
3.味を見て塩を足して、器によそい黒こしょうをひいて、オリーブオイルを回しかけたら出来上がり。コクが欲しかったら、パルミジャーノを擦ってかける。
※白花豆は、まとめて茹でて、小分けにして冷凍保存しておくと便利ですよ!

ある過去の行方

イランの監督『アスガー・ファルハディ』による前作『別離』という映画を観た時に、「世界にはまだこんな得体のしれない天才がいるのか…」と驚愕したのを憶えている。結局『別離』は、アカデミー賞の外国語映画賞を獲得した。
今回の作品も、緻密な脚本と細やかな演出で、登場人物たちの性格や過去が次第に明らかになってゆくさまは見事だ。
4年前に別れた夫が、正式な離婚を申請するために故郷のイランからパリの元妻の家に戻り再び娘たちとも会うことになる。そこには、元妻の新しい恋人がいて、目に見えない問題が蜘蛛の糸のように巻きついている…。
作品自体はサスペンスなのだけれども、映画を観ているうちに、様々な登場人物たちのそれぞれの立場になり、自分自身が試されているような気持ちになっていく構造は、前作と同じだ。
そして観終わってみると、長く重い小説を、やっとのことで読み終えたような、不思議な読後感がある。
今作は、カンヌで主演女優賞を獲得したのだけど、その主演女優が『アーティスト』の主演の『ベレニス・ベジョ』だったのにも驚いた。
★ある過去の行方http://www.thepast-movie.jp/

たわいもない週末。

S太郎に誘われて、K太郎と三人で神場へ。
S太郎は四月から、掛け持ちしていた仕事を辞めて、自分の会社一本にして家でパソコンに向かっている。そのせいか、会うなり目が潤んでいて、「Tちゃん、本当に会いたかったの…」と言ってくる。
「外にも出ないでパソコンの中だけで仕事をしていると、精神的にもあまりよくない気がする…」と言う。
K太郎は相変わらず、自分の得意先とのやり取りでストレスが溜まっているみたいで、来るなりクライアントの愚痴が始まる。
それでも、食事をしながら近況を語り合っていると、みるみるうちにふたりの顔がうれしそうに輝きはじめる。
Bridgeに行くと、久しぶりに常連たちが集まってきて、それぞれに話したいことを話していく。数ヶ月ぶりにいるKaは、55歳くらいだろうか、前は毎週末のように飲みに来ていたものの、最近は仕事の関係でめっきり来なくなった。
帰り際のKaに僕は、「元気だった?たまには顔見せなよ!」と声をかける。
Kaは、「やっぱり今日、飲みに来てよかった。あんたたちが来る前は、ほとんど知らない人たちばかりだったけど、本当に来てよかった…」と言って涙を浮かべながら帰って行った。
友人たちに会って、お互いの近況を語り合いながらたわいもない会話をする。
そんななんでもないことで、僕たちは支え合っているのかもしれない。
こんないつものたわいもない週末が、僕は好きだ。

僕の会社の社員たち。

会社の同じ局の同期と飲みに行った。
僕の会社の社員の中には、様々な会社の社長や政治家などのご子息がゴロゴロいる。そこで、1年目の研修の時に初任給のすべてをつぎ込んでルイ・ヴィトンのハードケースを買って持ち歩いていたKoのことを誰かが尋ねる。(Koにとってはお金は使いきれないほどあるのだろうし、僕の会社で働くことは、生活の手段ではないのだ)
「Ko、今頃どうしてるんだろう?」すると、「おばあさまが集めた美術品が凄い沢山あるらしくて、こないだ3月で会社を辞めて、今は芦屋で美術館を作ろうとしているみたい」
「あいつ、芦屋大学だから、半端ない大金持ちなんだよ。そもそも芦屋大学とは、他の大学になかなか入れないご子息のために、(それなら大学を作りましょう。と)芦屋に住む大金持ちたちが作った大学なんだから。停まってる車も、ポルシェとかベンツとかそんな車ばっかりなんだよ」
彼らのように大金持ちや、政治家や、著名人だったりする親の子どもと一緒に仕事をすることはよくあることなのだけど、時々僕たちとは違った感覚に驚かされることもある。
この日聞いた話では、後輩にF社の娘さんがいて、クリエーティブ局に配属されてプレゼン前に一緒に徹夜作業をしていたらしい。真夜中も過ぎた頃、ふいにその子がいなくなってしまいどうしたのかと思ったら、他の会議室に行っていたようで、なんと、ネグリジェに着替えて再び会議室に戻って来たという。
「会社で徹夜って、なんだか味気ないから着替えてきました」
僕の同期はそれを見て大笑いしたそうだけど、その場にいた先輩は火山が噴火したように怒って、そもそも会社とは何かという話を延々としたという。
僕はそんな彼女のような子がいるこの会社の、ちょっと読めないくらい多様で不思議な人材を、とても面白いと思っている。(会社の将来のことは、ちょっと心配にもなるけれども)

