はじまりは5つ星ホテルから

僕の大好きな女優である『マルゲリータ・ブイ』が出ていると聞いて、公開を心待ちにしていたイタリア映画『はじまりは5つ星ホテルから』を観に行った。
イレーネ(マルゲリータ・ブイ)は、5つ星ホテルの覆面調査員。自分の身元を明かさずに、世界中の5つ星ホテルを泊まり歩き暮らしている。
決まった恋人もなく、一人で気ままな生活をおくるイレーネは、40歳を過ぎてふと自分の将来のことを考えて、これまでの様々な人生の選択や生き方を省みることになる。
結婚という生活基盤がなく、自由に独りで生きるイレーネは、まるでゲイのようだ。守らなければならない子どもたちがいるわけでもなく、結婚しているパートナーもいない…。
そんな彼女を心配する妹が、将来は誰に面倒を見てもらうつもりなのか?と問いかけるのも、我々ゲイのシチュエーションに似ている。
幸せの形は、本来人それぞれであるはずが、「結婚をして子どもを持つことこそが幸せ」という既成概念からなかなか逃れることが出来ないのが僕たちの暮らす世界なのだ。
パリのクリヨンなど豪華なホテルのスイートが見れるので、ホテル好きには堪らない映画だろう。僕もこんな仕事してみたい…と思ってしまった。特に、最後にフロントでやっと身分を明かすところなど、胸がスッとするに違いない…笑
派手さはないものの、孤独や不安に揺れ動く人間の繊細な感情を丁寧に描いた作品は、見終わった後に清々しい気持ちになれる。
★はじまりは5つ星ホテルからhttp://www.bunkamura.co.jp/s/cinema/lineup/14_viaggiosola.html

神宮前2丁目レインボー計画。

今まで住んでいて知らなかったのだけど、僕が住む神宮前2丁目界隈は、『奥原宿』通称『オクハラ』と言われているらしい。そして実は個性的なレストランやショップがぽつりぽつりと集まっている。
そんな神宮前2丁目の僕の家から出て50歩くらいの所にどういうわけだか友人のFがバー『緑』をオープンさせてしばらく経つ。帰り際にそのバーの前を通る時は見つからないように通りすぎようと思うのだけど、こっそりと通り過ぎようとすればするほど、フェンシングをやっていた動体視力のいいFにあっさりと見つけられて店に引きずり込まれる。
このバー『緑』を皮切りに、会社の後輩であり妹的存在のGが同じ神宮前2丁目に引っ越して来たこともあり、『緑』はいつのまにか溜まり場になり、様々なジャンルの人が夜毎集まるようになった。
そしてこれから神宮前2丁目を、様々なセクシャリティの人たちが集い楽しく過ごすことが出来る、レインボーな町にしようという計画が進められている。この計画のキックオフを兼ねて、また『緑』にみんなで集い、乾杯をした。
ゴールデンウイークはレインボーウイークで大忙しとなり。そして、このレインボーウイークの頃にまた新たなお店がオープンする予定。
今までセクシャリティをひた隠しにして生きて来た人たちが、その人自身のありのままの姿で働くことが出来て、大きく笑い、話せる場所が増えてゆくことを思うと、なんだかワクワクしてくる。
新宿2丁目だけでなく、神宮前2丁目へ。そしてどんどんそんな町があっちこっちに増えていけば面白いだろうなあ・・・などと夢想している。

kasumi store

フォアグラプリン

ウルフ・オブ・ウオールストリートを観た後、久しぶりに弟のようなK太郎と食事に行った。
K太郎が選んでくれたのは、新宿御苑前の駅のそばにある『kasumi store』。
ワインを飲みながら、お肉を中心とした料理をつまめるお店。
アボカドと海老のディップに、フォアグラプリン、牡蠣のエスカルゴ風、カスレ…
どれを食べても美味しいし、カスレも色々な部位のお肉が入っていて味わい深い。
グラスワインもきちんと選んであり、どれも美味しかった。
そして特筆すべきことは、店員さんたちがみんな素晴らしいサービスをしてくれることだ。
この小さなお店を愛しているのが伝わってくるし、お料理やワインに込めた思いを一生懸命説明してくれる。
こういうお店って、パリとかには沢山あるのだろうけど、東京にこんな店が出来たことがうれしい。
友人と一緒に映画を観て、美味しい食事をしながら映画の話をするって、なんとも贅沢で幸福な時間でした。
★kasumi storehttp://kasumistore.info/

ウルフ・オブ・ウオールストリート

巨匠マーチン・スコセッシがレオナルド・ディカプリオと組んだ大作は、若干26歳にして年収49億円を稼ぐことに成功した実在の証券マンのぶっ飛んだ人生の話だった。
ディカプリオって、いつアカデミー賞を取るか…といった感じだし、Jエドガーとかで俳優としてもっと評価されるべきだったのだと思うけど、なんだか最近、ずっと似たような役ばかりやっている印象。今回もやはり、僕にはディカプリオそのものに見える…。『独善的でエキセントリックで、時々激情的になる役』
それから、僕自身がもともと証券や金融の仕事に疎いし、疑問を持っているからかもしれないけど、主人公の生き方がどうにも汚らしい…と感じてしまった。でも、生き方が綺麗とか汚いとかではなく、純粋にこのぶっ飛んだ大富豪の生き方を、感嘆を持って見つめ続けられたらとても楽しめる映画だろう。
3時間弱の大作は十分見応えがあるし、日本ではあり得ない、こんなはちゃめちゃで馬鹿げた生き方をした人が実際にいたのかと思うと、アメリカという国の懐の深さを感じざるをえない。
★ウルフ・オブ・ウオールストリート http://www.wolfofwallstreet.jp

アメリカンハッスル

このところのアカデミー賞に、『ザ・ファイター』で6部門、『世界にひとつのプレイブック』で8部門、そしてこの『アメリカンハッスル』で10部門というノミネート数を誇るデヴィッド・O・ラッセル監督。
この3作品を見る限り、素晴らしい脚本と天才的な俳優を揃える幸運に恵まれていると思う。
今回のアメリカンハッスルは、実際の事件に基づいた話で、FBIと、天才的な詐欺師と相棒、そしてその頭の悪い妻とのドタバタ劇なのだけど、俳優陣の演技に惹きつけられて息つく暇もなかった。
膨大な映画を観ている映画人の友人が、『この監督の映画はうるさいから好きではない』と言うので、改めてこの監督の作品の魅力はどこなのだろうかと僕なりに考えてみた。
この監督の作品に出てくる主人公たちは、本当にろくでもない悪人ではなくて、人生の敗残者だったり、もう取り返しのつかないような生き方をして来た人間だ。
それでいて彼らは、何か人間の善意に触れるようなやさしさや温かさを持っていたりする。
それは、監督の人生経験から来る人間への鋭く深い洞察力と温かい視点なのだと思う。
よく練られた脚本と、映像、素晴らしい演技力に圧倒される映画。
★アメリカンハッスルhttp://american-hustle.jp/sp/index.html