ある過去の行方

イランの監督『アスガー・ファルハディ』による前作『別離』という映画を観た時に、「世界にはまだこんな得体のしれない天才がいるのか…」と驚愕したのを憶えている。結局『別離』は、アカデミー賞の外国語映画賞を獲得した。
今回の作品も、緻密な脚本と細やかな演出で、登場人物たちの性格や過去が次第に明らかになってゆくさまは見事だ。
4年前に別れた夫が、正式な離婚を申請するために故郷のイランからパリの元妻の家に戻り再び娘たちとも会うことになる。そこには、元妻の新しい恋人がいて、目に見えない問題が蜘蛛の糸のように巻きついている…。
作品自体はサスペンスなのだけれども、映画を観ているうちに、様々な登場人物たちのそれぞれの立場になり、自分自身が試されているような気持ちになっていく構造は、前作と同じだ。
そして観終わってみると、長く重い小説を、やっとのことで読み終えたような、不思議な読後感がある。
今作は、カンヌで主演女優賞を獲得したのだけど、その主演女優が『アーティスト』の主演の『ベレニス・ベジョ』だったのにも驚いた。
★ある過去の行方http://www.thepast-movie.jp/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です