アライって知ってますか?

『アライ』という言葉は、最近よく耳にするのだけど、英語の『straight ally ストレート アライ』から来ていて簡単に言うと、LGBTを理解して、LGBTの周りでともに生きている人たちで、活動を応援してくれたり、時にはともに戦ってくれるストレートの人たちのこと。
僕たちの周りには驚くほど多くのアライの人たちがいて、本当に力添えをしてもらっている。
例えば、『Tokyo Rainbow Week 2014』のメイキングビデオを、本業が忙しい中、徹夜を何日もして編集してくれたのはアライの女の子だ。
あの中に写っている人たちの中にも、ストレートアライの友人が何人かいる。
僕が会社の人ではじめてカミングアウトした女性は、驚くことに弟さんがゲイだったり…
ここ最近とても仲良くしていただいている僕よりは20歳近く上のご夫婦もアライと言っていいだろう。
そして当たり前のことだけど、誰しもがはじめからアライなのではない。
アライの人たちは、ストレートとして日常を生きているのだけど、きっと何かの拍子に周りにLGBTの人がいることを知り、そこから少しずつLGBTについて学び、やがてゆっくりとアライになっていくのだ。
中には僕たちがアライの鑑と呼ぶ『スーパー アライ』と呼ばれるような頼もしい存在もいる。
アライの人たちと一緒にいると、そこに垣根はなく、人間として信じ合い繋がっている確かなものを感じることが出来る。
そして、これからの日本を、もっとLGBTの人たちが暮らしやすい社会に変えてゆくことが出来るとしたら、アライの人たちの友情や応援なくしてあり得ないに違いない。
※ストレート・アライ(英語: Straight ally)は人権の平等化や男女同権およびLGBTの社会運動の支援や、ホモフォビアへの異議を投げかける異性愛の人々を指す言葉。彼らはLGBTの人々が社会的に不利な立場に置かれていると感じ、ホモフォビアやヘテロノーマティビティ(異性愛を標準と捉える価値観)に対する解消活動や異議の表明を行っている。〈Wikipediaより引用〉

Bette Midler 1

ベット・ミドラーが好きだ。
若い時にはお金がなく、ニューヨークのゲイのバスハウスで歌っていたらしい。
時々彼女の歌声を聞きたくなるのは、人生で底辺を味わった人が持つ、強さとやさしさを感じるからかもしれない。
好きな曲は沢山あるけど、シナトラで有名なこの曲は、テレビ番組のライブで歌ったとは思えない深みのある歌声だ。

歌い終って彼女が立ち上がると、その衣装を見ただけで大笑いしてしまう…
いつか、ベット・ミドラーのライブに行くことは、僕の夢なのです。
One For My Baby (And One More For The Road)
It’s quarter to three
there’s no one in the place except you and me
So set’em up, Joe
I’ve got a little story you ought to know
We’re drinking, my friend
to the end of a brief episode
Make it one for my baby and one more for the road
I got the routine
so drop onother nickel in the machine
I’m feelin’ so bad
I wish you’d make the music dreamy and sad
Could tell you a lot
but you’ve got to be true to your code
Make it one for my baby and one more for the road
You’d never know it
but Buddy, I’m a kind of poet
and I’ve gotta lot of things to say
And when I’m gloomy
you simply gotta listen to me
until it’s talked away
Well that’s how it goes
and Joe, I know you’re getting anxious to close
So, thanks for the cheer
I hope you didn’t mind my bending your ear
This torch that I’ve found
must be drowned or it soon might explode
Make it one for my baby and one more for the road
That long long road
あの子のために一杯(そして旅路のためにもう一杯)
3時15分前だ
店には君と俺しかいない
もう片付けてしまえよ
ちょっと話したいこともあるんだ
短いエピソードを語り終えるまで
一緒に飲もうじゃないか
作ってくれよ 俺のベイビーのために一杯
そして 腰をあげるためにもう一杯
いつもの習慣なんだよ
ジュークボックスに硬貨を落してくれ
ひどい気分だから
なにか哀しい唄にしてくれないか
話はいろいろあるんだが
でも秘密は守らないといけないぜ
作ってくれ あの子のために一杯
そして 旅立つためにもう一杯
君は知らないだろうが
俺は一種の詩人でね
語ることはたくさんあるんだ
で、俺が憂鬱でいるときは
ただ聞き役でいてくれ
話が全部終わるまで
まあ そういう具合なんだ ところでジョー
閉店の時間が気になるようだな
慰めてくれてありがとう
聞き役にさせて悪かったね
俺の松明は 早めに消しておかないと
爆発しそうだったんだ
さて 一杯作ってくれ 
俺のベイビーのために
そしてもう一杯
これからの長い長い旅路のために
Johnny Mercer
Harold Arlen

カミングアウトの行方。

会社では、僕のセクシャリティのことをおおっぴらにはせずに今まで生きて来たのだけど、2年前に社内の編成替えがあり局が大きく移動になった。
入社以来20年以上ずっとそばで支えてくれていた先輩や後輩と別れることになって少し寂しさはあるものの、「ああ、これで少し自由になれるかもしれない・・・」と肩の荷が下りたように感じていたのは確かだ。
今回、『TOKYO RAINBOW WEEK』でMISIAのミュージックビデオに出たこともあり、自然にセクシャリティのことも社内に知れ渡るかもしれない・・・と思ってはいた。
今日、社内では有名なゲイの先輩とすれ違いざま話す機会があったのだけど、その先輩が、「Tが社内の会議でカミングアウトをしたって噂で持ちきりみたいだよ。お前、いつそんなことしたの?」と聞かれた。
僕はまったくカミングアウトをした心当たりもないので、「え?そんなことなんにもしてないけど・・・」と答え、噂というのはこうやっておもしろおかしく拡大されて伝わるんだよな・・・と思っていた。
「そういえば、このところすれ違う後輩や先輩の視線がなにげにおかしかったかもしれない・・・」
「いつも僕のデスクに遊びに来ていた一つ下の後輩が、暫く姿を見せないのは、この噂が間違いなく彼の耳に入ったからだろう・・・」
「噂が広く知れ渡ることによって、どんな風に僕の会社人生が変わってゆくのだろう・・・」
今までは家族のように仲良く接してくれていた人の中にも、僕が、自分とは違うセクシャリティだと知ったことで、気持ち悪いなどと思って遠ざかる人もいるだろう・・・。
でもそんな中で、今までと変わらずにそばにいてくれる人がいたら、本当の意味で僕を信頼してくれている人に違いない。
これから暫く社内では、予測の出来ない風当たりの強さになるのかもしれないけど、なんとか無事にやっていけますように・・・。

ギリギリの人生。

大分からの帰りの便を、勝手に20:15発だと思っていたのは、ネットで見た時刻表が昔のものだったからだ。実際には、19:55発だった…。
知らされたのは、空港までのリムジンバスが遅れて、別のバスが何故だか僕を迎えに来て、別の停留所で暫く待たされていた時だった。
雨で渋滞は固まり、途中でもう絶対に間に合わないとわかり、ソラシドエアに電話を入れた時は出発の15分前。これからまだ、20分はかかる道の途中だった。
電話をして一つよかったことは、公の交通機関の遅れの場合は、遅延証明書をもらってカウンターで手続きをすると、翌日の便に無料で変更していただけるということを知ったこと。
それから、空港のホテルに泊まろうか、また市内に戻ろうか…明日のミーティングは時間をずらさなければ…クライアントとのアポイントも…としなければならないことを考え続けた。
バスが着いた時は出発時刻を過ぎた20:00だった。遅延証明書をもらって、カウンターに行き聞くと、まだギリギリ間に合うとのこと。走って飛行機に駆け込んだ。
普通は70分で着く空港バスが110分かかったのは、雨が降ったからといってあってはならないことだと思う。
それでもやはり、国内線だから30分前に行けば余裕だと高を括っていた自分が一番悪いのだ。間に合わないと思いながらジリジリと時間を過ごすあの脂汗の出るような経験が教えてくれることは、すべて原因は自分にあるということだ。
雨の中、動き出す飛行機の中の見えない乗客たちに向かって、手を振り続ける飛行場の人たちに、いつも以上に頭の下がる思いだった。

16歳違いのおじさん。

先日、福岡から大分にソニックという電車で到着する頃、Kが僕に言った。
「誰かに会ったら、Tさんのこと、おじさんと言いますからね…」
僕は、「16歳違いのおじさんというのもなかなか微妙だろうけど、お兄さんではさすがに無理があるよな…」と言って笑った。
Kと大分の町中で一緒にいると、思いがけずKの職場の人に会うこともある。
都町という繁華街を抜けて、晩ごはんの店に向かって歩いていたら、Kがいきなり声を上げた。
「ドクター◯◯だ!」
僕たちはたまたま3mくらい信号のところで離れて歩いていたので、Kはドクターと奥さんに会釈をして、僕はそのまま通り過ぎた。
Kは、「びっくりしたけど、あの人は特に誰といたかなど言いふらす人ではないからよかった」と言った。
食事を終えて、軽く飲んだ帰り道。Kがローソンに寄りたいと言うのでローソンに入りかけた時、「あ!◯◯が出て来た!Tさん、僕は無視して先に入って!」と言った。
僕は、何事もなかったようにローソンに入り、商品を見ていると、少ししてからKが入って来て、「前はよく一緒にカラオケ行ったりして遊んだ同僚なんだけど、もう、つきあいはほとんど行かなくなっちゃって…出る時も別々に出ましょう」と言って別々に店を出た。
僕は、こんなやり取りを、実は結構楽しんでいる。なんだか秘密の関係みたいでちょっとドキドキする感じが面白いとさえ思っている。
Kは、毎回バレるのではないかとドキドキしているのがわかる。
※念のために書いておくと、僕は女装しているわけでもないし、わかりやすくゲイの看板を持っているわけでもない。でも、見る人が見たら、ゲイだとわかるある種のオーラは溢れているかもしれない。
そして、日本中で、僕たちのような秘密カップルは、沢山いるのだろうな…と思う。
今のままの秘密結社も十分面白いと思うけど、いつか、20年くらい経ってもっと日本が変わったら、普通にゲイのカップルが歩いていても、誰もなんとも思わない世の中にならないだろうか…。

大分のゲイバー。

大分には、ゲイバーが2軒しかない。一軒は老け専の店、もう一軒は、『exage エクサージ』と言って20代30代40代を中心に幅広い年齢層のお客さんが来る店。
Kが歓迎会があるというので、僕はその間、エクサージに行って飲んでいることにしたのだけど、金曜日だというのにお客さんが僕だけ…その後、1時間くらいしたらもう一人41歳の人がきたけれどその後もずっとそのメンバーのままだった。
お店のママ『チルさん』に、「大分の若いゲイの子たちは、バーに飲みに来ないんですか?」と聞くと、「そうね。ほとんどはネットで男も探すし、若い子は特にお酒を飲まなくなっているのもあるし…ゲイバーに来る必然性もないかもね…」と。
Kにしたって数ヶ月に一度飲みに出るくらいで、それも、チルさんと仲がいいからたまに来るだけだと言っていた。
大分などの地方で暮らしていると、周りにゲイであることを知られることを恐れている人たちもとても多いと聞く。ジャックドなども、顔を出さずにやっている人が多いらしい。
僕は、「ゲイバーに行かずに、今の子たちは、どうやって友達を作るんですかね?僕は、二丁目があったから、年上や同年代、年下と、世代や職業を超えて様々な友達が出来たと思うんです」と言うと、チルさんは、「やはり、ほとんどネットでこと足りてしまうのでしようね…」と。
その後、二人お客さんが増えながらも、独身のゲイが地方で生きてゆくことや、年を重ねてゆくこと、長くつきあいを続けていくこと、一人人間と二人人間など、様々な話題で盛り上がったのだけど、そんな話をみんなで出来るというのも、ゲイバーという存在があるからだろう。
「僕がもし、大分に住んだら…」と言うや否や、
Kが、「絶対3日で東京に帰っちゃいますよ!」と叫んだ。
★EXAGE
〒870-0034 大分県大分市都町2-3-6 東洋会館2階
097-532-6101